「仕組みを変えることは、特権を奪うことだ。」精神論に逃げる老いた正義と、孤高の組織改革|第14話

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階層別荷重配分の資料を手に、困惑するゆういちと不敵に笑う山田社長・森田相談役のイラスト
「丁寧な説明」か、仕組みによる「強制力」か。
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■前回のあらすじ

人間性という名の脅迫

「君のため」は、自分の保身を
隠すための便利な道具でしかない。
組織の膿には触れず、正論を言う人間を
「人間性が悪い」と片付けて終わらせる。
自分の根回し不足を棚に上げ、
謝罪と馴れ合いを強いる卑怯な茶番。
進展のない会食、抜かれるだけのガス。
結局社長は、会社を救うことより、
自分の平穏を最優先にしている。

■平穏という名の既得権益:口先だけの改善詐欺

「社員のために改善しよう。」 社長が吐く
そのセリフは、一見すると社員愛に満ちている。
だがその実態は、面倒な現実から目を逸らし、
「いい人」のまま逃げ切りたいだけだ。

公平な仕組みに変えるということは、
サボって評価されてきた奴らから、
その「特権」を取り上げることだ。

その覚悟もないのに「改善」なんて
言葉を安売りするのは、希望だけ見せて
時間を浪費させる「詐欺」と同じ。

私は冷めた確信を抱きながら、
その不毛な席に着いた。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

結局、私はどうすれば
いいんですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

来期の構想を教えて
もらわないと、
動きようがありません。

山田社長
山田社長

ゆういち君が以前言っていた、
「営業利益からの目標設定」と
「階層別荷重配分」の話を
みんなに説明してほしいんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

石田営業部長は
なんて言っているんですか?

山田社長
山田社長

簡単に説明はしているから
大丈夫だ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そうじゃなくて、石田営業部長は
なんて言っているんですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(「お前が営業部長になったら
営業社員全員辞める。」とまで
言われているんですよ……。)

山田社長
山田社長

あぁ、石田君には
「森田相談役の指示で
ゆういち君が来期の
目標計画をたてているから、
話を聞いてほしい」
と伝えている。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

社長、それだとまた揉めますよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

「部長を無視した。」という
事実だけが独り歩きして、
すべての矛先が私に向きますよ。

山田社長
山田社長

そこは、「相談役の指示」
だという体裁で行くから
大丈夫だ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

いや無理でしょ。いくら何でも
石田部長を馬鹿にしすぎですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

社長が、
営業部長をどうするかなど、
明確に打ち出さないと、
石田営業部長だけじゃなく、
現場も混乱しますよ。

山田社長
山田社長

結局、石田君は焦っているんだ。
あいつの精神性は子供だからな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

じゃあ、なんでその人が
営業部長なんですか?

山田社長
山田社長

ほかに人がいないからだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(無策な社長が「子供」を
営業部長に据え、放置した結果だ。
石田営業部長もまた、
社長の被害者なんだな……。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

はぁ、分かりました。
……説明します。
ただ、これが「今の営業部」に
受け入れられるとは思えません。

山田社長
山田社長

私が了解したと言えば
みんな納得するだろ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(本当かな?
絶対に逃げるだろ。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、社長が
「この案に納得している。」
ということを、きちんと
社長から話してください。

森田相談役
森田相談役

そこは、社長から言って
もらった方がいいですね。

山田社長
山田社長

分かった任せておけ。

山田社長
山田社長

結局ゆういち君は、
石田君にどうして
ほしいんだ?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(はぁ、事業推進部の設立など
以前も話したと思うけど…..。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(結局、実行するつもりがないから
理解する気もないんだろうな。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

いいですか。
本来、管理職の仕事は、
3年後、5年後の組織を支える
『未来の種まき』
に荷重を置くべきなんです。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

しかし、
うちの営業部長はどうですか?
部下の目の前でお客さんと
退職後どうするか?
の話をしたり、
ゴルフの話しかしない。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

トラブルがあったら、責任を
部下に押し付けて逃げる。
といった、無責任で
未来を放棄している人間を、
営業部長と呼べますか?。

山田社長
山田社長

……石田君がか、
にわかには信じられないな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(これは、もう無理だ。
社長が変わらなければ
どうにもならない。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

社長は、若手の要望や提案を
聞いているふりをして
何の行動も起こさない。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

愚痴を聞くことで物わかりの良い
社長の顔をしているけど
不満のガス抜きとして
話を聞いているだけだから、
何の改善も実行しないでしょ。

山田社長
山田社長

………。

森田相談役
森田相談役

社長もいろいろ考えて
おられるんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

社長は、
「会社を良くしたい。」
と口では言っているが
具体的なものは人任せだから、
結局反対があったら、人のせい
にして逃げるじゃないですか!

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ、社長にはいろいろ恩を
感じている点もあるので、
出来ることはやりますが……。

山田社長
山田社長

言いたいことは分かった。
だから、
相談役の指示でアイデアを
作成したことにすればいい。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……社長、分かっていませんね。
そんな浅はかなごまかしが
通るわけないじゃないですか。
すぐばれますよ。

山田社長
山田社長

考えすぎだ。
大丈夫だと思うぞ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

いや無理ですよ。
これは、社長が
「私の責任で決めたことだ。」
ぐらいはっきり言わないと
誰も納得しないですよ。

山田社長
山田社長

では、私の指示で
相談役からゆういち君に
依頼した形にしよう。

社長は、私の言葉をどこまで
理解しただろうか。

おそらく、半分も届いていない。

社長は「システムさえ導入すれば、
みんなが楽になり、仲良くハッピー
になれる。」という、
お花畑のような夢を見ている。

現実は違う。仕組みを変えることは、
サボりながら評価されてきた人間から、
その「特権」を取り上げることなのだ。

山田社長
山田社長

まぁ、そんなに難しく考えず、
まずは「みんなのためになる」と
丁寧に説明すれば、きっと……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(「丁寧に」か。
また精神論に逃げたな。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

わかりました。
資料は、まとめておきます。
もし、話がこじれたら社長が
責任を取ってくださいね。

山田社長
山田社長

あぁ、それは任せてくれ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(はぁ、絶対に無理だ。
また私が悪者だ……。)

山田社長
山田社長

研修期間を終えた孫の
教育方針も考えなければ
いけないからな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(社長の言う世代交代は、
若手社員のためではなく、
孫に良い格好をしたい
だけの行動か……。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

分かりました。では、
「来週のミーティングで話をする。」
とお伝えください。

既得権益にしがみつく者にとって、
正論はただの「攻撃」だ。
来週のミーティング、逃げ場のない会議室は、
真実を隠したい者と暴きたい者が対峙する
「裁判所」と化す。

私が手にするのは、仕組まれた
「有罪判決」なのだと確信しながら。

🔍 その「改革」に潜む罠

  • 「丁寧」や「納得」という言葉で、
    必要な「決断」を後回しにしている。
  • 仕組みを変える責任を「現場の調整役」
    に押し付け、トップは逃げ道を作る。
  • 「みんなのために」という美談が、
    既得権益を守る「改革詐欺」だ。

これらに心当たりがあるなら、
それは組織の「改善」ではなく、
延命のための「改善詐欺」です。

第15話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

小林由美
小林由美

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業