根拠なき「前年比1割アップ」を粉砕!営業利益率から逆算する「階層別荷重配分」目標設定術|第15話

スポンサーリンク
PVアクセスランキング にほんブログ村
作業服姿のゆういちが会議室で逆算型目標算出のプレゼンを行い、顔を真っ赤にして怒る石田部長、微笑む山田社長、背後で監視する森田相談役と対峙するイラスト
スポンサーリンク

■前回のあらすじ

無策な社長と改善詐欺

ゆういちに新体制の構築を丸投げし、
責任から逃げ続ける山田社長。
既得権益を守る石田営業部長への対策も、
相談役への責任転嫁で誤魔化そうとする。
社長の「善人面」が招く地獄の会議を前に、
ゆういちは組織への宣戦布告を決意する。

■正論で既得権益を破壊。逆算型目標で炙り出す組織の膿

前回の食事会から数日。
何の説明もないまま、
私は定例の営業ミーティングの席にいた。

室内には、中身のない担当者の報告と、
それに対して興味なさげに形式的な質問を
ぶつける上司の声だけが虚しく響いている。

誰もが「早く終わればいい」という空気を
出していた会議が終盤に差し掛かったその時、
山田社長が重い口を開いた。

山田社長
山田社長

これで、営業ミーティングは
だいたい終わったかな?

石田部長
石田部長

そうですね。
だいたい終わりました。

石田部長
石田部長

何かありますか?

山田社長
山田社長

おぉ。そろそろ来期の
目標数字の発表をしようと
思ってな。

山田社長
山田社長

森田相談役から
発表をお願いします。

森田相談役
森田相談役

分かりました。

森田相談役
森田相談役

社長と私で来期の目標を
算出しました。

森田相談役
森田相談役

ゆういちさんには、
その話し合いに参加していただき、
資料をまとめてもらったので、
まずはその発表を聞いてください。

石田部長
石田部長

!!!。
……。

刺すような視線が、私の横顔に突き刺さる。
石田部長の顔が、みるみるうちに歪んでいく。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(石田部長が「初めて聞いた。」
というような顔をしている。
社長、あんなに『任せておけ』と
言っておきながら、結局何も
伝えていなかったのか?)

逃げ場のない会議室に、不穏な空気が充満する。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……では、発表を始めます。

山田社長
山田社長

おう、よろしく頼む。

説明スライドを出す。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まず、
営業部全体の目標設定ですが、
算出方法をかえました。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

以前の目標設定は、

PROBLEM
誰も答えられない「目標の根拠」

以前の我が社では、
こんな会話が当たり前でした。

「達成したし、来年は1割アップだ」
「下回ったし、来年は現状維持で」

実績に「気合」を乗せただけの、
根拠なき積み上げ。
結局、『なぜその目標になったのか?』

その論理的な正解を、
誰も持っていませんでした。
石田部長
石田部長

……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

なので今回は、感覚的な
目標設定を避け、

POLICY 努力目標の排除

『将来の予期せぬ事態』に 会社が備え、
社員の雇用と未来を 守るために必要な
『会社の体力』を確保する――。

そのために 『最低限の営業利益率』から 目標を逆算します。
石田部長
石田部長

???。

森田相談役
森田相談役

補足すると、この業界で
この規模の会社だと、
営業利益率は一般的に5%で
優良だと言われています。

森田相談役
森田相談役

しかし、我が社はあえて、
営業利益率6%を
目標数字にしました。

山田社長
山田社長

今までは2%程度だったが、
賃上げや新入社員など
将来のことを考えると、
6%を目指す必要がある。

石田部長
石田部長

……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

問題なければ営業部の目標設定は、
このように行います。

山田社長
山田社長

具体例を頼む。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

具体例だと、

SIMULATION
営業部全体:目標数値の構造
年間総売上高 12億0,000万円
想定粗利率 25.0 %
売上総利益額
(粗利)
3億0,000万円
販売管理費
(固定費等)
▲ 2億2,800万円
最終営業利益額 (利益率 6.0%)
7,200万円
※この利益が、会社の未来を創る「体力」となる。
森田相談役
森田相談役

ちなみに今年は、
ゆういちさんのグループが
かなり頑張ってくれているので
4.5%で着地する見込みです。

森田相談役
森田相談役

この目標計算方法に異論が
ある人は手を挙げてください。
そして、目標数値の管理を
売上から売上総利益に変更します。

山田社長
山田社長

売上より利益を重視していく
ということだね。

石田部長
石田部長

……。

山田社長
山田社長

いきなり営業利益率が
6%と言われて
「難しい」と思う人が
いるかもしれないが、
会社としては必要だからな。

山田社長
山田社長

みんな仲良くやってほしい。
それが社員のためにもなるしな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……。

森田相談役
森田相談役

では、次にグループの目標設定だが
今年から、営業課を3グループに分け、
活動してもらっているが、
各々が別々に活動しており
チームワークが全く見えてこない。

森田相談役
森田相談役

そのため、グループ単位で
目標管理をしてもらう。

グループ長達がざわつき始めた。

森田相談役
森田相談役

口で説明しても難しいと思うから、
ゆういちさんから資料を交えて
説明してもらう。

森田相談役
森田相談役

では、頼みます。

次の説明スライドを開いた。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

グループ毎の目標算出方法は、
「階層別荷重配分」で
算出しようと思います。

「階層別荷重配分ってなに?」
という声が聞こえる。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

現在営業部には、社員が
役員を含め25名います。
それを営業の役職に応じて、
負うべき責任の重さを
数値化で明確にします。

森田相談役
森田相談役

簡単に説明すると、

CALCULATION
全体目標から「個」の目標へ
1
年間売上高目標(全体)
12億0,000万円
÷ 25名(全社員数)
2
1人あたりの目標売上高
4,800万円 / 年
GOAL
1人あたりの目標売上総利益
1,200万円 / 年
ゆういち(私)
ゆういち(私)

(そうか、小林さん辞めるから
25人体制になるんだったな。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

役職あたりの
目標売上総利益額は、
以下の通りです。

役職
(階層)
荷重
(責任の重さ)
役職あたりの
目標売上総利益
グループ長 4人分 4,800万円
副グループ長 3人分 3,600万円
リーダー 2人分 2,400万円
一般社員 1人分 1,200万円

※目標売上総利益(1人分):1,200万円/年で算出

LOGIC
階層別荷重配分による利益目標算出
第1グループ:10人相当のミッション
構成:グループ長(1)+副グループ長(1)+リーダー(1)+一般(追加1)
10人分 × 1,200万 = 1億2,000万円
第2グループ:9人相当のミッション
構成:グループ長(1) + 副グループ長(1) + リーダー(1)
9人分 × 1,200万 = 1億800万円
第3グループ:6人相当のミッション
構成:ゆういち(1) + 一般(設計兼業1)
6人分 × 1,200万 = 7,200万円
※1,200万円:社員1人が会社を維持するために
必要な「最低限の年間総利益」
森田相談役
森田相談役

補足すると、

NOTICE
販売管理費の算出根拠について
本シミュレーションにおける販売管理費は、
現状の維持ではなく「未来への投資」を
前提としています。
現在募集中の「新規採用3名」のコスト、
および「既存社員の給与改定(UP)」を
すべて織り込んでいるため、
本来の年間800万円程度ではなく、
余裕を持たせた「年間912万円程度」の
高水準で見込んでいます。

第1グループ長から、異論が上がる。

「10人分って!
 目標数字が上がるのなら人はいらない。」

ゆういち(私)
ゆういち(私)

えっ?
増員を要望されたのは
そちらですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

人が増える以上、
販売管理費が増えるので
目標数字が増えるのは、
当然の話ですよ。

「……。」
第1グループ長は、
口をパクパクさせたまま黙り込んだ。
結局、彼が欲しかったのは「戦力」ではなく、
自分の数字を肩代わりしてくれる
「駒」だったのだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

このように1~3グループで
目標数字をきっちり決めるので
グループ内の各担当者毎に
目標を割り振ってください。

STRATEGY
「グループ単位」にした真の狙い

これまでは部長が個人の数字を決めていた。
だからこそ、グループ長は
「私が決めた数字ではない」という言い訳
で責任から逃げることができていた。

目標をグループ単位に集約し、
配分をグループ長に委ねることで、
「逃げ道」を塞ぐと同時に、
伸びない顧客を若手に押し付ける不条理
を、チームの責任として解消させる
ための狙いもある。
森田相談役
森田相談役

先ほどの話にも出ましたが、

CONFIRMATION
第3グループ:目標設定の内訳

ゆういちさんのグループは、業務の特性上
「売上総利益率」が高いため、
以下の合算で算出しています。

  • ゆういち: 実績と期待値の 5人分
  • 技術員: 営業兼任として 1人分
  • 合計: 6人分(7,200万円)
ゆういち(私)
ゆういち(私)

私からの発表は以上です。

森田相談役
森田相談役

今までの内容で、
何か質問はありますか?

静かに石田部長は手を挙げた。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(おっ!
とうとう口を開くのか?)

そう思い、私は若干身構えた。

森田相談役
森田相談役

おぉ、石田さんどうぞ。

石田部長
石田部長

……いろいろありますが、
この場では差し控えます。

石田部長
石田部長

後で相談役に、個人的に
質問させていただきます。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(……?
なんだそれ。)

森田相談役
森田相談役

大枠の数字は決まっていますが、
正式な数字を決定するので、
改めてグループ長に連絡します。

森田相談役
森田相談役

その後、目標数字を
グループ内で割り振ってください。
お疲れさまでした。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(石田部長、質問があれば、
この場ですればいいのに。)

なにはともあれ、
とりあえず裁判は、終わった。

この改善により、若手の不満が
少しでも解消されることを祈った。

🔍 その「目標設定」に潜む罠

  • 「前年踏襲」という名の思考停止で、
    根拠のない数字を現場に押し付けている。
  • 「みんな仲良く」という精神論で、
    不条理な格差や逃げ道を放置している。
  • 「個人的に相談」という密室の交渉が、
    透明性のある組織改革を阻害している。

これらに心当たりがあるなら、
それは公平な「評価」ではなく、
特定個人の『既得権益維持』です。

第16話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

石田部長
石田部長

数少ない生え抜き社員
58歳
社長公認の「子供っぽさ」
がある感情的な性格

小林由美
小林由美

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業