亜鉛めっきとユニクロめっきの違いとは?クロメートフリー処理って何

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表面処理

めっき屋さんに

『亜鉛めっき』を頼んだら
『ユニクロめっき』になる
と言われました。

へー。何にめっき
かけるんですか?

えっ!

えっ?

何か、
問題ありました?

問題というか、

亜鉛めっきを頼んだのに

ユニクロめっきになるって
おかしくないですか?

あー。

そういうことですね。

ユニクロめっきは、

電気亜鉛めっきに

クロメート処理した

ものなんです。

えっ!

そうなんですか。

めっき屋さんに言う前で
よかったです。

という、やりとりがありました。

テーマ

今回は、『クロメート処理』
について、簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。

 
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ユニクロめっきと亜鉛めっき

そもそも
『ユニクロめっき』

って何ですか?

私の分かる範囲での

説明になりますが

大丈夫ですか?

よろしくお願いします。

まず、

ユニクロめっきですが

Point

アメリカの
ユナイテッドクロミウム社
(UNITED CHROMIUM社)
が開発した為、『ユニクロ』
と呼ばれています。

 

ユニクロめっきって

商標名だったんですね。

実は、そうなんです。

ユニクロめっきは、

Point

有色クロメート処理を行った後、
アルカリ性の水溶液で処理し、
6価クロムを溶出させて
光沢クロメートとしたものです。

 

ふむふむ。

ただ、最近では

Point

フッ化水素酸を含有している
めっき液を使用した
光沢クロメートが、
多く使用されています。

 

光沢クロメートって

なんですか?

光沢クロメートとは、

外観の光沢を重視した
クロメート処理の総称です。

光沢クロメートという
グループの中に、
ユニクロめっきが
あるんですね。

ただ、最近では、
ユニクロ=光沢クロメート
みたいになっています。

クロメート処理は

絶対に必要なんですか?

亜鉛めっきだけでは
ダメなんですか?

良い悪いの前に
亜鉛めっきの

説明からします。

亜鉛めっきには、

Point
  • 溶融亜鉛めっき
  • 電気亜鉛めっき

の2種類があります。

 

何が違うんですか?

溶融亜鉛めっきは、

Point

高温で溶かした亜鉛が入っている
めっき槽に浸漬させることから、
『ドブ漬け』とも言われる、
表面に亜鉛皮膜を形成する処理です。

 

溶融亜鉛めっきとは
参考:一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会

ドブ漬けにすると

どうなるんですか?

ドブ漬けにすると、

Point

溶融亜鉛めっきの膜厚を
厚くすることが出来るので、
クロメート処理の
必要がなくなります。

 

溶融亜鉛めっきに

クロメート処理は、
必要ないんですね。

次に、
電気亜鉛めっきですが、

Point

亜鉛イオンを含む電解液に
電流を流して、めっき皮膜を
形成する処理です。

 

なるほど。

ただ、
電気亜鉛めっきは、

Point

膜厚が薄いため、酸化による変色や
腐食といった影響を受けやすく、
単体で使用されることは
ほとんどありません。

 

だから
電気亜鉛めっきには

クロメート処理

が必要なんですね。

ユニクロめっきと亜鉛めっき
  • ユニクロめっきは、アメリカの
    ユナイテッドクロミウム社
    が開発した。

  • ユニクロめっきとは、
    6価クロムを溶出させて
    光沢クロメートにしたもの。

  • 最近は、フッ化水素酸を
    含んだめっき液を使用した
    光沢クロメートが
    多く使用されている。

  • 亜鉛めっきには、
    溶融亜鉛めっきと
    電気亜鉛めっきがある。

  • 溶融亜鉛めっきは、膜厚が
    厚いので、クロメート処理を
    する必要がない。

  • 電気亜鉛めっきは、
    膜厚が薄いので、酸化による
    変色や腐食を受けやすく、
    単体で使用されることは、
    ほとんどない。

 

クロメート処理とは?

電気亜鉛めっきに、

クロメート処理が
必要なことは
分かりました。

クロメート処理に
ついても教えて下さい。

分かりました。

まず、
クロメート処理とは

Point

6価クロムを含有する溶液に
浸漬させ、クロメート皮膜を
生成させる化成処理です。

 

5006 クロメート処理
クロム酸又は重クロム酸塩を
主成分とする溶液中に品物を
浸せきし、化学的に防せい皮膜を
生成させる方法。
引用:JIS H 0400
電気めっき及び関連処理用語

化成処理って何ですか?

化成処理とは、

Point

化学薬品などによって
化学反応をおこし、防錆皮膜を
生成させる処理のことです。

 

1003 化成処理
化学及び電気化学的処理によって、
金属表面に安定な化合物を
生成させる処理。
引用:JIS H 0400
電気めっき及び関連処理用語

なるほど。

化学的処理で、防錆皮膜を
作ることを『化成処理』
って言うんですね。

また、
クロメート処理は
処理液の組成により

Point
  • 光沢クロメート
  • 有色クロメート
  • 黒色クロメート
  • 緑色クロメート

など、色々なクロメート処理に
分類されます。

 

何が違うんですか?

大きな違いは、

クロメート皮膜の厚みで、
外観と耐食性が違います。

皮膜が厚いほど、

『耐食性が良い。』
ということですね。

そういうことです。

まず、
光沢クロメートは、

Point

表面に青味かかった光沢がある
クロメート処理です。

 

5008 光沢クロメート皮膜
化学研磨作用を利用して、めっきに
光沢を与えるクロメート皮膜。
引用:JIS H 0400
電気めっき及び関連処理用語

耐食性はどうですか?

耐食性については、

Point

光沢クロメートの皮膜は、
最も薄く、耐食性が一番悪い
クロメート処理なんです。

 

光沢クロメートは、

外観を重視する用途で

使用されるんですね。

次に、
有色クロメートは、

Point

防食を目的とした黄色や
淡黄色のクロメート皮膜です。

 

5009 有色クロメート皮膜
防食を目的とする有色
(淡黄色,黄色などの干渉色)
のクロメート皮膜。
引用:JIS H 0400
電気めっき及び関連処理用語

光沢クロメートより

皮膜を厚くしているので

耐食性が高いんですね。

そうなんです。

Point

外観を目的としていないので、
内部の部品など、目に付かない
場所で使用されることが多いです。

 

有色クロメートは、
外観より、耐食性を
重視した処理なんですね。

次は、

黒色クロメートですが、

Point

比較的耐食性がよく、
黒色のきれいな外観が
特徴のクロメート処理です。

 

5011 黒色クロメート皮膜
防食及び装飾を目的とする
黒色のクロメート皮膜。
引用:JIS H 0400
電気めっき及び関連処理用語

有色クロメートと
黒色クロメートでは

どちらの耐食性が

高いんですか?

黒色クロメートは、

Point

有色クロメートより、
皮膜は厚いですが、黒色にするために、
皮膜に銀イオンを含ませているので
耐食性は劣ります。

 

黒色クロメートは、耐食性と
きれいな黒色の外観を
目的とした処理なんですね。

最後に、
緑色クロメートは、

Point

クロメート処理の中で
一番耐食性が高い
クロメート皮膜です。

 

なぜ、耐食性が

一番高いんですか?

クロメート皮膜は、
6価クロムの含有量が
多いほど、耐食性に
優れます。

つまり?

緑色クロメートは、

Point

皮膜中の6価クロム含有量が
最も多いので、耐食性が
一番高いんです。

 

緑色クロメートは、
クロメート処理の中で

一番耐食性が高いんですね。

クロメート処理とは?
  • クロメート処理とは、6価クロムを
    含有する溶液に浸漬させ、
    クロメート皮膜を生成させる
    化成処理のことを言う。

  • クロメート処理は、
    処理液の組成により、
    光沢クロメート・有色クロメート
    黒色クロメート・緑色クロメート
    に分類される。

  • 光沢クロメートは、
    外観を重視する処理で使われる
    ことが多い反面、
    クロメート処理の中で、
    耐食性が一番悪い。

  • 有色クロメートは、防食を
    目的とした黄色や淡黄色の皮膜で
    厚みが厚く、耐食性が高い。

  • 黒色クロメートは、
    比較的耐食性がよく、
    黒色のきれいな外観が特徴。

  • 緑色クロメートは、
    6価クロムの含有量が多く
    クロメート処理の中で
    耐食性が一番高い。

 

クロメート皮膜の特徴

なぜ、6価クロムの
含有量が多いと耐食性が
高くなるんですか?

クロメート皮膜には、

Point
  • 保護皮膜作用
  • 犠牲防食作用

という2つの防食作用があると
考えられています。

 

詳しく教えて下さい。

まず、
保護皮膜作用は、

Point

亜鉛めっきの表面を
クロメート皮膜で覆うことによって
空気や水が通りにくくなり、
サビや腐食などから守ってくれる
作用のことです。

 

保護皮膜が腐食から
守ってくれるんですね。

次は、
犠牲防食作用ですが、

その説明の前に

質問があります。

どうぞ。

通常、
保護皮膜にキズが付いたら

どうなると思いますか?

普通に考えて、

キズが付いた場所から
腐食します!

正解です。

通常、そうですよね。

しかし、

犠牲防食作用があるので、

Point

クロメート皮膜にキズが付いても、
皮膜中の6価クロムが亜鉛と反応して
クロメート皮膜を再生してくれます。

 

クロメート皮膜が

再生するので
再び、防護皮膜が

出来るんですね。

そして、

Point

この犠牲防食作用は、
皮膜に含まれる6価クロムの
含有量が多ければ多いほど
大きく作用します。

 

なるほど。

だから、6価クロムの
含有量が多いほど
耐食性が高くなるんですね。

そうなんです。

ただ、

Point

クロメート皮膜にも欠点があり、
耐熱性が低く、60℃以上になると
6価クロムが溶けにくくなり、
犠牲防食作用が低下します。

 

それと同時に

Point

皮膜が収縮するので
クラックが発生しやすくなり、
耐食性が低下します。

 

なるほど。

60℃以上の環境下では
向いていないんですね。

クロメート皮膜の特徴
  • クロメート皮膜には、
    保護皮膜作用と犠牲防食作用
    という2つの防食作用がある。

  • 保護皮膜作用とは、表面を
    クロメート皮膜で覆うことにより
    サビや腐食などから
    守ってくれる作用のこと。

  • 犠牲防食作用とは、
    クロメート皮膜にキズが付いた
    場合に、皮膜中の6価クロムが
    亜鉛と反応してクロメート皮膜を
    再生してくれる作用のこと。

  • 犠牲防食作用は、
    皮膜に含まれる6価クロムの
    含有量が多ければ多いほど
    大きく作用する。

  • クロメート皮膜にも欠点があり、
    耐熱性が低く、60℃以上になると
    6価クロムが溶けにくくなり
    犠牲防食作用が低下する。

  • 60℃以上になると、
    皮膜が収縮するので
    クラックが発生しやすくなり、
    耐食性が低下する。

 

クロメート皮膜の安全性

そういえば、

6価クロムって毒性が
強いので、規制されて
いませんでした?

そうなんです。

Point

6価クロムは、環境や人体に
有害な物質と言われています。

 

六価クロムの水質基準が改正
参考:愛知県衛生研究所

やっぱりそうですよね。

特に、RoHS指令が
施行されて以降、

Point

クロメート処理の6価クロムの
含有が制限されるようになり、
代替として3価クロメートが
使用されるようになりました。

 
 

6価クロムの使用が
制限されたので

3価クロメートが
使用されるように
なったんですね。

3価クロメートの
特徴を教えて下さい。

はい、

3価クロメートは、

Point
  • 耐熱温度が高い。
  • 6価クロムを含有していない。

といったメリットがあります。

 

6価クロムを
含んでいないんですね。

その為、

Point

6価クロムの含有に厳しい
自動車業界や電気・電子機器業界では、
3価クロメートに切り替わっています。

 

ただ、反対に

Point
  • JIS規格がない。
  • 犠牲防食作用がない。
  • コストが高い。
  • 仕上がりがばらつく。

といったデメリットもあります。

 

3価クロメートには、

犠牲防食作用が

ないんですね。

そうなんです。

なので、

 

Point

3価クロメートに犠牲防食作用と
類似の作用を持たせるために
コバルトを含有させています。

 

コバルトを含有させて
耐食性を高めて
いるんですね。

ただ、最近

コバルトは、

Point

REACH規制の対象であったり、
児童労働といった人権問題など、
不安定な要素が多いので、
コバルトフリーの動きが
活発化しています。

 

そんな問題も
あるんですね。

そのため、

Point

コバルトフリー・クロムフリー
といった化成処理皮膜の
開発が進められています。

 

一度、会社で使っている
ボルトや部品など
調べてみることにします。

クロメート皮膜の安全性
  • 6価クロムは、環境や人体に
    有害な物質と言われている。

  • RoHS指令が施行されて以降、
    6価クロムの含有が
    制限されるようになり、代替で
    3価クロメートが使用されている。

  • 6価クロムの含有に厳しい
    自動車や電気・電子機器業界では、
    3価クロメートに切替わっている。

  • 3価クロメートには、
    JIS規格がない・
    犠牲防食作用がない・
    コストが高い・
    仕上がりがばらつく
    といったデメリットがある。

  • REACH規制の対象であったり、
    児童労働といった人権問題など
    不安定な要素が多いので、
    コバルトフリーの動きが
    活発化している。

  • コバルトフリー・クロムフリー
    といった化成処理皮膜の
    開発が進められている。

 

まとめ

クロメート処理は、電気亜鉛めっきの
防食皮膜として使われてきました。

しかし、環境問題により、
コバルトフリー・クロムフリー
にシフトしつつあります。

今、使用しているクロメート処理が、
あなたの使用条件に合っていますか?

一度、
確認してみてはいかがでしょうか?

ありがとうございました。