梯子を外す経営陣。骨抜きにされた改革案と「空席」の責任|善人面した社長の裏切り:第17話

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早朝の駐車場で山田社長からの電話に戸惑う40代サラリーマンと、背後でその足元の床をシャベルで壊そうとする森田相談役のイラスト。上部に「嫌な予感」、下部に「足元を崩そうとする企み」の文字。
静かに、そして確実に梯子を外していく経営陣。
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■前回のあらすじ

理不尽な和解案と消えた任命責任

数字で石田部長を論破したゆういちだが、
石田部長は社長に泣きつき反撃。
社長室に呼び出されたゆういちは、
「君が大人になって歩み寄れ。」と
理不尽な和解を迫られる。

 

任命責任を棚に上げる経営陣に対し、
仲間を裏切れないと拒絶するゆういち。
密室の裁判を経て、次なる戦いの
舞台であるミーティングが始まる。

■ 第17話:骨抜きにされた改革と「空席」の責任

早朝の静寂を切り裂くように、
スマートフォンのバイブ音が響く。

画面に表示されたのは「山田社長」の名前。
胸の奥がざわつく。嫌な予感しかしない。
私は小さく息を吐き、通話ボタンを押した。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

おはようございます。
ゆういちです。

山田社長
山田社長

この前話していた、
ミーティング後に
システムの説明を行う話だが、
あれを白紙にしてほしい。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

えっ?
どういうことですか?

山田社長
山田社長

この前決めた、
システム導入の説明を
ミーティング後、
全体に話すのは
「延期にしてほしい。」
という話だ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

は?「導入したい。」と
言ったのは、そちら側ですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

意味が分からないんですが?

山田社長
山田社長

とにかく、全体に話すのは、
延期にしてほしいんだ。

山田社長
山田社長

とはいえ、グループ長には
個別に話してくれていい。

山田社長
山田社長

詳細は、相談役に聞いてほしい。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

全体への説明は中止ではなく、
延期ですね。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ちなみに、社長は個別説明会に
参加するんですか?

山田社長
山田社長

私はいない方がいいだろ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……は?
何の意味もなくないですか?

INTERNAL MONOLOGUE

週末、石田部長に反対され、
社長が日和ったのだろう。
「事後報告」が火種になることは、
分かりきっていたはずだ。

不気味な既視感が脳裏をかすめる。
かつて私が石田部長から受けた
「あの仕打ち」も、
黒幕は、この「善人面をした社長」
だったのではないか?

?
ゆういち(私)
ゆういち(私)

……分かりました。

山田社長
山田社長

おお、そうか。
では、またミーティングでな。

私は想定内の絶望を感じながら、
底知れぬ無責任さに呆れ果て、
相談役に電話をかけた。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

森田相談役、
おはようございます。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

社長から、全体への説明会を、
「延期にする。」と聞きました。

森田相談役
森田相談役

そうです。
延期になりました。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(……ん、
なりました?)

ゆういち(私)
ゆういち(私)

でも、そろそろ
システム導入にむけて、
話を進めていかないと
来期のスタートに
間に合わないですよ。

森田相談役
森田相談役

そうですね。

森田相談役
森田相談役

なので、グループ長のみへの
説明は進めてください。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そんな説明は、会社全体での
拘束力がない以上、
なんの意味も持たないですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

あと、何て言って説明を
始めればいいんですか?

森田相談役
森田相談役

それは、
私がミーティングの後に、
「グループ長全員で
ゆういちさんの話を
聞いてほしい。」
と伝えます。

森田相談役
森田相談役

そのあとに
話をしてくれればいいです。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

その個別の説明会に
森田相談役は、
出席されるんですか?

森田相談役
森田相談役

私は出席しません。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そうなると、
「なぜグループ長が
招集されたのか?」を
説明するのが難しいですよ。

森田相談役
森田相談役

その時は、
「私がそう言っていた。」
と言ってくれればいい。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そんなの、
何の役にも立たないですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

もしかして逃げました?

森田相談役
森田相談役

……。

電話の向こうで、
相談役の卑怯な沈黙が流れた。
伝わってきたのは、
組織の闇を煮詰めたような、
乾いた苦笑い。

森田相談役
森田相談役

まぁ、そういうことで
お願いします。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

……分かりました。
説明を行います。

STRATEGIC ISOLATION

その一言で、私は正式に
「生贄」に指名された。
経営陣が求めているのは、
改革の成功ではない。
「説明した」というアリバイ工作。

私の情熱も、若手への想いも、
彼らは何も感じない。
「私が何をしたいのか」を、
彼らは一度も感じてくれなかった。

吐き出しようのない不快感を飲み込み、
形だけのミーティングが始まった。

石田部長
石田部長

では、
ミーティングを始めます。

いつも通りの当たり障りのない
ミーティングが進み、
終わりに近づいたとき、
森田相談役が口を開く。

森田相談役
森田相談役

ミーティング終了後、
3つのグループ長同士で、
来期に向けたゆういちさんの
「案」を聞いてください。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(案……?
決定事項じゃなかったのか?)

DOWNGRADED STATUS

相談役の言葉に、耳を疑った。
社長主導の「決定事項」
であったはずのシステムが、
いつの間にか
私個人の「アイデア」
へと格下げされていた。

責任という泥を被りたくない
上層部によって、改善案ではなく
ただの「お願い事」に成り下がった。
彼らにとって組織とは、
守るべき場所ではないのかもしれない。

石田部長
石田部長

では、
ミーティングを終わります。

石田部長は、少しむっとした表情で、
ミーティングを締め、
逃げるように会議室を後にした。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(あれ?
第1グループ長はいるが、
第2グループ長がいない。)

CRITICAL FAILURE

ミーティングが終わり、
説明会に残ってくれたのは、
第1グループ長と第2グループの
『PCに強いから』という理由で
押し付けられた若手のリーダーだ。

これこそが、この説明会に
なんの意味もないことを表しており、
石田部長からの『拒絶回答』だった。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、説明会を始めます。

RESULT: INCOMPLETE

案の定、説明の言葉は空を切った。
「導入」という決定を欠いた言葉に、
説得力など宿るわけがない。
改革の武器は、「システム紹介」
として静かに幕を閉じた。

— 響かない言葉、動かない組織。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、説明会を終了します。
お疲れさまでした。

私は、深く息を吐き、
「もう、彼らに期待するのはやめよう。」
と心に誓うには十分だった。

⚖️ 『責任』が曖昧な組織の共通点

  • 「決定事項」を個の「案」にすり替え、
    失敗した時の責任を現場に押し付ける。
  • 「延期」や「不在」を容認することで、
    不都合な改革を骨抜きにし、
    アリバイ工作だけを行う。

これらに心当たりがあるなら、
それは組織の「調整」ではなく、
経営陣による『改革の放棄』です。

第18話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

石田部長
石田部長

数少ない生え抜き社員
58歳
社長公認の「子供っぽさ」
がある感情的な性格

小林由美
小林由美

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業