その「Z」一つで、機械の寿命が変わる?

「至急!6002Zの
ベアリングが
欲しいんです!!」
現場から焦った様子で連絡がありました。
ここで「はい分かりました」
と鵜呑みにするのは、実は少し危険です。
なぜなら、型式の末尾にある「Z」や
「ZZ」という記号には、ベアリングの
寿命を左右する「シールの種類」という
重要な意味が隠されているからです。

「それ、ベアリングの
両側に『6002Z』
と書いてないですか?」
と尋ねたところ、

「あ、本当だ!
両側にあります!」
という回答。
やはり「6002ZZ(両側金属シールド)」
が正解でした。
絶対に間違えられない!
「ベアリング型式」の読み解き術
現場の「急ぎ!」でうっかり間違えやすい
末尾記号(Z/ZZ/DDUなど)の意味を
世界一わかりやすく解説します。
ベアリングの基礎知識と役割:なぜ回転機器に欠かせないのか?
重いピラミッドの石を運ぶとき、その下に
「丸太」を敷いて転がした歴史があります。

古代の知恵が凝縮されている、現代のベアリング
ベアリングの原理もこれと同じ。
内部でボールやローラーを転がすことで、
「滑り摩擦」を「転がり摩擦」に変え、
回転を劇的にスムーズにしています。
ベアリングの最大の役割は、
回転運動の「摩擦熱」と「摩耗」を
最小限に防ぐこと。
これによって機械の故障を回避し、
寿命を飛躍的に延ばしているのです。
ベアリングの主な種類(ラジアルとスラスト)
現場で扱うベアリングは、大きく分けて
2つの「荷重(かかる力の方向)」
で使い分けられます。
この向きを間違えると、ベアリングは
一瞬で破損するため注意が必要です。
ラジアルベアリング
軸に対して「垂直(直角)」にかかる
荷重を支える、最も一般的なタイプです。
モーターの回転軸、コンベアのローラー、
車のホイールなど
※ 現場で単に「ベアリング」と言えば、
多くはこのラジアルを指します。
スラストベアリング
軸に対して「平行(横方向)」にかかる、
押し付けるような荷重を支えます。
扇風機の首振り軸、旋盤の主軸受、
ジャッキの回転部など
※ 構造上、横方向の力には強いですが、
垂直方向の荷重には不向きです。

図:【徹底比較】ラジアル荷重とスラスト荷重の違い
今回は、保全現場で最も目にする
「6000番台(ラジアル)」と、
荷重を支えるスペシャリスト
「50000番台(スラスト)」の
型式の読み方について詳しく解説します。
🛠️ベアリング型式の見方:各記号を徹底解説
ベアリングの型式って、
メーカーのカタログで見ようとすると、
情報が多すぎてどこを見ればいいか
迷いませんか?
実は、型式の並びには
決まったルールがあります。
現場でパッと判別できるように、
重要なポイントを凝縮してまとめました。

ラジアルベアリングの型式構成。

スラストベアリングの型式構成。
① 形式番号(ベアリングの種類)
型式の「最初の数字」は、
ベアリングの種類を表しています。
現場でよく使う4つは、形と一緒に
セットで覚えてしまいましょう!
一番メジャー。
高速回転が得意で、
ラジアル荷重を支えます。
軸を押し付ける力
(スラスト荷重)を
支える専用品。
テーパーローラー。
重荷重や、ラジアル・スラスト
両方を支える車輪などに。
軸が少したわんでもOK。
大型機械や製紙機械などで活躍。
※メーカーカタログには他にも多くの
番号がありますが、まずはこの
「2・3・5・6」をマスターすれば
現場での判断スピードが上がります。
② 寸法系列記号
「寸法系列記号」は、ベアリングの
「幅(高さ)」と「外径(大きさ)」の
組み合わせを数字で表したものです。
これ単体でサイズが決まるわけではなく、
形式や内径とセットになって、ベアリングの
「ボリューム感」を決定します。
同じ「内径(軸の太さ)」でも、この番号が違うと…
(一般的な軽荷重用)
(重荷重・高剛性用)
要するに、数字が大きくなるほど
「肉厚で頑丈なベアリング」になっていく、
と覚えておけば現場では十分です!
※設計時にはカタログで「外径」と「幅」の
数値を必ず確認しますが、交換時は
現物の型式(例:6205の「2」の部分)を
そのままなぞるのが鉄則です。
③ 内径番号(シャフト径)
ベアリングの内径(軸を通す穴のサイズ)
を示す番号です。
「03まで」と「04から」で
ルールが変わるのが、現場で
混乱しないための最大のポイントです!
内径番号「04」以降は、
以下の計算式で一発回答!
※04以降は5mm単位で大きくなります。
ちなみに内径200mm(番号40)を
超えるような大型ベアリングでも、
この法則は使えます!
現場で「この軸、何ミリだっけ?」
となった時、ベアリングの刻印を見て
すぐに答えられると、
周りからの信頼度がグッと上がります。
④ シールド・シール記号(保護構造)
内部のグリースを漏らさず、外からの
ゴミを防ぐための「蓋」の役割です。
末尾に何も付かないものは「開放型」
と呼ばれ、定期的な給油が
必要な箇所に使用されます。
| シールの種類 | KOYO | NSK | NTN | NACHI |
|---|---|---|---|---|
| 非接触金属シールド (抵抗が少ない) |
ZZ | ZZ | ZZ | ZZE |
| 非接触ゴムシール (防塵×低トルク) |
2RU | VV | LLB | 2NKE |
| 接触ゴムシール (最強の防塵・防水) |
2RS | DDU | LLU | 2NSE |
ホコリや水気が多い過酷な場所なら、
迷わず「接触ゴムシール(DDUやLLU)」
を選びましょう。
逆に、高速回転させて熱を持たせたくない
場合は、摩擦抵抗の少ない金属シールドや
非接触シールが向いています。
⑤ 内部すきま記号
ベアリングの「すきま」とは、
内輪と外輪の間にあるわずかな
「遊び」のことです。
「普通すきま(CN)」の場合は型式に
表示されませんが、特殊な環境では
この遊びの調整が不可欠になります。
▼ 隙間を小さくする(C1, C2)
- 回転の振れを抑えたい
(高剛性) - 騒音や振動を最小限にしたい
- 主に精密機械や静かな
モーターなどに使用
▲ 隙間を大きくする(C3, C4)
- 温度上昇が激しい場所
(熱膨張対策) - 軸とハウジングの
しまりばめが強い場合 - 乾燥機やボイラー周り
などの高温箇所に使用
ベアリングは運転中に温度が上がると、
中のボールや内輪が熱で膨張します。
最初から「すきま」がないと、膨張したとき
行き場を失ってロックしてしまいます。
だからこそ、熱を持つ場所ではあえて
ガタがあるC3などを使うのが鉄則です!
⑥ 精度記号(公差等級)
ベアリングがどれだけ精密に
作られているかを表す指標です。
日本の現場で使われる
「メートル系ベアリング」は、
すべてJIS規格に基づいています。
数字が小さくなるほど、
精度が「高く」なる!
無表示
(0級)
P6 / P5
(6級/5級)
P4 / P2
(4級/2級)
※一般工業用(モーターやコンベアなど)は、
ほとんどが「無表示(0級)」です。
型式の最後に「P5」や「P4」が付いている
ベアリングは、工作機械の主軸など、
ミクロン単位の振れ精度が求められる
場所に付いています。
「値段の桁が違う」こともあるので、
見積もりや発注時には記号の見落としに
絶対注意しましょう!
出典・参考文献
ベアリングの精度等級、各部公差、および
規格による対応表の解説
(株式会社ジェイテクト)
⑦ 潤滑記号(封入グリース)
ベアリング内部にどのようなグリスが
封入されているかを表す記号です。
使用環境(高温・高速回転・低温など)に
よって最適なグリスが異なるため、
交換時には「現在何が使われているか」を
必ずチェックしましょう。
| グリスの種類 | KOYO | NSK | NTN | NACHI |
|---|---|---|---|---|
| アルバニアグリース2 (最も標準的な万能タイプ) |
A2 | AS2 | /2AS | (AV2) |
| ビーコン325 (低温・高速回転向け) |
B5 | ENS | 3E | BC325 |
| マルテンプSRL (静音・低トルク・長寿命) |
SR | NS7 | /5K | MTSRL |
| マルテンプPS2 (精密・微小回転向け) |
ー | PS2 | /1K | PS2 |
指定されている場所に、特殊な高速用
グリスを混ぜて使うのは絶対にNGです。
「基油(オイル)」や「増ちょう剤
(石けん成分など)」の相性が悪いと、
グリスが液状化して流れ出し、最悪の場合、
軸受の焼き付きを引き起こします。
「形が同じだから」と油断せず、
型式の末尾にあるグリス記号まで
しっかり確認して手配しましょう。
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まとめ|正しい知識で「最短・安全」な現場復旧を!
「ただの数字の羅列」
に見えるベアリングの型式。
しかし、その一文字一文字には、
荷重・サイズ・寿命・精度という、
機械を安定して動かすための
極めて重要な情報が刻まれています。
- 末尾の「保護構造」を必ず確認:
Z・ZZ(金属)とDDU・LLU(ゴム)
は、防塵・防水性能が全く違います。
現場の環境に合わせて
正しく選びましょう。 - 内径番号の「×5」をマスター:
04以降なら、番号に5を掛ければ
軸径(φ)が分かります。
例外の00〜03(10, 12, 15, 17mm)
は暗記が鉄則です。 - 「隙間」と「精度」の見落とし厳禁:
熱を持つ場所ならC3、工作機械なら
高精度(P5等)など、特殊記号が
ついている場合は代用品選びに
細心の注意を。 - 公式情報の参照:
確実な選定のため、実際の交換時は
JTEKT(KOYO)やNSK等の
メーカー最新カタログ
を必ず併せてご確認ください。
設備が止まった緊急時こそ、焦って
「似ているもの」を付けるのではなく、
型式が持つ正確な意味を
読み解いてみてください。
その「正しい一文字」の選択が、機械の
長寿命化と現場の安心に直結します。
止まらない現場と安心のモノづくりを。

今は『古い会社を中から変える』
という挑戦の真っ最中です。
そのリアルなドタバタ劇を
物語にしてみました。
もしよかったら、
第1話だけでも覗いてみてください。
📖 【第1話】密室の甘い毒
ありがとうございました。