アクリル・PET・ポリカーボネート・塩ビの透明樹脂の違いとは?

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素材

アクリルでできた
機械カバーが割れました。

他にいいものないですか?

アクリル樹脂が
ダメな理由は何ですか?

割れるからです。

割れないものにしたいです。

使用する環境を
教えてもらっていいですか?

普通の環境です。

温度が高いとか、
薬品を使う環境

ではないんですね。

常温で薬品などは
使っていません。

透明の樹脂カバーで

いいですか?

大丈夫です。

金属カバーだと重いので。

なるべく安価に
済ませたいです。

それでは、

材質をPETにしますね。

PETの耐熱温度は

どのくらいありますか?

PETの耐熱温度は、

60~70℃程度です。

どうかしました?

いえ。一か所だけ
100℃程度の高温になる
装置がありました。

大丈夫ですか?

一か所だけ、耐熱温度が高い

『ポリカーボネート』
にしましょう。

お願いします。

という、やりとりがありました。

テーマ

今回は、透明樹脂について
簡単に分かりやすく
紹介していきたいと思います。

 
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透明樹脂の種類

透明樹脂の種類には

どんなものがあるんですか?

透明樹脂には、

Point
  • ポリエチレンテレフタレート
    (PET)
  • ポリ塩化ビニル(PVC)
  • アクリル樹脂(PMMA)
  • ポリカーボネート(PC)

があります。

 
 

4種類もあるんですね。

どんな違いがあるんですか?

これらの透明樹脂は、

Point

いずれも熱可塑性樹脂ですが、
その中でも汎用樹脂の

  • ポリエチレンテレフタレート
    (PET)
  • ポリ塩化ビニル(PVC)
  • アクリル樹脂(PMMA)

と、汎用エンプラの

  • ポリカーボネート(PC)

に分類されます。

 

汎用樹脂と汎用エンプラって

なにが違うんですか?

汎用樹脂と
汎用エンプラの違いは、
耐熱性・強度・曲げ弾性

の度合いで分類されています。

どちらが
優れているんですか?

汎用エンプラの方が

優れており、

Point

正式名称は

  • 汎用エンジニアリング
    プラスチック

と言い、

  • 耐熱温度が100℃以上
  • 強度が49Mpa以上
  • 曲げ弾性率が2.4Gpa以上

の特性を持つ、
熱可塑性樹脂の総称です。

 

汎用樹脂は、これに満たない

樹脂のことを言うんですね。

そうですね。

その分、汎用樹脂は
比較的安価という

メリットがあります。

機械カバー程度であれば

汎用樹脂で十分ですね。

そうですね。

ただ、100℃程度の
高温環境で使用する場合は、
汎用エンプラの
ポリカーボネートを
お勧めします。

 
透明樹脂の種類
  • 透明樹脂は、
    PET・塩ビ・アクリル樹脂・
    ポリカーボネートの4種類。

  • 透明樹脂は、いずれも
    熱可塑性樹脂で、汎用樹脂と
    汎用エンプラに分類される。

  • 汎用樹脂と
    汎用エンプラの違いは、
    耐熱性・強度・曲げ弾性の
    度合いで分類される。

 

結晶性樹脂と非晶性樹脂の違い

透明樹脂の中にも

汎用樹脂と汎用エンプラの

2種類があるんですね。

それらの中でも

Point

分子構造の違いから

  • 結晶性樹脂
  • 非晶性樹脂

の2種類があります。

 

汎用樹脂の中と

汎用エンプラの中に

それぞれ、
結晶性樹脂・非晶性樹脂

があるということですか?

そういうことです。

結晶性樹脂と非晶性樹脂

って何ですか?

簡単に説明すると

Point

透明樹脂の中に
結晶構造があるものを

  • 結晶性樹脂

結晶構造がないものを

  • 非晶性樹脂

と呼んでいます。

 

汎用樹脂の
結晶性樹脂が、PET

非晶性樹脂が、塩ビとアクリル

汎用エンプラの

非晶性樹脂が、ポリカーボネート

です。

結晶のある・なしで

何が違うんですか?

結晶構造のある・なしで

樹脂の傾向のようなものが

分かります。

へー。

結晶性樹脂の傾向は、

Point

溶融状態から固化する冷却過程で
結晶構造が形成されるため

  • 成型時の収縮率が大きくなる。

結晶部と非晶部の屈折率が違うため

  • 一般的に不透明。

結晶部が薬品の浸透を
防いでくれるので

  • 非晶性樹脂より
    耐薬品性に優れている。

といった傾向があります。

 

あれ?

結晶性樹脂って、
不透明なんですか?

PETは透明ですよね?

そうなんです。

結晶性樹脂は結晶部が多いと

不透明になってします。

どうするんですか?

結晶部が少なくして

透明性を持たせます。

Point

PETは結晶化速度が遅いので
結晶化する温度付近で急速冷却すると
結晶部が少なくなり、透明性を持った
PETを作ることが出来ます。

 

だから、PETにも
透明色があるんですね。

そうなんです。

Point

この急速冷却したものを
『A-PET』と言い
通常冷却で結晶化させたものを
『C-PET』と言います。

 

確か、G-PETも
なかったでしたっけ?

G-PETは、A-PETより

結晶化を防止させる

添加剤を加えたものです。

色々あるんですね。

ここでは、呼称を『PET』と

させていただきます。

次に、

非晶性樹脂の傾向は、

Point

結晶構造が形成されない樹脂なので

  • 成型時の収縮率が小さい。

光の屈折率が低いので

  • 透明の樹脂が多い

結晶構造を持たないので

  • 有機溶剤に弱い

といった傾向があります。

 

なるほど。

有機溶剤に弱いということは

接着や塗装の密着性が

高いということになります。

結晶構造のある・なしで

大まかな傾向が
分かるんですね。

ただし、
結晶構造のある・なしだけで

特性が決まるわけではないので

きちんと、材質の特性を
確認して下さい。

結晶性樹脂と非晶性樹脂の違い
  • 分子構造の違いから
    『結晶性樹脂』『非晶性樹脂』
    の2種類がある。

  • PETは、結晶化速度が遅いので
    結晶化する温度付近で
    急速冷却させると透明性を持つ。

  • 急冷したものを『A-PET』と言い
    通常冷却で結晶化させたものを
    『C-PET』と言う。

  • 結晶性樹脂は、
    成型時の収縮率が大きく、
    不透明で非晶性樹脂より
    耐薬品性に優れている。

  • 非晶性樹脂は、
    成型時の収縮率が小さく、
    透明の樹脂が多い。

  • 非晶性樹脂は、
    結晶構造を持たないので
    有機溶剤に弱い傾向にある。

 

透明樹脂の種類・特徴と見分け方

透明樹脂の特徴を

教えて下さい。

ペットボトルに使われている
ポリエチレンテレフタレート(PET)

から紹介していきます。

Point

PETは、結晶性樹脂で、
耐油性・難燃性がある材質です。
しかも、塩素を含んでいないので
燃やしても有毒ガスが発生しません。

 

アクリルと比べて
強度などはどうですか?

PETは、アクリル樹脂と比べて

Point

4~5倍の衝撃強度があり、
アクリルより安価で購入できます。

 

塩ビについて教えて下さい。

ポリ塩化ビニル(PVC)は、

Point

耐薬品性・耐候性・難燃性に
優れていて、水回りの配管などにも
使われている材質です。

 

塩ビ配管とかありますね。

アクリルと比べてどうですか?

塩ビは、アクリル樹脂と比べて

2~3倍の衝撃強度があり、
アクリル樹脂より安価な材質です。

アクリルについても
教えて下さい。

アクリル樹脂は、
耐候性に優れており
屋外で使用しても、
劣化が少ないので看板などに

使用されています。

ディスプレイのケースも

アクリルで出来ていますね。

アクリル樹脂(PMMA)は、

Point

透明樹脂の中で、
一番透明度が高く
一番表面硬度が硬い材質なので
傷がつきにくい
という特徴があります。

 

非晶性樹脂なので

やっぱり溶剤に弱いんですか?

耐薬品性も酸やアルカリには

耐性がありますが、

有機溶剤には弱いです。

以前、アクリル樹脂に
ドリルで穴をあけようとして
割ったことがあります。

アクリル樹脂は、
割れやすいので加工時は
注意が必要です。

また、
燃える性質があるので

火のそばでは
使わないでください。

ところで、アクリルの
キャスト材って何ですか?

アクリル樹脂には、

Point

押出材とキャスト材があり
キャスト材のほうが溶剤に強く
硬度が高い特徴があります。

 

何が違うんですか?

押出法とキャスト法という

製造方法の違いです。

製造方法で特徴が
変わるんですね。

キャスト材は、押出材より
高価なので注意して下さい。

次は、ポリカの特徴を

教えて下さい。

ポリカーボネート(PC)は、

Point

汎用エンジニアリングプラスチック
(通称:汎用エンプラ)
と呼ばれるもので
100℃を超えても使用出来ます。

 

透明樹脂の中で

最も耐熱性がありますね。

しかも、

Point

透明樹脂の中で抜群の耐衝撃性を
持っており、アクリル樹脂の
10倍とも50倍とも言われるほど
耐衝撃強さに優れています。

 

そんなに
衝撃に強いんですね。

しかも、アクリル樹脂には
及ばないものの、
高い透明性を持っており

紫外線をカットする
という特徴があります。

確か、カーポートの屋根や

防弾シールドにもポリカが
使われてましたよね。

そうです。

他にも

『成形収縮率が小さい』
『低温にも強い』
といった特徴があります。

ポリカってすごいですね。

欠点はあるんですか?

そうですね。

Point

ポリカーボネートには

  • 表面にキズが付きやすい。
  • 耐薬品性が低い。
  • 高温高湿では加水分解をおこす。

等の欠点があります。

 

これら透明樹脂の
見分け方ってありますか?

見分け方ですか・・・。

一般的に、

『燃やすと分かる。』

と言われています。

燃やすんですか?

そうなんです。

Point

アクリルは、
可燃性の樹脂なので燃えますし、
PET・ポリカ・塩ビなどは、
難燃性の樹脂ですが、
燃え方やにおい・炎の色など違いが
あるので、種類を判別できます。

 

と言いますが、

現場で燃やすことは
難しいですよね。、
有毒ガスを吸い込む可能性も

ありますし。

そうなんですよ。

あくまでも目安ですが

切断面の色や表面硬さで

判断したりもします。

切断面ですか?

切断面の違いは、

Point
  • アクリル樹脂は、透明度が高く
    切断面も透明。
  • ポリ塩化ビニルは、薄い紫。
  • ポリカーボネートは、
    紫外線劣化によって
    黄色味を帯びる。

等があります。
PETは、爪でひっかく程度でも
キズが付きます。
これらを組合わせて見分けて下さい。

 

参考にしてみます。

 

あくまでも目安ですよ。

私も間違えるので・・・。

透明樹脂の種類・特徴と見分け方
  PET 塩ビ アクリル ポリカ
連続使用
温度(℃)
-10~70 -15~80 -40~90 -40~120
耐衝撃性 ×
表面硬さ ×
耐薬品性 × ×
耐有機
溶剤性
× × × ×
燃焼性 難燃性 難燃性 可燃性 難燃性
 

導電グレードと帯電防止グレード

導電グレードや
帯電防止グレードは

何が違うんですか?

導電グレードは、

Point

カーボンが練り込まれているので
黒色しかありませんが、
練り込まれている分、
導電効果が長く続きます。

 

導電グレードは、カーボンを
練り込んで作るんですね。

帯電防止グレードは、

Point

帯電防止剤を表面に塗布するので
透明色を作ることが出来ますが、
表面の帯電防止剤が、剥がれると
帯電防止効果がなくなります。

 

表面に塗布して作るのが

帯電防止グレードなんですね。

 
導電と帯電防止
  • 導電グレードは、カーボンを
    練り込むので黒色しかないが
    導電効果は長く続く。

  • 帯電防止グレードは、
    帯電防止剤を表面に塗布するので
    透明色を作れるが、剥がれると
    帯電防止効果はなくなる。

 

まとめ

最近、カバーの材質をPET指定で
いただくことが増えてきました。

安価なことが理由ですが、
透明樹脂にもいろんな種類があり
使用用途によって使い分ける
必要があります。

もし、あなたの透明樹脂を選ぶ
お手伝いが出来たらうれしいです。

ありがとうございました。