
Φ15mmで長さ150mmの
シャフトを、一本急ぎで
作ってほしいんです。

分かりました。
何に使うんですか?

僕も頼まれただけだから、
よく分からないんだよね。

じゃあ、
公差はどうしますか?

いや、普通に
Φ15mmピッタリで
作ってくれればいいよ。

…….。
分かりました。
……数日後、出来上がったシャフトを
納品すると、

穴には入るんだけど
もう少し「軽く」入るように
してほしかった。
ちょっとキツいんだよね。

追加費用いただければ、
もう少し細くできますが
どうしますか?

追加費用かかるなら、
もういいけど
次は気を付けてね。
現場でよくある、「感覚的なやり取り」。
「ピッタリ」の定義が人によって違うので、
せっかく作った部品が現場で
「使いにくい」と言われてしまうんです。
実はこれ、「はめあい公差」の記号を
添えるだけで、すべて解決できる問題だと
いうことをご存知でしょうか?
「ピッタリ」を卒業して、
プロの伝え方を。
はめあい公差の
「ざっくりしたイメージ」
をお伝えします。
「もう少し軽く入るようにして」
そのリクエスト、記号なら
どう答えるのが正解か?
数ミクロンの差で「作業効率」も
「信頼」も変わる。
図面の前でフリーズしない、
公差の『手触り感』を公開します。
なぜ「はめあい公差表」の見方は これほどまでに分かりにくいのか?
公差表に限らず、分厚いカタログや
複雑なグラフを開いた瞬間、
思考がフリーズしてしまう……。
慣れないうちは、その気持ち、
本当によく分かります。

私も、現場に出始めた頃は
「g6?H7?
日本語で話してほしい。」
と思っていました。
でも、安心してください。
公差表は、テストのために暗記するような
ものじゃありません。
読み方のコツさえわかってしまえば、
あの呪文のような記号も、
現場で「どう組めばいいか」
を判断するためのただの記号です。
まずはこの「2つの役割」だけ
脳に叩き込みましょう!
● アルファベット(gやhなど):
はめあいの「種類(すきまの加減)」
⇒ ゆるいのか、きついのかを決定する。
● 数字(6や7など):
寸法の「精度の高さ」
⇒ 数字が小さいほど「超精密」。
はめあいの種類|「手触り」で覚える3つのパターン
はめあいとは、要するに穴と軸を
組む時の「相性」のことです。
現場では、大きく分けて以下の
3つのパターンしかありません。
| 種類 | 状態 | 現場での呼び方 |
|---|---|---|
| すきまばめ | 穴 > 軸 | スカスカ・スルッ |
| 中間ばめ | 穴 ≒ 軸 | ピタッ・しっくり |
| しまりばめ | 穴 < 軸 | ギチギチ・圧入 |
① すきまばめ
穴のほうが軸より大きく、
常に「すきま」がある状態です。
ベアリングのハウジングや、
スライドするシャフトなど、
「動かしたい場所」に使います。
特別な道具はいりません。
手で持って「スルッ」と入れば、
それがすきまばめです。
② しまりばめ
軸のほうが穴より大きく、
計算上は「入らない」はずの関係です。
この重なりを「しめしろ」と呼び、
「絶対に動かしたくない場所」
を強力に固定するために使います。
手では絶対に入りません。
プレス機での「圧入」や、
穴を温めて広げる「焼きばめ」
が必要な、ギチギチの世界です。
③ 中間ばめ
すきまが出るか、しめしろが出るか、
ギリギリのラインです。
「頻繁には動かさないけれど、
精密な位置決めが必要な部品」
などに使われます。
潤滑剤を吹いて、銅ハンマーなどで
「コンコン」と叩けば入る。
程度のしっくりしたはめあいです。
JIS公差表を「感触」で読み解く|軸と穴、それぞれの役割
公差表に並ぶアルファベットは、
ただの記号ではありません。
現場で部品を組む時の「手の抵抗」を
そのまま表しています。
まずは、現場で最もよく使う
「軸(小文字)」と「穴(大文字)」
のイメージを整理しましょう。

「コンコン」と「ガンッ!」の差こそが、公差の正体です。
知っておきたい「大文字」と「小文字」の使い分け
図面を見た時、アルファベットが
大文字か小文字かで、
それが「穴」を指しているのか「軸」を
指しているのかが決まっています。
- 大文字(H7など):穴の公差
基本的には「穴基準」といって、
穴を先に加工して、そこに合う軸を
調整するのが一般的です。 - 小文字(h6など):軸の公差
今回のように、
市販の「スライドブッシュ」や
「ベアリング」を使う場合は、
軸側を合わせることになります。
【実践】公差表から「実寸法」を読み取る
イメージが掴めたら、
次は実際の数値を読み取ってみましょう。
公差表を例に解説します。

【実例】公差表から実寸法を導き出す手順。
例1:φ20 h7(軸の場合)
「18を超え、24以下」の行を見ます。
h7公差は「0~-21μm」なので、
実寸法は19.979mm ~ 20.000mm。
(絶対に20mmより太くならない、
マイナス公差です)
例2:φ15 H7(穴の場合)
「14を超え、18以下」の行を見ます。
H7公差は「+18~0μm」なので、
実寸法は 15.000mm ~ 15.018mm。
(絶対に15mmより細くならない、
プラス公差です)
「g6」と「h6」の境界線
この「g」と「h」は、
表で見れば隣同士。
寸法差はわずか数ミクロンです。
しかし、現場での意味は違います。
● g6(すきま優先):
Φ15なら-6μm~-17μm
「動くこと」が前提。
油を回して滑らかに動かしたい場合。
● h6(精度優先):
Φ15なら0~-11μm
「ガタつかないこと」が前提。
精密な位置出しが必要な場合。
「g6」でいい場所に「h6」を指定すると、
きつすぎて組み立てに時間がかかり、
逆に「h6」が必要な場所に「g6」を使うと、
スカスカで精度が出ない……。
この「一文字の重み」が分かってくると、
あの呪文のような公差表が、
設計者からの「ここはこう組んでくれ!」
というメッセージに見えるはずです。
【現場のリアル】公差の「たった一文字」で作業効率は激変する
現場でサッと描いた「手書きのスケッチ」
から加工を依頼するとき。
寸法(例えばφ20)は書いてあっても、
そこに「公差」まで丁寧に書き込む人は、
正直あまりいません。

「このシャフト、
ただの持ち手?
それともベアリングに
叩き込むやつ?」
このように、
「その部品が何のためにあるのか」
をたった一言確認するだけで、
加工後の「入らない!」「スカスカだ!」
という悲劇は9割防げます。
「とりあえず精密に」が会社を苦しめる?
公差を意識すべき理由は、
トラブル防止だけではありません。
「よく分からないから、とりあえず
一番厳しい精度(h6など)にしておこう」
という安易な判断は、
実は不必要な加工コスト(お金)
をドブに捨てているのと同じです。
精度を1ランク上げるだけで、
加工時間は長くなり、
刃物の消耗も激しくなります。
「必要な場所に、必要な公差を」。
これが、現場を知るプロの
設計・メンテナンスの姿です。
加工を依頼する前の「3秒」の習慣
「推奨公差」を間違えると、
高価な精密部品がただの鉄くず
に変わってしまいます。
加工屋さんに依頼する前に
「このはめあいで、本当に大丈夫か?」
と再確認してみてください。
まとめ|「公差」を知れば、図面は設計者との対話になる
公差は「暗記」ではなく
「感触」で捉えてください。
記号の裏にある設計者の意図が
見えてくれば、
現場の仕事はもっとスムーズに、
もっと面白くなります。
- 感触で掴め:
g6は「ヌルッ」、h6は「ピタッ」。 - 推奨を疑え:
公差ミスで使用不能の恐れ。 - 目的を問え:
必要な場所に必要な公差を。
「とりあえずピッタリに」
は、もう卒業。
「あえて隙間(g6)を作る」のか、
「ゼロ(h6)を攻める」のか。
その一文字に込めたあなたの意図が、
現場の信頼を勝ち取る武器になります。
