金型の口金に、すべり性の良い
コーティングをしたいんですが
何か良いものないですか?
DLCコーティングは
いかがですか?
DLCコーティングって
何ですか?
炭素系薄膜コーティングで
特徴は、硬くて耐摩耗性があり
低摩擦のコーティングです。
最高200℃ぐらいで使用しますが
問題ないですか?
一般的に耐熱温度は、
300℃程度です。
種類によっては
500℃などもあります。
じゃあ問題ないですね。
とりあえず
試してみようかな?
ただ、注意点があって
DLCコーティングの膜厚は、
1~2μmが一般的です。
すぐ減ってしまう
ということですか?
膜厚が薄いので、
基材表面の状態が
仕上がりに影響される。
ということです。
どういうことですか?
基材表面がきれいだと、
きれいな仕上がりに
凸凹だと、
凸凹の仕上がりになる。
ということです。
そういうことですか・・・
口金は新しいものが良い
ということですね。
磨いていただくか
新しいものが好ましいです。
じゃあ、新しく作ります。
出来たらお渡しするので
お願いします。
分かりました。
そういえば、
再コーティングは
できるんですか?
再コーティングは可能ですが、
メーカーの除膜方法によっては
基材が荒れるので
念のため確認しておきます。
よろしくお願いします。
出来たら連絡します。
という、やりとりがありました。
今回は、DLCコーティングについて
紹介していきたいと思います。
DLCコーティングとは?
DLCコーティングは、
Diamond-Like Carbon
(ダイヤモンド ライク カーボン)
の略称で、
- 高硬度
- 耐摩耗
- 低摩擦
- 凝着を起こしにくい
などの優れた特徴を持つ
表面処理技術のことを言います。
一般的なDLCの、
ビッカース硬さは、HV3000程度で
- TiNコーティングの2倍
- 窒化処理の3倍
- 硬質クロムメッキの4倍
程度の硬度にあたります。
DLCコーティングの構造
DLCコーティングは、
非晶質構造の炭素系薄膜コーティング
のことを言います。
非晶質構造とは、
アモルファスとも呼ばれており
規則的な結晶構造の結晶質と違い
3~4倍の強度と
大きい靭性を得られます。
また非晶質構造は、
原子や分子が乱れた配列をしている
固体のことを言い、
非晶質構造のDLCは、
ダイヤモンド・黒鉛・水素の比率や
金属元素の有無によって
ダイヤモンドに匹敵する硬さを
持たせたり、導電性や耐熱性を
付加させることが出来るなど
様々な特性を持たせることが
出来ます。
そのため、
一括りで、
DLCコーティングと言っても
用途や環境によって、
適合する種類が違うので
注意して選定して下さい。
DLCコーティングの成膜方法
DLCコーティングは、
成膜方法によっても特徴が変わります。
成膜方法は、大きく分けて3種類あり、
簡単に紹介していきます。
DLCコーティングの成膜方法は、
成膜方法と特徴 | ||
種類 | 方法 | 特徴 |
CVD法 |
|
|
PVD法 |
|
|
プラズマ イオン 注入法 |
|
|
DLCコーティングは、
コーティング内の水素の量によって
物性が変化します。
水素を含まないDLCコーティングは、
高硬度となり、
水素を含む量が多くなるほど
硬度は下がる傾向にあります。
DLCコーティングの除膜と 再コーティング
DLCコーティングは、
高硬度で耐摩耗性・低摩擦性という
特性を持っているので
精密金型・治工具・切削工具・
摺動部品など様々な用途で
使用されています。
再生・再利用をする場合、
古いDLCコーティングを除幕する必要が
ありますが、
除膜が難しいという問題がありました。
除膜方法には、
- 機械的に研磨して除膜する。
- 化学的に薬品を使って除膜する。
といった方法が使われます。
これらの方法で除膜すると
基材の寸法が変わったり
表面が粗さが粗くなるといった
基材への負担が大きかったり
除膜に使用した薬品の処理など
再生・再使用には問題がありました。
酸素プラズマを用いた除膜方法
最近では、
酸素プラズマ中のイオン等を
DLC膜の炭素と反応させ、
炭素ガスとして除去する方法が
あるようです。
(私は、まだ試せていません。)
この除去方法は、
基材の肌荒れを抑えて、除膜出来る
というメリットがあるので
今までできなかった、
高価な部品の再生や再利用が
可能になったということです。
再生・再利用を検討されているので
あれば、後々のことを考えて、
メーカーに除膜方法も
確認しておくと良いかもしれません。
DLCの欠点と対策
一言でDLCと言っても
いろんな種類があります。
DLCに導電性は
ないですよね。
DLCの耐熱温度は
300℃ですよね。
と言われる
お客様もいらっしゃるように
DLCコーティングに種類がある事を
知らない方が多いです。
そのため、
使用用途と
DLCコーティングの種類が
合っていなかった。
という話も聞きます。
DLCコーティングの欠点と対策
DLCコーティングは、
素晴らしい特性を持った
コーティングですが
一般的なDLCコーティングは、
- 欠けやすく、破片が混入する。
- 基材との密着性が悪い
- 最大2μm程度の膜厚に
限定される。
といった欠点もあります。
ところがDLCコーティングは、
ダイヤモンドや黒鉛の比率や
水素の比率・ほかの金属の有無によって
硬度・耐熱・導電性といった
色々な改善・対策が出来る
コーティングです。
そこで、DLCコーティングをかけた時の
問題と改善・対策をまとめてみました。
問題と対策 | ||
特性 | 問題 | 改善・対策 |
高硬度 |
|
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膜厚 |
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密着性 |
|
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耐熱 |
|
|
まとめ
DLCコーティングとは、
高い耐摩耗性で低摩擦
といった特性を持った
炭素系薄膜コーティングを指します。
ただし、明確な定義がなく、
構造や成膜方法・添加物をかえることで
多様なDLCコーティングが存在しています。
そのため、同じDLCと言っても
用途によって特性の違うDLCを
選定する必要があるので、
コーティング前に、十分に検討して
使い分ける必要があります。
また、製法や種類によっては
再生・再利用が出来ない可能性があるので
高価な基材に再生を考えて、
DLCコーティングをする場合は、
除膜や再コーティングについても
調査しておいたほうが良いと思います。
ありがとうございました。