『夕食の席で交わされた、守られるはずのない約束』
私(ゆういち)が勤務する、
地方の小さな金属会社(架空金属産業(株))で
『事業承継』をめぐる、あまりにも理不尽で
無責任な『大人の約束』をあっさり反故にされた
絶望感・・・。
どこかで吐き出さないとやってられないので、
物語として書いてみることにしました。※登場人物はすべて架空ですが、
どこかの会社の、誰かの身にも
起こっているかもしれません。
それは、高級な料理が並ぶ、
静かな夕食の席でのことだった。

今年もゆういち君が
エンジニアリング課の
課長として頑張ってくれて、
本当に助かっているよ。

お客様からの評判も良いと
聞いているよ。

……ありがとうございます。
ただ、現場でエンジニアリング課の
みんなが頑張ってくれてるおかげです。

謙虚なことはいいことだ。
ところで……君と犬猿の仲である、
石田営業部長との仲はどうなんだ?

エンジニアリング課の調子がいいので、
最近は口出ししてくることが減り、
ほぼ接点がなくなりました。

そうか・・・。

(僕の悪口を方々で言いふらしている
とは聞いてるけど、黙っておこう。)

ただ、営業課の若手社員からの
不平不満は耳に入ってきます。

石田営業部長は、
人をほめることが
出来ない人ですからね。

じゃあ、なんでそんな人が
営業部長なんですか?

それは、私の失敗だ。
申し訳ないと思っている。

まあ、石田営業部長も58歳だから
役職定年まで、あと2年だ。

『あと、2年我慢してくれ!』
って話をするために、
今日呼んだんですか?

(早めに切り上げて帰ろう。)

違う、違う。
今回呼んだのは、
来年、創業50年の年だ。
私の年のこともあり、息子の副社長に
社長を譲ろうと思っているんだが、
君はどう思うかを聞きたかったんだ。

社長の考え方と副社長の考え方は
全く違うので、慎重に進めないと
周りが混乱すると思っています。

どのように進めていこうと思って
いるのか、具体的に教えてください。

まだ、どう進めていくかは
決まっていない。

えっ!!
そんなの上手くいくわけ
ないじゃないですか。

毎回、意見の食い違いで
言い争いばかりしているのに。

大丈夫だ。
今は意見が違っても
親子だから、根っこは
つながっている。

(……嘘だ。であれば、
もっと早く世代交代
できてるでしょ。)

そこで相談なんだが。
息子は、君のことを買っており、
君を営業部長に据えることが
社長になる『条件』だと言っている。

(……僕が、営業部長に?)

石田営業部長と関わりたくないので
やりたくないです。

息子は『世代交代をしたい!』
と言っており、ゆういち君しか
営業部長はできないと言っている。

(年上の石田営業部長が、
副社長は面倒なんだろうな。)

そもそも、石田営業部長は
どうするんですか?

『石田営業部長を
どうすればいいか?』
も含めて考えてくれ。

えっ!
僕の考えたことなんて
反対するでしょ。

社長の私が言えば、
石田営業部長は
なんとでもなる。

石田営業部長は、
社長の言うことなら聞きますよ。

(この無責任な確信は
どこから来るのか。
……だが、副社長には
お世話になっているし、
力になって恩を返したい。)

分かりました。
……前向きに、考えてみます。

そうか!
案がまとまったら
また話をしよう。
■背景情報
| <社名>架空金属産業株式会社 社員総数50名 | ||
| 営業部営業課 | 機械部品販売 | 営業 8名 |
| 営業部エンジニアリング課 | 機械修理・改造 | 技術者 5名 |
| 製造部製造1課 | 機械加工 | 作業者 10名 |
| 製造部製造2課 | 塗装 | 作業者 10名 |
<登場人物>

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる。

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業