■前回のあらすじ
期待を捨てた「空白」|茶番劇の終焉
「ガス抜き」の茶番だった。
進まぬ改革と「人間性」という卑怯な
逃げ言葉に、会社への愛着は消え失せた。
不誠実な経営陣に絶望し、私の心には
決別という名の「空白」が広がった。
■ 第20話:開戦の号砲|実績を「癇癪」と断じる経営陣への引導
娘の名前を相談するほど
信頼していた社長への期待を捨て、
心が晴れやかになった私。
しかし、
エンジニアリング課の会議で
現場無視の決定を強行し、
理不尽な責任を押し付ける経営陣に、
私の怒りは爆発する。

では、
エンジニアリング課の
会議を始めます。

よろしくお願いします。
近年のエンジニアリング課は
赤字を脱したが、わずかな
減収で逆戻りしかねない。
そのため、今回の会議では
会計の基礎を掴んでもらうため、
勉強会からスタートした。
会議も中盤に差し掛かった時、
相談役が手を上げ、

私は、
次の予定があるので、
先に大事な話を
させてもらっても
いいですか?

お願いします。

エンジニアリング課は
今、説明にあった通り
およそ営業利益率1%
のところにいます。

しかし、
私たちの管理している
エンジニアリング課単体の
BS(貸借対照表)及び
PL(損益計算書)では
赤字となっています。

なので、4日後の月初から
平日作業費を30%増やし、
休日作業の場合は、
100%増しで金額設定を
行ってください。
私は耳を疑った。

(えっ?
何を言っているんだ?
私の聞き間違いか?)

その決算書ですが、
私が昨年、外注で受注した
大型案件は含んでいますか?

部長、
含んでいるんですか?

含んでいません。
営業課の数字に
なっています。

(結局、その程度の
データで無謀な案を
決定されても困る。)

そうですよね。
その決算書の信憑性の
乏しさを何度も説明してますが
変えてくれませんからね。

それは、
他の営業課員からの
受注も回しているから
問題ない。

作業費が現状4万円だとすると、
平日作業費 5万2千円
休日作業費 8万円
ということですよ。

一度きちんと精査してから
話しないと了解できないです。

これは、
私・社長・営業部長の
決定事項なので、
従ってもらいます。

この条件に合わない仕事は
断ってください。
私は、ぎりぎりの理性を保ち
質問を行う。

すみません。
会社命令なら従いますが、
結果、目標未達成だとしても
責任の所在はそちら側ですよ。

「それはおかしい!」
その条件でも、
良い会社と取引をして、
目標を達成するのが、
あなたの仕事ですよ。

その条件に従って、
責任を負ってください。
この一言で、
私の感情がむき出しになった。

事前に相談もない、
連絡も説明もない
無謀な決定事項を
一方的に押し付け、
「責任もとれ。」
はおかしすぎる!

そんな条件、
呑めるわけがない。

いや、実際赤字だから
同じ仕事量で
黒字ににするのが
一番楽な方法でしょ。

赤字・赤字と言いますが、
あなた方が主導した
4年前までは、営業利益額
数千万の赤字でしたよね?

今まではそれで
よかったんだが、
エンジニアリング課単体で
黒字化を目指すことにしたんだ。

(また思い付きで話をして。
それで、揉めてきたのに…。)

雰囲気も最悪だった
あの組織を、トントンまで
立て直したのは私です。
それを忘れたのですか?


この結果に満足せず、
今年は議論して、
「みんなで協力して
数字を上げていこう!」
という会議にしよう。
と説明までしたのに。

それを反故にして、
決定事項を押し付けるだけなら、
課長なんてやってられない。

もう、降ります。
この一言が、
社長の感情にも火をつけた。

そんな簡単に、課長を
やめるなんておかしい。

イヤなことがあったら
そのたびに投げ出すのか?

それは違います。
明らかにとれない責任を
提示されたから、無理だと
言ってるだけです。

値段を変えるだけの
なにが難しいんだ?

そちらが責任を取るなら
やりますよ。

……。

赤字続きだった4年前だったら、
もうすでに解散している。

エンジニアリング課には
大きく助けられている。

今からもっと
頑張ってほしい思いが
あるから言っているんだ。

目標数字に対する責任と
作業費を上げる責任は、
両立できません。

責任をとれないから、
課長を辞退する。
という判断です。

君たちはどう思う?
社長がエンジニアリング課の
課員3名にも意見を求める。
との回答に社長は一旦考え、
口を開いた。

私たちの進め方が
間違っていた。
これは謝る。

しかし、簡単に役職を
やめるという発言は
看過できない。

簡単に癇癪を起すようでは、
人はついてこないぞ

私も軽々に
「課長を降りる。」
と言ったことは謝ります。
すみませんでした。

分かったならいい。

では、
結論はどうしようか?

現状から作業単価5%アップ
が妥当な点だと思います。
少し不満げな顔をしながら

……分かった。
そこで一旦協議する。

では、会議を終わります。
……お疲れさまでした。
⚖️ 妥協の終焉と「個」の覚悟
-
✔
形ばかりの決着:
結論は「単価5%アップの検討」。
数字は動いても、
失われた信頼が戻ることはない。 -
✔
剥き出しの敵意:
煮えくり返るはらわた。
経営と現場の溝は、 修復不能な
までに決定的なものとなった。 -
✔
生存戦略の転換:
「退職勧奨」を前提とした背水の陣。
会社のためではなく、
自分のスキルのために牙を研ぐ。
組織に殉じる時代は終わった。
これからは、私自身の価値を
証明するための戦いです。
会社を変えるのは時間がかかります。
でも、自分の環境を変えるのは
「今この瞬間」の決断ひとつです。
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■背景情報
<会社情報>
| <社名>架空金属産業株式会社 社員総数50数名 | ||
| 営業部営業課 | 機械部品販売 | 営業 8名 |
| 営業部エンジニアリング課 | 機械修理・改造 | 技術者 5名 |
| 営業部営業管理課 | 営業活動の補佐 |
社員 5名 |
| 営業部総務課 | 人事・経理兼務 | 社員 4名 |
| 製造部製造1課 | 機械加工 | 作業者 10名 |
| 製造部製造2課 | 塗装 | 作業者 10名 |
<登場人物>

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

数少ない生え抜き社員
58歳
社長公認の「子供っぽさ」
がある感情的な性格

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業
