若手が辞める「2つの無駄」と副社長の覚悟|組織の病理を暴く【架空金属産業(株)無責任事業承継物語 第8話】

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キャンプ用のテントやランタン、バックパックが並ぶ趣味の部屋で、大型モニターに映し出された売上グラフや表を見ながら打ち合わせをする二人の男性。カジュアルなジャケット姿で不敵に笑う副社長と、短髪で眼鏡をかけ、作業服姿でタブレットを手に驚きと真剣な表情を見せる主人公(ゆういち)。 無責任事業承継物語
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■前回のあらすじ

『曇った鏡の正体』

「自分は泥を被りたくない」。

喫茶店の奥席で保身に走る社長に対し、
私は石田部長のプライドを守りつつ実権を
切り離す「事業推進部」新設を提案した。

案に飛びつく社長に
「今の会社の澱んだ空気は誰を映す鏡か」
と禁断の問いを投げる。

激昂する社長をなだめ、部長の説得を
約束させた私は、その足で次なる「鏡」──

世代交代の鍵を握る副社長の元へと
向かうのだった。

■第8話:異質な副社長室と冷徹な計算

部屋の隅には、有名アウトドアブランドの
テントが張られ、棚には手入れされた
ヴィンテージランタンが整然と並んでいる。

そんな趣味の空間で、唯一「仕事」を
感じさせる場違いな大型モニター。

その前で、山田副社長はスーツではなく、
紺のジャケットにグレーの
Tシャツというラフなスタイルで、
カタカタとキーボードを叩いていた。

山田副社長
山田副社長

おう!ゆういち、
久しぶりだな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

お久しぶりです。 

ゆういち(私)
ゆういち(私)

お時間いただき、
ありがとうございます。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

今日は、
確認したいことがあり、
参りました。

山田副社長
山田副社長

あぁ、社長から聞いたか?
俺が推薦した件だろ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

はい。
その件です。

山田副社長
山田副社長

社長はまだ元気だが、
かなりの高齢だから、
いつどうなっても
不思議はない。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ、そうですよね。

山田副社長
山田副社長

だから、俺が社長就任を
引き受けると同時に、
一緒に仕事をするなら
お前としたいと思って
推薦した。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……。
ありがとうございます。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、社長から聞いている
話を前向きに進めても
問題ないのですね。

山田副社長
山田副社長

あぁ、問題ない。

山田副社長
山田副社長

俺はずっと製造部を見てきた。
営業部は仕事への熱量があり、
信頼できる奴に見てほしい
と思っている。

副社長は一度キーボードから手を離し、
こちらを見た。

山田副社長
山田副社長

石田さんも、もういい年だ。

そろそろ世代交代を
する必要もあるしな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

分かりました。

山田副社長
山田副社長

俺からも、石田さんに
その話をしたんだ。

山田副社長
山田副社長

答えは、まだ保留だが。

副社長は鼻で笑った後、
少し声を潜めるように続けた。

山田副社長
山田副社長

社長からも
一応伝えたようだが……。

山田副社長
山田副社長

あいつ(石田営業部長)、
こう言っていたそうだぞ。
『お前(ゆういち)に
営業部長を任せたら、
部員は全員辞める』とな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(はぁ! ふざけるな。
お前が原因で辞めた社員が、
過去に何人いると
思っているんだ。)

山田副社長
山田副社長

10年以上前、お前が社員に
厳しく当たっていたことを
言っていたそうだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

それを言うなら
『それ、お前のことだろ!』と
言い返してやりたいですけどね。

怒りで視界が揺らいだが、
言葉が堰を切ったように溢れ出した。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

石田営業部長が私に、
『俺のアイデアに反対するなら、
俺もお前のアイデア
すべてに反対してやる。』や

ゆういち(私)
ゆういち(私)

議論になれば『俺に反対したい
だけだろ、お前なんか【クビ】だ。
辞めてしまえ!』

ゆういち(私)
ゆういち(私)

と罵倒していたことを棚に上げて
良く言えるな。そんなこと。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

若手社員から石田営業部長への
不満の声は、今も私のところにも
上がってきています。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

例えば……。

山田副社長
山田副社長

ん?なんだ、
愚痴ぐらい聞いてやるぞ。

私はそこでハッと気づき、深く息を吐き出した。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……いえ、やめておきます。
同じ土俵で争っても、
何も生まれませんから。

山田副社長
山田副社長

……あぁ、まあそうだな。

賢明だ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ただ、そんな状態で
話を進めていいんですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

現場が混乱するのは
目に見えています。

山田副社長
山田副社長

大丈夫だ。

多少の血は流れても、
世代交代は
どうしても必要だ。 

山田副社長
山田副社長

私はどうしても、
この会社の停滞を
打破したいんだ。

山田副社長
山田副社長

石田さんに任せていたら、

今と同じで、社員の給料も

上げられない。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(……不安はある。
だが、思いは一致している。
副社長の覚悟、
信じるしかないか。)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

分かりました。では、
私の考える今後の取り組みを

聞いてもらい、判断してください。

山田副社長
山田副社長

おう、分かった。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

私は将来、
『架空金属産業(株)』
を発展させるのは、今の
若手社員だと思っています。

山田副社長
山田副社長

まぁ、そうだな。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

しかし、営業部の
若手社員から聞くのは

・頑張っても報われない。
・上司が守ってくれない。

などの不満が聞こえてきます。

山田副社長
山田副社長

私の耳にも
一部入ってきている。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

なぜだろう?
と原因を考えていた時、

ゆういち(私)
ゆういち(私)

以前、人材育成会社の代表
(株式会社Momentor
坂井風太氏)が発信していた
言葉が、今のこの会社に
あまりにも当てはまるんです。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

若手が会社を見限る理由は、
2つの『無駄』にあると。

■いても無駄
 上の世代を見ても、
 『いずれ、こうなってしまうのか・・・。』
 と思い憧れない。

■言っても無駄
 『心理的安全性』や『抜擢』を大切に
 しているフリをして、知識&経験マウントで
 『発言機会』や『決断経験』をへし折る。
 しまいには、『過去の武勇伝』を長々と
 語り始める。

※参考・謝辞
本説は、坂井風太氏(Momentor代表)が
出演されたYouTube動画「Z世代がたった数年で会社を見切る理由(PIVOT公式)」
を参考に、物語の核として引用いたしました。
組織改革の核心を突く貴重な知見に感謝いたします。
ゆういち(私)
ゆういち(私)

この言葉に出会い、
若手社員の『会社への不信感』
を払拭する必要があると
感じています。

山田副社長
山田副社長

……くくっ、
なるほどな。

山田副社長
山田副社長

社長や石田さんは、
まさにこの典型だもんな。
傑作だ。

山田副社長
山田副社長

あいつらは、
俺やお前のような
理論を立てるタイプが
苦手なんだよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

笑い事ではありません。
不信感を断ち切らない限り、
誰が上に立っても
未来なんてありません。

山田副社長
山田副社長

では、どのように
考えているのか
教えてくれ。

私はPCを開き、先日社長に説明した
『組織改革のロジック』と同じ内容を
副社長に説明し始めた。

第9話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者

82歳

誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳

新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

 

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳

エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業