高機能樹脂スーパーエンプラとは?用途・構造・耐熱温度・特性を紹介

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素材

プローブを固定する

検査治具をジュラコンで

作ったのですが、

上手くいきません。

何が悪いんでしょうか?

図面を見せてもらっても
いいですか?

全然、いいですよ。

見て下さい。

うーん。穴径Φ0.20mmで

公差が±0.02ですか・・・。

難しいですか?

ジュラコンで加工した
治具ですが、
寸法の前に、穴が楕円に
なっていませんか?

そうなんですよ!

良く分かりましたね!

ジュラコンなどの
熱可塑性樹脂は、特性上

加工時の発熱で溶融したり、
刃物に溶着するんです。

加工の熱で
溶けちゃうんですね。

寸法や形状にもよりますが、

ジュラコンだと

寸法公差は、いいとこ
±0.1mm程度だと思います。

『材質に問題がある。』

ということですか?

何か良い材質は
ありますか?

そうですねー。

スーパーエンプラの
『PEEK』だと
加工できると思います。

では、それで

お願いします。

いいですけど、
ジュラコンより材料価格が
びっくりするほど
高いですよ。

えっ!!

そうなんですか・・・。

時間がないかもしれませんが

御見積りを提出して、
OKがでたら加工しますね。

分かりました。

では、見積もりを
お願いします。

という、やりとりがありました。

テーマ

今回は、『スーパーエンプラ』
について、簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。

 
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スーパーエンプラとは?

そもそも

スーパーエンプラって

何ですか?

私の分かる範囲での

説明になりますが

大丈夫ですか?

よろしくお願いします。

まず、

スーパーエンプラの前に

エンプラから説明します。

助かります。

エンプラという言葉は、

Point

『エンジニアリングプラスチック』
の略称で、アメリカのデュポン社が
『鉄への挑戦材料』として開発した
『デルリン』に初めて使われたと
言われています。

 
 

エンプラって、鉄の
代替材料だったんですね。

そうなんです。

Point

エンプラは、軽量化・コンパクト化・
省エネルギー化を目指す
自動車・電気・電子などの分野で
金属代替材料として
工業用途に使われています。

 

エンプラの定義を

教えて下さい。

実は、

Point

エンプラには、明確な定義がなく、

  • 耐熱温度が100℃以上
  • 強度が49Mpa以上
  • 曲げ弾性率が2.4Gpa以上

の特性を持つ、熱可塑性樹脂の
総称とされています。

 
 

エンプラとは、
耐熱性・強度を強化させた

合成樹脂のことなんですね。

そして、

Point

耐熱性や機械的強度など
エンプラより強化させたものを
『スーパーエンプラ』
と呼んでいます。

 

エンプラを、より金属の
強度に近づけたものが
『スーパーエンプラ』
なんですね。

そうなんです。
ただ、エンプラ同様、

Point

明確な定義はなく、
『150℃以上の高温でも
長期間使用できるプラスチック』
とされています。

 

高機能樹脂を
スーパーエンプラと、
呼ぶんですね。

スーパーエンプラとは?
  • エンプラという言葉は、
    『エンジニアリングプラスチック』
    の略称で、『鉄への挑戦材料』
    として開発した『デルリン』に
    初めて使われたと言われている。

  • エンプラに、明確な定義はなく、
    耐熱温度が100℃以上・
    強度が49Mpa以上・
    曲げ弾性率が2.4Gpa以上の
    特性を持つ、熱可塑性樹脂の総称。

  • 耐熱性や機械的強度など
    エンプラより強化したものを
    『スーパーエンプラ』と呼ぶ。

  • スーパーエンプラにも
    明確な定義はなく、
    『150℃以上の高温でも
    長期間使用できるプラスチック』
    とされている。

 

結晶性樹脂と非晶性樹脂

スーパーエンプラ
について、もう少し
詳しく教えて下さい。

分かりました。

では、

Point

スーパーエンプラにも、

  • 結晶性樹脂
  • 非晶性樹脂

がある事は、ご存じですか?

 

ご存じではありませんよ。

教えてもらっても
いいですか?

分かりました。

まず、

合成樹脂(プラスチック)は、
人工的につくられた
『高分子化合物』なんです。

ふむふむ。

そして、

この高分子化合物は、

Point

数千から数万の原子が
鎖状につながった、
『高分子鎖』
の集まりで出来ています。

 

ふむふむ。

そして、
この高分子鎖が

Point

等間隔に並んでいる状態を
『結晶状態』と呼び、
高分子鎖がランダムに
絡まっている状態を
『非晶状態』と呼んでいます。

 

ふむふむ。

そして、

Point

冷却過程で結晶化する樹脂を
『結晶性樹脂』と呼び、
冷却しても結晶化しない樹脂を
『非晶性樹脂』と呼んでいます。

 

結晶性と非結晶性
参考:ポリプラスチックス株式会社

結晶状態のあるなしで

分類しているんですね。

そういうことです。

では、結晶性樹脂の
特徴を教えて下さい。

結晶性樹脂の特徴は、

Point

透明度が低く収縮率は大きいですが、
硬く剛性に優れています。
また、結晶部がある事で、
薬品の浸透を防いでくれます。

 

耐薬品性が高い傾向に

あるんですね。

では、非晶性樹脂の
特徴も教えて下さい。

非晶性樹脂は、

Point

透明度が高く収縮率は小さい樹脂で、
耐衝撃性に優れています。

 

なるほど。

用途に合わせた

選定が必要ですね。

結晶性樹脂と非晶性樹脂
  • スーパーエンプラにも、
    結晶性樹脂・非晶性樹脂がある。

  • 合成樹脂のような高分子化合物は、
    数千から数万の原子が鎖状に
    つながった、『高分子鎖』の
    集まりで出来ている。

  • 高分子鎖が、等間隔に並んでいる
    状態を『結晶状態』と呼び、
    ランダムに絡まっている状態を
    『非晶状態』と呼ぶ。

  • 冷却過程で結晶化する樹脂を
    『結晶性樹脂』
    冷却しても結晶化しない樹脂を
    『非晶性樹脂』と呼ぶ。

  • 結晶性樹脂は、透明度が低く
    収縮率は大きいが
    剛性・耐薬品性に優れている。

  • 非晶性樹脂は、透明度が高く
    収縮率は小さいが
    耐衝撃性に優れている。

 

スーパーエンプラの構造と特性

なんで、
スーパーエンプラは、

エンプラより耐熱温度が
高いんですか?

それはですね。

まず、

Point

スーパーエンプラの耐熱性を
確認するポイントに、

  • ガラス転移点
  • 融点

があります。

 

どういうことですか?

まず、
結晶性樹脂には、

Point

結晶状態と非晶状態が存在しており、
温度を上げると、非晶状態の分子が
動き出し、剛性が低下します。
この剛性が低下する温度を
『ガラス転移点』と言います。

 

樹脂の性質が変化する
温度を『ガラス転移点』
と言うんですね。

そして、

Point

このガラス転移点より、さらに温度を
上げていくと、結晶分子まで動き、
溶融します。この樹脂が溶融する
温度を『融点』と言います。

 

融点は、個体が液体に
変わる時の温度でしたよね。

あれ?

ということは、

結晶状態がない

非晶性樹脂には、融点が
ないということですか?

そうなんです。

Point

非晶性樹脂には、
はっきりとした融点はなく
いつの間にか液体になっている。

 

という感じなんです。

なるほど・・・。

ガラス転移点と融点って

大事なんですね。

では、スーパーエンプラは

ガラス転移点や融点が

高いんですか?

それは、
分子鎖の主骨格である

主鎖の結合が強いので
耐熱性が高いんです。

どういうことですか?

汎用プラスチックは

Point

『主鎖』が炭素のみで
つながっており、加熱すると
分子運動が激しくなるので
熱変形しやすいんです。

 

炭素のみだと、
熱に弱いんですね。

では、エンプラや
スーパーエンプラは

何でつながって
いるんですか?

エンプラは、

Point

主鎖に酸素や窒素が含まれており
汎用プラスチックより
ガラス転移点が高くなります。

 

そして、

Point

スーパーエンプラは、
主鎖にベンゼン環が含まれており、
エンプラよりも熱変形しにくくなり
ガラス転移点が高くなります。

 

なるほど。

分子構造によって、

耐熱性や高温での強度が
高くなるんですね。

しかも、

Point

ベンゼン環を含むことで
分子運動しにくくなるので、
機械的強度もアップします。

 

主鎖にベンゼン環が入ると
機械的強度と耐熱性が
高くなるんですね。

スーパーエンプラの構造と特性
  • スーパーエンプラの耐熱性を
    確認するポイントに、
    ガラス転移点・融点がある。

  • 結晶性樹脂の非晶状態が崩れる
    温度を『ガラス転移点』と言う。

  • 結晶性樹脂の結晶分子が
    溶融する温度を『融点』と言う。

  • 非晶性樹脂には、はっきりとした
    融点はなく、いつの間にか
    液体になっている。

  • スーパーエンプラは、主鎖に
    ベンゼン環が含まれているので
    エンプラよりガラス転移点が高い。

  • ベンゼン環を含むと
    分子運動がしにくくなり、
    機械的強度もアップする。

 

スーパーエンプラの種類と特徴

なぜ、最初PEEKを
勧めたんですか?

スーパーエンプラの

種類と特徴を
教えて下さい。

分かりました。

先ほどもお話ししたように、

スーパーエンプラにも、

結晶性樹脂と
非晶性樹脂があります。

では、結晶性樹脂の
種類からお願います。

分かりました。

結晶性樹脂には、

Point
  • PEEK
  • PPS
  • LCP

等があります。

 

それぞれの特徴を

教えて下さい。

まず、PEEKですが、

Point

PolyEther Ether Ketone
(ポリエーテル・エーテル・ケトン)
という樹脂の略称です。

 

ポリ○○のポリって
どういう意味なんですか?

ポリ(poly-)は、

Point

『たくさんの』を意味していて、
エーテル・エーテル・ケトンの順に
たくさん結合しているので、
このように呼ばれています。

 

意外と単純なんですね。

そうなんです。

PEEKの特徴は、

Point
  • ガラス転移点は、143℃。
  • 融点は、340℃。
  • 連続使用温度は、250℃。
  • 機械的強度が高い。
  • 高い難燃性を持つ。
  • 吸水性が低い。
  • 耐薬品性に優れている。
  • 耐放射線性に優れている。
  • 電気絶縁性に優れている。

など、スーパーエンプラの中でも
最高峰の結晶性樹脂です。

 

ケトロンⓇPEEK
参考:三菱ケミカルアドバンスド
マテリアルズ株式会社

熱や水分の影響を

受けにくいので、
安定した加工が
出来るんですね。

あれ?

ガラス転移点が

耐熱温度より
下回ってますよ。

そうなんです。

実は、

Point

ガラス転移点を超えたからと言って
すぐにドロドロになるわけではない
ので用途が合えば使用できるんです。

 

高温下で使用する場合は

きちんと調べる必要が
ありますね。

次にPPSですが、

PPSは、

Point

Poly Phenylene Sulfide
(ポリ・フェニレン・サルファイド)
という樹脂の略称です。

 

どんな特徴が
あるんですか?

PPSは、

Point
  • ガラス転移点は、90℃。
  • 融点は、282℃。
  • 連続使用温度は、220℃。
  • 機械的強度が高い。
  • 高い難燃性を持つ。
  • 吸水性が低い。
  • 耐薬品性に優れている。
  • 電気絶縁性に優れている。

といった特徴がある、PEEKより
安価なスーパーエンプラです。

 

テクトロンⓇPPS
参考:三菱ケミカルアドバンスド
マテリアルズ株式会社

PEEKからPPSに
変更することで

コストダウンが出来る
場合があるんですね。

次は、LCPですが
LCPは、

Point

Liquid Crystal Polymer
(液晶ポリマー)
の略称で、液晶ポリエステルとも
呼ばれています。

 

液晶?

そうなんです。

実は、LCPは、
通常の結晶性樹脂とは

違うんです。

どう違うんですか?

LCPは、

Point

固体時だけでなく溶融時にも
結晶の性質をもつ
液晶性のプラスチックです。

 

液晶って、個体と液体の
両方の性質を持って
いるんですね。

どんな特徴が

あるんですか?

LCPの特徴は、

Point
  • 耐熱性に優れている。
  • 高強度。
  • 高弾性。
  • 難燃性。
  • 成形流動性に優れる。

等があり、大きく分けて
3タイプに分類されます。

 

スミカスーパーLCP
参考:住友化学株式会社 機能樹脂事業部
エンジニアリングプラスチックス部

3タイプもあるんですね。

あれ?

LCPにガラス転移点は

無いんですか?

LCPのような
液晶性のポリマーは、

Point

結晶性、非晶性樹脂のような
極端な弾性率低下などはなく、
温度上昇とともに徐々に低下します。

 

なるほど。

では、次に
非晶性樹脂の種類を
教えて下さい。

非晶性樹脂には、

Point
  • PEI
  • PAI
  • PBI

等があります。

 

PEIについて

教えて下さい。

PEIは、

Point

Poly Ether Imide
(ポリ・エーテル・イミド)
の略称です。

 

PEIには、

Point
  • ガラス転移点は、215℃
  • 連続使用温度は、170℃。
  • 機械的強度が高い。
  • 高い難燃性を持つ。

といった特徴があります。

ただし、耐摩耗性・耐薬品性には
難点があるので注意して
使用して下さい。

 

ジュラトロンⓇPEI
参考:三菱ケミカルアドバンスド
マテリアルズ株式会社

PAIはどうですか?

PAIは、

Point

Polyamide Imide
(ポリアミド・イミド)
の略称です。

 

PAIには、

Point
  • ガラス転移点は、275℃。
  • 連続使用温度は、250℃。
  • 機械的強度が強い。
  • 耐摩耗性が高い。
  • 高い難燃性を持つ。

といった特徴があります。

 
ジュラトロンⓇPAI
参考:三菱ケミカルアドバンスド
マテリアルズ株式会社

PEEKと比べると

どうですか?

PAIもPEEKどちらも
素晴らしい性能を

持っていますが、

Point

PEEKのガラス転移点でもある
143℃を超えて使用する場合は、
PAIを使う方が安定して使用できます。

 

使用する温度が、

選定する目安に
なりますね。

最後にPBIですが、
PBIは、

Point

Polybenzimidazol
(ポリベンゾイミダゾール)
の略称です。

 

PBIは、

Point
  • ガラス転移点は、398℃。
  • 連続使用温度は、310℃。
  • 機械的強度が高い。
  • 高い難燃性を持つ。

といった特徴があります。

 
ジュラトロンⓇPBI
参考:三菱ケミカルアドバンスド
マテリアルズ株式会社

ガラス転移点が
398℃ですか・・・。

すごいですね。

その為、

Point

セラミックや金属の代替部品として
使用されることが多い樹脂ですが、
非常に硬いので加工が難しい
素材です。

 

高温で使用する場合には、

非晶性樹脂を選ぶ方が
良いのかもしれませんね。

スーパーエンプラの種類と特徴
スーパーエンプラ(結晶性樹脂)
項目 PEEK PPS
ガラス転移点(℃) 143 90
融点(℃) 340 282
連続使用温度(℃) 250 220
引張強度(Mpa) 98 93
曲げ強度(Mpa) 170 147
圧縮強度(Mpa) 119 108
衝撃強さ(J/m) 77 19
吸水率(%) 0.04 0.01
スーパーエンプラ(非晶性樹脂)
項目 PEI PAI PBI
ガラス転移点(℃) 215 275 398
融点(℃)
連続使用温度(℃) 170 250 310
引張強度(Mpa) 124 147 160
曲げ強度(Mpa) 157 196 220
圧縮強度(Mpa) 118 118 294
衝撃強さ(J/m) 42 138 46
吸水率(%) 0.25 0.33 0.4

まとめ

スーパーエンプラは、
樹脂特有の機能を保ちながら
高い耐熱性と機械的強度を
持っている樹脂です。

まだまだ価格が高く、用途が高度なため
使用する機会は少ないですが、
高付加価値を生み出す素材なことは
間違いありません。

エンプラでは使用できない箇所に
金属の代替材として、一度
検討してみてはいかがでしょうか?