![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
ベアリングの材質を
ステンレスに変えたら、
すぐに破損しました。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
ベアリングメーカーに
原因の確認できますか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
別にいいですけど。
材質教えて下さい。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304です。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
もともと使っていた材質は
何ですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
材質は分かりませんが、
一般的なベアリングです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
それは、すぐ壊れますよ。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
えっ?何でですか?
原因分かるんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
材質の引張強度など
機械的性質が違いすぎます。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
えっ?
そうなんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
何の目的でSUS304に
変えたんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
耐食性を少しでも
上げたかったんです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
それなら、SUS440Cに
変えたほうが良いですよ。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS440Cですね。
一度確認してみます。
というやりとりがありました。
今回は、
ステンレスベアリングについて
簡単に分かりやすく
紹介していきます。
SUS304とSUJ2の機械的性質の違い
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304ベアリングと
一般的なベアリングの
違いを教えて下さい。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
まずは、
材質から紹介します。
一般的なベアリングの材質は、
高炭素クロム軸受鋼『SUJ2』で
できています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUJ2に焼入れ・焼き戻し
という処理を施すことで
強く丈夫なベアリングが
出来ます。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304とSUJ2では
どのくらい機械的性質が
違うんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS304とSUJ2では、
引張強さで、
おおよそ2~3倍違います。
材料と機械的性質の違い | |||
単位 | SUS304 | SUJ2 | |
引張強さ | N/mm2 | 520~600 | 1680 |
弾性率 | N/mm2 | 193000 | 212000 |
硬さ | HV | 170 | 740 |
HRC | 3.0 | 61.8 |
参照:株式会社南海精工所-6Sシリーズ/SUS304ステンレスベアリング
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
えっ!
こんなに違うんですか!
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
そうなんです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
弾性率って何ですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
弾性率は、数字が大きいほど
変形しにくい材質であることを
表しています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304の機械的性質は、
SUJ2に比べて、
かなり弱いんですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS304ベアリングの
資料にも
『軽荷重・低回転用』
と、使用上の注意事項に
記載されています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
本当ですね。
『SUJ2と同様の荷重や
中・高回転域での使用に
適していない。』
とも、書かれていますね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUJ2ベアリングと同様の荷重で
SUS304ベアリングは、
使用はできないんです。
-
一般的なベアリングは、
高炭素クロム軸受鋼『SUJ2』で
できている。 -
SUS304ベアリングと
SUJ2ベアリングでは、
引張強さが、約2~3倍違う。 -
SUS304ベアリングの
資料に『軽荷重・低回転用』と
記載されている。 -
SUJ2ベアリングと
SUS304ベアリングは、
同じ荷重での使用はできない。
SUS304ベアリングの熱膨張率
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304ベアリングを
使ってみて気になったのが、
はめあいがスカスカ
だったんです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
ベアリングの型式は
何ですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
確か、6800ZZ
だったと思います。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
たしか、
SUJ2ベアリング・6800ZZの
通常用途の軸受け精度は0級で
公差は、0~-8μmだったと
思います。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
0~-8μmということは、
Φ10mmの径に対して
0~-0.008mmが
寸法公差と言うことですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS304ベアリングの
資料を確認してみると
内径Φ10mmに対して、
寸法公差は0~+0.05mmと
記載されています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
0~-0.008mmと
0~+0.05mmでは
公差が全然違う
じゃないですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
そうなんです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
寸法公差が大きい理由は
あるんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
多分、熱膨張が
理由だと思います。
ベアリングは、回転すると
回転抵抗に対する摩擦が
熱に変換され温度が上昇します。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
温度が上がると
何か問題あるんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
熱が発生すると
素材が熱膨張をおこし
内部すきまが変化し
すきまが小さくなるんです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
熱膨張が大きい素材は、
寸法公差を大きく
設けています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
ということは、
SUS304の方がSUJ2より
熱膨張率が大きいんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
その通りです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS304の方が、約1.4倍
熱膨張率が大きいです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
だから、
SUS304ベアリングの公差は
大きくなっているんですね。
-
SUJ2ベアリング・6800ZZの
通常用途の軸受け精度は0級で
公差は、0~-8μm。 -
ベアリングを、回転させると
回転抵抗に対する摩擦が熱に
変換され温度が上昇する。 -
熱が発生すると素材が
熱膨張をおこし内部すきまが
変化し、すきまが小さくなる。 -
SUS304は、SUJ2に比べて
約1.4倍熱膨張率が大きい。
SUS440Cステンレスベアリングの特徴
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
それでは、ベアリングの
耐食性を上げつつ
強度も欲しい場合は、
どうすればいいですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
そういう場合は、
SUS304より耐食性は劣りますが
SUS440Cのベアリングを
選定すると良いです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS440Cって何ですか?
SUS304とは
何が違うんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS440Cは、
マルテンサイト系ステンレスで
熱処理が出来るステンレスです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
熱処理を施すことで
硬く強いステンレスに
なるんですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
一方、SUS304は、
オーステナイト系ステンレス
とも呼ばれ、耐食性が高い
ステンレスなんですが、
熱処理が出来ないステンレスです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
マルテンサイト系と
オーステナイト系の
ステンレスについて
教えて下さい。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
関連記事を貼付けておくので
参考にしてください。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304とSUS440Cの
機械的性質はどうですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS304とSUS440Cと
SUJ2で比較してみましょう。
材料と機械的性質の違い | ||||
単位 | SUS304 | SUS440C | SUJ2 | |
引張強さ | N/mm2 | 520~600 | 1900~2000 | 1680 |
弾性率 | N/mm2 | 193000 | 203000 | 212000 |
硬さ | HV | 170 | 700 | 740 |
HRC | 3.0 | 60.1 | 61.8 |
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
となっています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS440CとSUJ2の
機械的性質に大きな差は
ないですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
しかも、
SUS440Cは、SUJ2より
高温環境下での使用が可能です。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
熱膨張率も小さい
という事ですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
熱膨張率も小さく
耐熱温度も高いんです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUJ2からステンレスに
置き換えるならSUS440C
のベアリングですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
そうなんです。
ただし、
SUS440Cでも使用条件によっては
腐食するので注意して下さい。
-
ベアリングの耐食性を上げつつ
強度も欲しい場合は、
SUS304より耐食性は劣るが
SUS440Cのベアリングを選ぶ。 -
SUS440Cは、
マルテンサイト系と言われる
熱処理が出来るステンレス。 -
SUS304は、
オーステナイト系と言われる、
耐食性が高いステンレス。
ただし、熱処理は出来ない。 -
SUS440Cは、SUJ2との
機械的性質に大きな差はなく
高温環境下での使用が可能。 -
SUS440Cでも使用条件によっては
腐食するので注意が必要。
作業環境に合わせたベアリング
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS440Cより
耐食性を上げたい場合は
どうすればいいですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
その場合は、
SUS630ベアリング
を選びます。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS630ってどんな
ステンレス何ですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS630は、
析出硬化系ステンレスで
銅を添加して析出硬化を
持たせています。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
析出硬化って何ですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
硬度を上げる
熱処理の1種だと
思ってもらえばいいです。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
機械的性質はどうですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS630の
機械的性質は、
材料と機械的性質の違い | ||||
単位 | SUS630 | SUS304 | SUS440C | |
引張強さ | N/mm2 | 約1379 | 520~600 | 1900~2000 |
弾性率 | N/mm2 | 196000 | 193000 | 203000 |
硬さ | HV | 434 | 170 | 700 |
HRC | 44.0 | 3.0 | 60.1 |
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
となります。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS304とSUS440Cの
中間の性質といった
感じですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
SUS630は、
SUS440Cより耐食性は高く
SUS304より大きい荷重・
早い回転での使用が可能です。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
SUS440Cより耐食性が
高いんですね。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
ただし、
SUJ2やSUS440Cと
同等の荷重・高回転での使用は
できないので注意して下さい。
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/yuji2.jpg)
セラミックやチタンベアリング
はどうなんですか?
![](https://60you1.com/wp-content/uploads/2020/08/you1-2.jpg)
両方とも機械的性質は、
高くないです。
非磁性環境やオーステナイト系よりも
過酷な腐食環境で使用します。
-
SUS440Cより耐食性を
上げたい場合は、
SUS630ベアリングを選ぶ。 -
SUS630は、
析出硬化系ステンレスで
銅を添加して析出硬化を
持たせている。 -
SUS630は、
SUS440Cより耐食性は高く
SUS304より大きい荷重・
早い回転での使用が可能。 -
SUS630は、SUJ2やSUS440Cと
同等の荷重・高回転での使用は
できないので注意が必要。 -
セラミックや
チタンベアリングは、
機械的性質は高くないが、
非磁性環境や
オーステナイト系よりも
過酷な腐食環境での使用が可能。
まとめ
一般環境で使用するには
高炭素クロム軸受鋼 SUJ2を
使用しますが、
真空やクリーンな環境であったり
高温環境・腐食環境には
適していません。
とはいえ、
安易に腐食に強いからと言って
高速回転・高速負荷用途で
SUS304ステンレスベアリングに
置き換えても、SUJ2ベアリングと
同じ性能は発揮できません。
SUS430CやSUS630といった
使用用途に合った、材質の
ベアリングを選ぶ必要があります。
引張強さ・熱膨張率・硬さなど
選定するときの参考にして下さい。
ありがとうございました。
![]() |
南海精工所 SMT ステンレスボールベアリング シールドタイプ 内輪径10×外径19mm SS6800ZZ 【332-2131】
|