社長の嘘と「空白」の食事会|骨抜きにされた改革と責任の空席【第19話】

居酒屋の個室で、身振り手振りで言い訳をする社長と、それを冷めた表情で聞き流すゆういち、傍観する相談役のイラスト
何も決まらない時間が過ぎていく。

■前回のあらすじ

「自業自得」が突き刺さる、経営陣の末路

改革を放棄し、規律を捨てた社長。
しかし今度は、孫の不振に
「情」で泣きついてくる。
かつて若手の苦悩を
「辞めてもしかたない。」
と一蹴した不誠実さは、
鏡のように自らの身へ。

 

私物化された組織を前に、私の中の
改善という名の灯は消え失せた。

■ 第19話:茶番の始まり|期待を捨てた「空白」の着席

数週間ぶりに突如開かれた、
社長・相談役との食事会。

私の問いには答えず、
都合ばかりを押し付けてくる社長。
その姿に会社への感情は音もなく
抜け落ち、私はただ「空白」を
抱えたまま、その席に着いていた。

山田社長
山田社長

おぉ、相談役も
ゆういち君も、
もう着いていたのか?

森田相談役
森田相談役

少し前、ゆういちさんと
似た時間に到着しました。

山田社長
山田社長

おぉ、そうか。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

早速ですが、
何か頼まれますか?

山田社長
山田社長

ゆういち君の
好きなものを頼んでくれ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、適当に頼みますね。

山田社長
山田社長

よろしく頼む。

DIRECT QUESTION

食事や飲み物が届き、
たわいもない世間話が始まる。
だが、私にその茶番に付き合う気力は、
もう一滴も残っていなかった。

「この食事会の、
開催目的は何ですか?

⚖️

よくわからない状況のままで、
貴重な時間を奪われたくはない。

山田社長
山田社長

いや、
「最近ゆういち君の
元気がないな。」
と思って声をかけたんだ。

山田社長
山田社長

食事でもしながら、
話を聞こうと思ってな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(また、ガス抜きの
ための食事会か。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

元気がないわけでは
ありませんよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

指示がないから、
動きようがないだけです。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

結局、私はどうすれば
いいのですか?

山田社長
山田社長

おぉ、営業部長の件だな。
それは進んでいる。

山田社長
山田社長

安心してくれ、
大丈夫だ。

THE VERIFICATION

「事業推進部の設立が進んでいる」
その認識に間違いはないのか、
確認させてもらう。

「部長は了承したんですか?」
進んでいない事実
を知りながら、 あえて私は、
その喉元に刃を突き立てる。

🔍

返ってこない「誠実な回答」を、
私はただ待っていた。

!

▼ 第7話:社長との約束「改革の全貌」

山田社長
山田社長

私は、石田君には営業部から
事業推進部に異動する話を
まだしていない。

山田社長
山田社長

副社長から軽く話はしている
と聞いているが、
返事はないそうだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

社長からは、
まだしていないんですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

結局、どう進めればいいか
分からないので、
営業部長を辞退します

山田社長
山田社長

いや、それは副社長との
約束だから決定事項だ。

山田社長
山田社長

必ず進めるから、
もう少し時間が欲しい。

森田相談役が話題を変える。

森田相談役
森田相談役

そういえばゆういち君、
営業管理システムの話は
どうなっているんだ?

山田社長
山田社長

おぉ、進捗を教えてくれ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

進捗も何も、相談役が
「グループリーダーと
直接話をしろ。」
と言ったのでしましたよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ただ、営業部での
決定事項ではないので、
進捗はありません。

山田社長
山田社長

あぁ、そうだったな。

THE DISCONNECT

結局、これも単なる「ガス抜き」か。
怒りすら湧かないほど、私の中から
会社への執着が消えたのを感じた。

「そちらの回答待ちなので、
私は何も出来ませんよ。

🌑

もう、どうでもいい。
その一言にすべてが凝縮されていた。

0
森田相談役
森田相談役

……。

山田社長
山田社長

私も悩みに悩んで
病院に通っているんだ
察してくれ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

いや、社長の段取りが
悪かっただけでしょ。
自業自得じゃないですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

何度も言っていますが、
どうするかを決めて下さい。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

私自身が営業部長に
なりたいわけではないので
いつでも辞退しますよ。

山田社長
山田社長

まぁ、結論をいそがずに、
きたる日に向けて、
人間性を高めてほしい。

THE REVELATION

具体性のない「人間性」という言葉。
それは、自らの無策を棚に上げた、
卑怯な「聖域」への逃げ込みだった。

「石田部長も、社長の
被害者だったんですね。」
その言葉は、
もはや怒りではない。
逃れようのない事実を、
静かに突きつけただけだ。

この瞬間、私の中の「迷い」は
「確信」へと変わった。

FIX
山田社長
山田社長

いや、
石田君にも当然問題はある。

山田社長
山田社長

石田君にも人間性を
高めるように
言い続けているんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……。
まぁ、何でもいいです。
早く決めてください。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、もうそろそろ
帰りましょう。

山田社長
山田社長

そうだな。
今日はもうお開きにしよう。

⚖️ 私情と無責任が招く会社の断末魔

  • ルールの私物化:
    規律を盾にしながら、
    身内には「情」で例外を作る。
  • 現場への丸投げ:
    自ら招いた不都合なツケを、
    現場の善意で埋めさせようとする。
  • 自覚なき因果応報:
    組織の腐敗は、経営陣の
    「不誠実」が映し出された鏡である。

改革を捨てた経営陣に、
現場が差し出す手はもうありません。

— The End of Compromise —
第20話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50数名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

石田部長
石田部長

数少ない生え抜き社員
58歳
社長公認の「子供っぽさ」
がある感情的な性格

小林由美
小林由美

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業