「君の人間性に問題がある」正論を“言い方”のせいにして握りつぶす社長の正体|第13話

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会議室で社長から「人間性」の鎖で縛られ、膝をついて抑圧されるゆういちのイラスト
「君のため」は、支配の言葉。
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■前回のあらすじ

都合のいい耳と、空虚な約束

退職を申し出た優秀な社員。
その原因は、保身に走る上司二人の
執拗な「吊るし上げ」だった。
窮状を訴える私に対し、
社長は「君の考えすぎだ」と都合のいい
解釈で、現実から目を背け続ける。
実の息子すら守れず腐敗を放置してきた
老いた正義。改善を約束する社長の言葉も、
今は空虚に響くだけだった。

■人間性という名の脅迫

結局、社長は「見たいもの」しか見ず、
「聞きたい言葉」しか信じない。
若手の理不尽な苦しみを可視化したい
一心で、私はアンケートを提案した。

だが、何度も叩き潰されてきた過去が、
私の熱を冷え切らせる。
「また都合よく解釈されて終わる。」

そんな「どうせ変わらない。」という
冷めた確信を抱きながら、
私はまた、無意味かもしれない
「正義」の片棒を担ごうとしている。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

若手社員向けの社内アンケートが
出来たので、確認してもらっても
いいですか?

山田社長
山田社長

あぁ、
その件なんだが……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(はぁ、やっぱり
前回同様中止か……。)

山田社長
山田社長

よく考えたんだが、
若手社員にアンケートを
取ると、それをとった君が
非難される恐れがあるんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

でしょうね。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ただ、そのリスクを含めて
提案しています。

山田社長
山田社長

……それを、
私は望んでいないんだ。

「君のため」という言葉が、
組織の膿を隠すための便利な蓋に使われる。
この瞬間、アンケートは
事実上の「お蔵入り」になった。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

では、どうするんですか?

山田社長
山田社長

経理にいる副社長の奥さんからも
塩川君の問題を聞いている。

山田社長
山田社長

塩川君へは、そちらから
注意してもらうように進めている。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

はぁ、分かりました。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(まぁ、想像通りだな。)

山田社長
山田社長

それでだな。

山田社長
山田社長

君の営業部長の件
なんだが……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

はぁ……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(やっぱり、その話か。)

山田社長
山田社長

石田君に話をしたら、
「君が営業部長になったら
営業社員は全員辞める。」
と言っているんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

あの人ならそう言う
でしょうね。。

山田社長
山田社長

他の管理職にも
聞いてみたんだが、
「反対だ。」
と言っているんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ、そうでしょうね。
今までのほうが、
サボってても
評価されますからね。

山田社長
山田社長

君の人間性にも問題が
あるんじゃないかと思うんだ。

山田社長
山田社長

みんなと仲良くしてほしいんだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

私の人間性が完璧だとは
思いませんが、営業部長の
話を進めてきたのは
そちらですよ。

山田社長
山田社長

うぅ、
それは分かっているんだ。

山田社長
山田社長

だから、私は君が悪いと
言っているわけではないんだ。

山田社長
山田社長

ただ、他の管理職が
納得しない以上、
推すことはできないだろ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

えっ!だから一番最初に
「営業部に居たくないから
製造部に異動したい。」と
言って断ったじゃないですか。

山田社長
山田社長

まぁそうなんだが、副社長が
社長になる条件が
君が営業部長になること
だったから。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そちら側の
身勝手な取引ですよね。
私には一切関係のない話です。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

まぁ、いいですよ。
んじゃ、この話はなしですね。
ただ、若手社員だけはどうにか
助けてあげてください。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(はぁ、思い付きで話するから
周りが振り回されるんだよ。)

山田社長
山田社長

ただ、君が考えたシステムは
採用したい。あれは、
会社を変えるいいものだと思う。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

えっ!無理ですよ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

私が作ったものを
素直に受け入れるわけ
ないじゃないですか。

山田社長
山田社長

森田相談役の指示で
作ったと言えばいい。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(イヤ、無理があるだろ。)

結局、社長が求める「改革」とは、
波風を立てない「無難な調整」
という名の現状維持だった。

 

自分の根回し不足を
「私の人間性」のせいにする。

 

正論に反論できず、
相手の「言い方」を責めて逃げる。
鏡を見るのをやめ、鏡を持つ者を非難する。

 

そんな卑怯な茶番が、
この組織を根本から蝕んでいる。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

どうしてほしいんですか?

山田社長
山田社長

うーん。一度みんなに
謝ってもらえないか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

そう言われて、
私、何回頭を下げている
と思ってるんですか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

結局、頭を下げても
何も変わらなかった
じゃないですか?

山田社長
山田社長

……。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

頭を下げたら下げたで、
「エンジニアリング課の
やっている仕事は、
うちの仕事ではない。」とか

ゆういち(私)
ゆういち(私)

「エンジニアリング課と仕事を
したくないと営業課の人間が
言っている。」などマウントを
とってきたじゃないですか。

山田社長
山田社長

仲良くできないか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

それは、
むこうに言ってください。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

ただ、「馴れ合い」と「仕事」を
混同しているから、組織が
腐敗するのではないですか?

山田社長
山田社長

言いたいことは分かった。
とりあえず、相談役も交えて
どのように進めていくのか、
ご飯でも食べながら、
また相談しよう。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

行かないですよ。

山田社長
山田社長

何か食べたいものはあるか?

ゆういち(私)
ゆういち(私)

(行かないって言いましたよ。
話聞いてますか?)

不満という名のガスを抜くのが目的の会食。
そこに進展などないことを、私は知っている。

結局、社長が求めているのは解決策ではなく、
「俺の言うことを聞くゆういち」
という安心感だけなのだ。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

特にないです。
むしろ勤務時間の中で
打合せしたいです。

山田社長
山田社長

まぁ、そういうな。
時間は追って連絡する。

ゆういち(私)
ゆういち(私)

分かりました。

🔍 その「よくしたい」の真実

  • 正論を言うと「人間性」や
    「言い方」に議論をすり替えられる
  • 改革の条件が「誰かの自己犠牲」
    が前提になっている
  • トップが「みんなと仲良く」
    という言葉を盾に、決断から逃げる

これらに心当たりがあるなら、
組織の「仕組み」ではなく
「依存」が起きているサインです。

第14話は鋭意執筆中!

■背景情報

<会社情報>

<社名>架空金属産業株式会社 社員総数50名
営業部営業課 機械部品販売 営業 8名
営業部エンジニアリング課 機械修理・改造 技術者 5名
営業部営業管理課 営業活動の補佐
社員 5名
営業部総務課 人事・経理兼務 社員 4名
製造部製造1課 機械加工 作業者 10名
製造部製造2課 塗装 作業者 10名

<登場人物>

山田社長
山田社長

創業者
82歳
誰にでもいい顔をしたがる

山田副社長
山田副社長

山田社長の息子
製造部責任者
52歳
新しいものが好き

森田相談役
森田相談役

事なかれ主義
66歳
大手企業の元役員

小林由美
小林由美

入社4年目の経理
24歳
正論を言わなくなった優等生

ゆういち(私)
ゆういち(私)

入社20年
46歳
エンジニアリング課課長
エンジニアリング課の営業