最近、ベアリングユニットが
ロックしやすい気がします。
ベアリングの焼付きか
損傷が原因だと思います。
焼付きって何ですか?
焼付きは、
ベアリングが何かしらの原因で
異常に発熱して、高温になり
ベアリングの内部が溶着して
回転できなくなってしまうこと
です。
また、焼付きによって
ベアリング内部に
かじりや肌荒れ
を起こします。
なるほど・・・
ベアリングが合ってない
のでしょうか?
今まで問題が、
起こってなかったのであれば、
潤滑不良が原因かもしれません。
ほとんど、
潤滑していないと思います。
機械故障の60%以上が潤滑不良
と言われるくらい
潤滑は大事なんです。
潤滑って大事なんですね!
一度、確認してみます。
という、やりとりがありました。
今回は、グリース潤滑について
紹介していきたいと思います。
グリースって何ですか?
やはり、グリースアップを
ほとんどしていませんでした。
調べてみたら、グリースって
たくさん種類があるんですね!
何を選べばいいですか?
まず、
グリースの定義から
説明します。
潤滑グリースは、
原料基油中に増ちょう剤を
分散して半固体状または
固体状にしたもの。特殊な性質を与える他の成分が
含まれる場合もある。引用:日本工業規格
JIS K 2220:2013
と記載されています。
グリースの成分なんて
考えたことなかったです。
基油や増ちょう剤という
言葉を初めて聞きました。
グリースは、
- 基油(ベースオイル)
- 添加剤
- 増ちょう剤
で、出来ています。
グリースは、
80%~90%を占める潤滑油(基油)に
10%~20%の増ちょう剤を分散させて
半固体状に練り上げた潤滑剤を
指します。
また、グリースにも潤滑油同様に
性能を向上させるため、酸化防止剤
さび止め剤・構造安定剤などの
各種添加剤が配合されています。
参考:グリースとは
協同油脂株式会社
グリースは、
潤滑油に増ちょう剤を
混ぜて、ゲル状にしたもの
なんですね。
そうです。
グリースは、ゲル状の為、
流れ落ちることがありません。
潤滑したい箇所に
適量塗っておけば良いので
頻繁に給油をする必要がない!
という、
メリットがあります。
ただし、
油潤滑より冷却能力は低いので
高速回転などでは発熱しやすい!
という、
デメリットがあります。
-
基油・添加剤・増ちょう剤で
できている。 -
基油中に増ちょう剤を混ぜて、
半固体状または固体状に
したもの。 -
流れ落ちることが無いので、
頻繁に給油する必要がない。 -
冷却能力が低いので高速回転
などでは発熱しやすい。
増ちょう剤の役割
結局、
増ちょう剤って何ですか?
増ちょう剤は、基油の中で
網目構造を形成します。
網目構造って何ですか?
分かりやすく言うと
スポンジのような構造になる
という感じです。
その網目に油が入り込み
貯蔵してくれます。
スポンジが油を吸う
感じですね。
そうです。
しかも、油の余分な流失を
防いでくれます。
他には、
どんな役割があるんですか?
増ちょう剤の量で
グリースの硬さを調整します。
ちょう度ですよね。
ちょう度範囲の数字が
大きいほど粘度が低い、
柔らかいグリースになります。
硬さ | ちょう度 番号 |
ちょう度 範囲 |
状態 |
軟 |
000号 | 445~475 | 流動状 |
00号 | 400~430 | 反流動状 | |
0号 | 355~385 | 極めて柔らかい (トマト ケチャップ) |
|
1号 | 310~340 | 柔らかい (マヨネーズ) |
|
2号 | 265~295 | 普通の硬さ | |
3号 | 220~250 | やや硬い (バター) |
|
4号 | 175~205 | 硬い | |
5号 | 130~160 | 非常に硬い | |
6号 | 85~115 | 非常に硬い |
参考:グリースのちょう度
協同油脂株式会社
ベアリングやギアといった
一般的な潤滑には、
2号が多く使用されています。
選定基準は、
何かありますか?
グリースを選定する場合は、
負荷や速度を基準にします。
粘度 | 選定基準 | ||
高粘度 | 高温 | 低速 | 重荷重 |
低粘度 | 低温 | 高速 | 軽荷重 |
高速・重荷重の場合は
どうするんですか?
相反する選定基準の場合は、
申し訳ないですが、
試行錯誤して
適正なグリースを見つける
しか方法がありません。
機械に合った
グリースを探しだすしかない
ということですね。
-
増ちょう剤は、基油の中で
網目構造を作り、油を貯蔵する。 -
増ちょう剤の量で、
グリースの硬さがかわる。 -
一般的な使用では、2号グリースが
一番使用されている。 -
選定基準が、相反する場合には、
試行錯誤しながら探す必要が
ある。
増ちょう剤の種類と特性
増ちょう剤の特性って
何ですか?
増ちょう剤は、大きくわけて
- 石けん系
- 非石けん系
があります。
石けんですか?
グリースとのイメージが
わきません。
石けんと言っても
金属石けん
と言われるものです。
金属石けん?
初めて聞きました。
石けんの種類は、
- 石けん:
高級脂肪酸+アルカリ金属 - 金属石けん:
高級脂肪酸+非アルカリ金属
に、分けることが出来ます。
はぁ・・・・。
違いの認識は、
- 石けんは、水に溶ける
- 金属石けんは、水に溶けない
という程度でいいと思います。
そういうもの
だということですね。
具体的な例を挙げると
リチウムグリースの増ちょう剤が
リチウム石けんです。
もともと、金属石けん系は、
ナトリウムやカルシウム・
アルミニウムなどで
グリースが作られていました。
ただ、各々微妙に性能が違うので
使い分ける必要がありました。
リチウム石けんグリースは、
耐熱性・耐水性・機械的安定性
に優れているので、
他の石けんグリースに変わって
使用されるようになってきました。
日本では石けん系グリースの
50%以上がリチウムグリース
と言われており、
他の石けん系グリースは、
だんだん減ってきています。
増ちょう剤の種類と
特徴を教えてください。
分類 | 増ちょう剤の 種類 |
使用温度 | 耐水性 | 機械的 安定性 |
|
石 |
金 属 石 け ん |
カルシウム 石けん |
-10~70℃ | 良 | 並 |
リチウム 石けん |
-30~120℃ | 良 | 良 | ||
複 合 石 け ん |
アルミニウム 複合石けん |
-40~150℃ | 優 | 優 | |
リチウム 複合石けん |
-30~150℃ | 良 | 優 | ||
非 |
ベントン | -10~150℃ | 良 | 良 | |
ウレア | -40~180℃ | 優 | 優 | ||
PTFE | -40~250℃ | 良 | 良 |
複合石けんは、
耐高温化を目的として
金属石けんに、
有機酸塩や無機酸塩を
配合したものです。
非石けん系は、
石けん系と比べて融点が高いので
高温用として使用されます。
-
増ちょう剤には、金属石けん系と
非石けん系がある。 -
日本の石けん系グリースのシェア
50%以上はリチウムグリース。 -
石けん系グリースにも
金属石けんと複合石けんがある。 -
非石けん系グリースは、
石けん系に比べ融点が高いので、
高温で使用される。
基油の種類と役割
基油には、
どんな種類がありますか?
基油には、
- 鉱油
- 合成油
があります。
グリースのほとんどは、
鉱油が使用されています。
グリースのほとんどは
鉱油なんですね。
鉱油は、合成油より
安く手に入りやすい油で
グリースの基油としての性能を、
ほぼ満足しているからです。
じゃあ、
合成油はどんな時に
使用されるんですか?
合成油は、
低温性・耐熱性・低トルク・
長寿命のような特殊用途に
使用します。
基油には、どんな種類が
あるんですか?
代表的な基油です。
基油 | 耐熱性 | 低温性 | 潤滑性 | 耐ゴム性 | 耐樹脂性 |
鉱油 | 並 | 劣 | 良 | 良 | 良 |
合成 炭化水素油 |
良 | 優 | 良 | 優 | 優 |
エステル油 | 良 | 優 | 優 | 劣 | 劣 |
シリコーン油 | 優 | 優 | 劣 | 優 | 優 |
フッ素系 合成油 |
優 | 優 | 良 | 優 | 優 |
グリースの性能は、
基油の役割が大きいので
基油の性能を知っておくと
良いです。
-
一般的なグリースのほとんどは
鉱油が使用されている。 -
鉱油では対応できない場合に
合成油が使用される。 -
合成油にも種類があり、
目的に応じたものを選ぶ。 -
超低温や高温下の安全性と
長寿命の用途で使用される。
添加剤の種類と役割
モリブデングリースは
何ですか?
グリースも潤滑油と同様に
- 酸化防止剤
- 腐食防止剤
- さび止め剤
- 極圧剤
- 油性向止剤
- 構造安定剤
- 固体潤滑剤
といった添加剤が配合され
性能を向上させています。
固体潤滑剤の一つが
モリブデンです。
モリブデンって
添加剤だったんですね。
そうです。
実は、モリブデン配合
リチウムグリースなんです。
モリブデンの
役割は何ですか?
モリブデンは、
耐摩耗性や耐荷重性能を
上げる為に使用されます。
今回のケースで
試してみるのも
いいかもしれません。
極圧耐性を上げる
固体潤滑剤には、
- モリブデン
- グラファイト
- PTFE
等があります。
-
グリースも潤滑油同様
添加剤が配合されている。 -
極圧耐性を上げるために、
固体潤滑剤が配合されている
ものがある。 -
モリブデンは添加剤。
グリースの管理ポイント
グリース潤滑を行う上で
注意する事はありますか?
グリースは、
冷却能力が低いので
ベアリングの給脂は、
一般的に空間容積の
30~40%と言われています。
ただし、
温度上昇がないような場合は、
異物混入防止のために、
空間容積の70%~100%
でも良いです。
グリースの交換や補給は
どれくらいの頻度で
するのが良いんですか?
基本的に、
機械メーカーの
指示や取説に従って
給脂を行ってください。
集中給脂も
同じちょう度番号
2号でいいですか?
集中給脂は、
ちょう度番号0~1のような
比較的柔らかいもので
行ってください。
集中給脂の注意点は、
違う種類のグリースを入れると
性質が変化するので
注意して下さい。
万能グリースを使っても
焼付や摩耗が多い場合は
どうすればいいですか?
耐熱性・長寿命性に
優れたグリースに変えて下さい。
どんなグリースでも
ゴムや樹脂に使用できますか?
基油の種類によっては、
ゴムや樹脂を劣化させる
原因になるので
確認してから使用して下さい。
-
グリースは、冷却能力が低いので
入れすぎに注意が必要。 -
温度上昇がない場合は、
異物混入防止で、空間容積100%
給脂しても良い。 -
グリースの交換や補給は、
メーカーの指示や取説に従う。 -
集中給脂は、ちょう度番号0~1の
柔らかいものを使用する。 -
万能グリースでダメな時は、
特殊用途グリースを選ぶ。 -
基油の種類によっては、
ゴムや樹脂を劣化させる
ので注意が必要。
まとめ
機械故障の60%以上が
潤滑不良と言われています。
潤滑グリースは、密閉性がよく
異物混入を防ぐなど、
非常に良い点がある一方で
高速回転やグリス過多によって
放熱性や冷却性が悪くなり
発熱するなどの悪い面もあります。
グリースの性質は、配合されている
- 基油の種類
- 増ちょう剤の種類
- 添加剤の種類
によって決まります。
あなたの仕様に合ったグリースを選定する
参考になればうれしいです。
参考:NTN転がり軸受総合カタログ
総合解説11-潤滑
ありがとうございました。