組織改革を拒んだ社長への因果応報。部下は自分を映す鏡だと、恩人の息子が教えてくれた。|第18話

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鏡に映る自分を見て絶句する山田社長と、作業着の技術者たちを背に前を向くゆういちの対比イラスト
自分を映す鏡に苦悩する社長。
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■前回のあらすじ

生贄にされた私と経営陣の放棄

社長からシステム導入の全体説明を
「延期」され、相談役も同席を拒否。
決定事項だったはずの改革は、
いつの間にか私個人の「案」へと
格下げされた。

 

形骸化した説明会に響く空虚な言葉。
それは組織の調整ではなく、
経営陣による「改革の放棄」だった。

■第18話:自分を映す鏡と報いの足音

「先行管理システム」の導入は、
事実上、棚上げにされた。

組織の規律を正そうとする私の手から、
社長は静かに「正当性」
という名のカードを奪い去ったのだ。

期待を捨て、心を閉ざしかけた中、
私は再び社長室へと呼び出された。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

今度は何の呼び出しですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ようやく、管理システムを
説明する決心がつきましたか?

期待などとうに捨て去っていたが、
儀礼的な響きを崩さず、
あえて反応を試すように問いかけた。

山田社長
山田社長

いや、その件は
タイミングを見ているから
もう少し待ってほしい。

社長がそっと視線を逸らす。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

タイミング……?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(結局、明言は避けるのか)

PERSONAL DOMAIN

……まぁ、いいですよ。
もともとは会社のためではなく、
自分の仕事の精度を上げるために
Pythonを駆使して組んだものだ。

使わないというなら、別に構わない。
「会社の未来」を背負うのはやめた。
むしろ、その方が身軽でいい。

🚀
山田社長
山田社長

使うのは間違いないんだ。
ただ、もう少し待ってほしい。

山田社長
山田社長

……それより、
孫の博人のことで
相談したいんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

あぁ、
6年前に亡くなった
下地さんの息子の
博人君ですか……。

THE UNWRITTEN PROMISE
孫の博人君は、社長の娘婿で
かつて私を導いてくれた
亡き恩人の息子だ。

「この会社を良くしてくれ。」

その一言に宿る重みだけが、
私がこの場所にいる理由だ。
山田社長
山田社長

営業に回り3ヶ月。
私から見て、あいつが
何もしていないように
見えるんだが……。
君はどう思う。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

えっ、
実際何もしていないですよ。

山田社長
山田社長

やっぱりそうか。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

あまりに暇そうだったので、
第1グループの若手たちに、
「一緒に回ってあげてほしい」
と、私が頼んでいたこと……
社長はご存知ないですよね。

山田社長
山田社長

気にかけてくれていたのか……。
ありがとう。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ第2グループでは、
雑用ばかりでイヤになって、
辞めてしまうかもしれませんね。

山田社長
山田社長

それでは困るんだ。

山田社長
山田社長

ゆういち君、君が面倒を見るとか、
うまくやってくれないか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

それは無理ですよ。
博人君本人の
『父と同じ顧客を引き継ぎたい』
という強い希望を汲んで、
第2グループへの配属を
認めたのは社長じゃないですか。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

とはいえ、ボリュームのある
副リーダーの仕事を
引き継ぐことになるので、
来期は彼を『営業管理課』に
所属させ、階層別荷重配分から
外しています。

STRATEGIC ALLOCATION

博人君を「営業管理課」
置いた真意

  • 🛡️ 荷重配分からの「除外」:
    副リーダーが担う3人分の重責。
    副リーダーが引退した瞬間、
    未熟な博人君の肩にのしかかる。
    その最悪のシナリオを防ぐため、
    私は来期『営業管理課』という
    防波堤の中に彼を置いた。
    階層別荷重配分から彼を解放し、
    着実に牙を研がせるためだ。

彼は新人ではない。
組織の「未来の資産」を預かる、
重要なピースなのだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

私が博人君に指示を出せば、
石田部長を飛び越える
ことになるので、
間違いなく揉めますよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そんな無責任なことは
できませんよ。

山田社長
山田社長

そうは言っても、
博人と同じ時期に入社した
第1グループの渡辺君は、
すでに活躍している。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ、そうですね。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

第2グループのリーダーも
副リーダーも
教えるのが下手ですからね。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ここ数年で辞めていったのは、
ほとんど第2グループの
子たちですからね。

山田社長
山田社長

そうなんだ。
だから心配なんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そんなこと、今更言われても
知りませんよ。

FINAL JUDGMENT

私は、ずっと言い続けてきました。
若手にとって良い環境を、
規律ある組織を、と。

それを自分に都合よく解釈し、
「嫌なら退社もやむなし」
そう突っぱねたのは、
社長、あなたですよね?

👉

私の言葉を、無視し続けた結果です。

山田社長
山田社長

……(絶句する)。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

とはいえ、教える側だけが悪い
わけではありません。
博人君にも問題はありますよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

若手社員から、
博人君の問題点は
いろいろ聞いていて
実際浮いています。

山田社長
山田社長

なにかあったのか?

THE DISCONNECT

入社早々、現場で汗を流す
若手の先輩たちに向かって、
彼は事も無げにこう言い放った。

「若手は貢献できていない、
もっと元気を出しましょう!」

……当然、総スカンを食らった。
「下地さんの息子」という看板だけで
許されるほど、現場の仕事は甘くない。

山田社長
山田社長

なんとかしてやってくれないか。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ、
「なんとかしてあげたい」
とは思っていましたが……
もう手遅れですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

これ以上、社内で争いの種に
なることはお断りします。
申し訳ありませんが、
石田部長にご相談ください。

THE MIRROR EFFECT

「嫌なら辞めてもいい」
そう言い切った過去の自分に、
今、背中を刺されている。

いざ自分の身に降りかかれば、
これまでの無礼を忘れて泣きつく。
だが、あなたの目の前にいる
孤立した「動かない若手」の姿こそ、
社長、あなた自身を
映し出す鏡そのものです。

🪞
🪞

とりあえず、これで私の「役割」は終わった。

最近分かったのは、社長の頼みを聞くことが、
必ずしも会社にとって良いことではなかった。
会社を2分し、私か石田部長のどちらかが
辞めないといけないところまで行ってしまう。

それは、私が本意とするところではない。
私の居場所は、もう決まっている。
自分を慕ってくれている「エンジニアリング課」
のみんなのために、全力を尽くすだけだ。

⚖️ 私情と無責任が招く会社の断末魔

  • ルールの私物化:
    規律を盾にしながら、
    身内には「情」で例外を作る。
  • 現場への丸投げ:
    自ら招いた不都合なツケを、
    現場の善意で埋めさせようとする。
  • 自覚なき因果応報:
    組織の腐敗は、経営陣の
    「不誠実」が映し出された鏡である。

改革を捨てた経営陣に、
現場が差し伸べる手は
もうありません。

— The End of Compromise —
第19話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50数名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

石田部長
石田部長

数少ない生え抜き社員
58歳
社長公認の「子供っぽさ」
がある感情的な性格

小林由美
小林由美

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業