ステンレスベアリングが破損した理由!SUJ2とSUS304との違い

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代替

ベアリングの材質を
ステンレスに変えたら、

すぐに破損しました。

ベアリングメーカーに
原因の確認できますか?

別にいいですけど。

材質教えて下さい。

SUS304です。

もともと使っていた材質は
何ですか?

材質は分かりませんが、

一般的なベアリングです。

それは、すぐ壊れますよ。

えっ?何でですか?

原因分かるんですか?

材質の引張強度など
機械的性質が違いすぎます。

えっ?

そうなんですか?

何の目的でSUS304に

変えたんですか?

耐食性を少しでも
上げたかったんです。

それなら、SUS440Cに
変えたほうが良いですよ。

SUS440Cですね。

一度確認してみます。

というやりとりがありました。

テーマ

今回は、
ステンレスベアリングについて
簡単に分かりやすく
紹介していきます。

 
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SUS304とSUJ2の機械的性質の違い

SUS304ベアリングと

一般的なベアリングの

違いを教えて下さい。

まずは、
材質から紹介します。

Point

一般的なベアリングの材質は、
高炭素クロム軸受鋼『SUJ2』で
できています。

 

SUJ2に焼入れ・焼き戻し
という処理を施すことで

強く丈夫なベアリングが
出来ます。

SUS304とSUJ2では

どのくらい機械的性質が

違うんですか?

SUS304とSUJ2では、

引張強さで、

おおよそ2~3倍違います。

材料と機械的性質の違い
  単位 SUS304 SUJ2
引張強さ N/mm2 520~600 1680
弾性率 N/mm2 193000 212000
硬さ HV 170 740
HRC 3.0 61.8

参照:株式会社南海精工所-6Sシリーズ/SUS304ステンレスベアリング

えっ!
こんなに違うんですか!

そうなんです。

弾性率って何ですか?

弾性率は、数字が大きいほど

変形しにくい材質であることを

表しています。

SUS304の機械的性質は、
SUJ2に比べて、
かなり弱いんですね。

SUS304ベアリングの
資料にも

Point

『軽荷重・低回転用』
と、使用上の注意事項に
記載されています。

 

本当ですね。
『SUJ2と同様の荷重や

中・高回転域での使用に

適していない。』
とも、書かれていますね。

SUJ2ベアリングと同様の荷重で
SUS304ベアリングは、

使用はできないんです。

SUS304とSUJ2の機械的性質
  • 一般的なベアリングは、
    高炭素クロム軸受鋼『SUJ2』で
    できている。

  • SUS304ベアリングと
    SUJ2ベアリングでは、
    引張強さが、約2~3倍違う。

  • SUS304ベアリングの
    資料に『軽荷重・低回転用』と
    記載されている。

  • SUJ2ベアリングと
    SUS304ベアリングは、
    同じ荷重での使用はできない。

 
 

SUS304ベアリングの熱膨張率

SUS304ベアリングを
使ってみて気になったのが、

はめあいがスカスカ
だったんです。

ベアリングの型式は
何ですか?

確か、6800ZZ
だったと思います。

たしか、

Point

SUJ2ベアリング・6800ZZの
通常用途の軸受け精度は0級で
公差は、0~-8μmだったと
思います。

 

0~-8μmということは、

Φ10mmの径に対して

0~-0.008mmが
寸法公差と言うことですね。

SUS304ベアリングの
資料を確認してみると

Point

内径Φ10mmに対して、
寸法公差は0~+0.05mmと
記載されています。

 

0~-0.008mmと
0~+0.05mmでは
公差が全然違う
じゃないですか?

そうなんです。

寸法公差が大きい理由は
あるんですか?

多分、熱膨張が
理由だと思います。

 
Point

ベアリングは、回転すると
回転抵抗に対する摩擦が
熱に変換され温度が上昇します。

 

温度が上がると

何か問題あるんですか?

熱が発生すると

Point

素材が熱膨張をおこし
内部すきまが変化し
すきまが小さくなるんです。

 

熱膨張が大きい素材は、

寸法公差を大きく
設けています。

ということは、

SUS304の方がSUJ2より

熱膨張率が大きいんですか?

その通りです。

SUS304の方が、約1.4倍
熱膨張率が大きいです。

だから、
SUS304ベアリングの公差は
大きくなっているんですね。

SUS304ベアリングの熱膨張率
  • SUJ2ベアリング・6800ZZの
    通常用途の軸受け精度は0級で
    公差は、0~-8μm。

  • ベアリングを、回転させると
    回転抵抗に対する摩擦が熱に
    変換され温度が上昇する。

  • 熱が発生すると素材が
    熱膨張をおこし内部すきまが
    変化し、すきまが小さくなる。

  • SUS304は、SUJ2に比べて
    約1.4倍熱膨張率が大きい。

 
 

SUS440Cステンレスベアリングの特徴

それでは、ベアリングの
耐食性を上げつつ

強度も欲しい場合は、
どうすればいいですか?

そういう場合は、

Point

SUS304より耐食性は劣りますが
SUS440Cのベアリングを
選定すると良いです。

 

SUS440Cって何ですか?

SUS304とは
何が違うんですか?

SUS440Cは、

Point

マルテンサイト系ステンレスで
熱処理が出来るステンレスです。

 

熱処理を施すことで

硬く強いステンレスに
なるんですね。

一方、SUS304は、

Point

オーステナイト系ステンレス
とも呼ばれ、耐食性が高い
ステンレスなんですが、
熱処理が出来ないステンレスです。

 

マルテンサイト系と
オーステナイト系の
ステンレスについて

教えて下さい。

関連記事を貼付けておくので

参考にしてください。

 

SUS304とSUS440Cの

機械的性質はどうですか?

SUS304とSUS440Cと

SUJ2で比較してみましょう。

材料と機械的性質の違い
  単位 SUS304 SUS440C SUJ2
引張強さ N/mm2 520~600 1900~2000 1680
弾性率 N/mm2 193000 203000 212000
硬さ HV 170 700 740
HRC 3.0 60.1 61.8

となっています。

SUS440CとSUJ2の
機械的性質に大きな差は

ないですね。

しかも、

Point

SUS440Cは、SUJ2より
高温環境下での使用が可能です。

 

熱膨張率も小さい
という事ですか?

熱膨張率も小さく

耐熱温度も高いんです。

SUJ2からステンレスに
置き換えるならSUS440C

のベアリングですね。

そうなんです。

Point

ただし、
SUS440Cでも使用条件によっては
腐食するので注意して下さい。

 
SUS440Cステンレスベアリングの特徴
  • ベアリングの耐食性を上げつつ
    強度も欲しい場合は、
    SUS304より耐食性は劣るが
    SUS440Cのベアリングを選ぶ。

  • SUS440Cは、
    マルテンサイト系と言われる
    熱処理が出来るステンレス。

  • SUS304は、
    オーステナイト系と言われる、
    耐食性が高いステンレス。
    ただし、熱処理は出来ない。

  • SUS440Cは、SUJ2との
    機械的性質に大きな差はなく
    高温環境下での使用が可能。

  • SUS440Cでも使用条件によっては
    腐食するので注意が必要。

 

作業環境に合わせたベアリング

SUS440Cより
耐食性を上げたい場合は
どうすればいいですか?

その場合は、
SUS630ベアリング
を選びます。

 

SUS630ってどんな
ステンレス何ですか?

SUS630は、

Point

析出硬化系ステンレスで
銅を添加して析出硬化を
持たせています。

 

析出硬化って何ですか?

硬度を上げる
熱処理の1種だと
思ってもらえばいいです。

機械的性質はどうですか?

SUS630の
機械的性質は、

材料と機械的性質の違い
  単位 SUS630 SUS304 SUS440C
引張強さ N/mm2 約1379 520~600 1900~2000
弾性率 N/mm2 196000 193000 203000
硬さ HV 434 170 700
HRC 44.0 3.0 60.1

となります。

SUS304とSUS440Cの

中間の性質といった
感じですね。

SUS630は、

Point

SUS440Cより耐食性は高く
SUS304より大きい荷重・
早い回転での使用が可能です。

 

SUS440Cより耐食性が
高いんですね。

ただし、

Point

SUJ2やSUS440Cと
同等の荷重・高回転での使用は
できないので注意して下さい。

 

セラミックやチタンベアリング

はどうなんですか?

両方とも機械的性質は、
高くないです。

Point

非磁性環境やオーステナイト系よりも
過酷な腐食環境で使用します。

 
作業環境に合わせたベアリング
  • SUS440Cより耐食性を
    上げたい場合は、
    SUS630ベアリングを選ぶ。

  • SUS630は、
    析出硬化系ステンレスで
    銅を添加して析出硬化を
    持たせている。

  • SUS630は、
    SUS440Cより耐食性は高く
    SUS304より大きい荷重・
    早い回転での使用が可能。

  • SUS630は、SUJ2やSUS440Cと
    同等の荷重・高回転での使用は
    できないので注意が必要。

  • セラミックや
    チタンベアリングは、
    機械的性質は高くないが、
    非磁性環境や
    オーステナイト系よりも
    過酷な腐食環境での使用が可能。

 
 

まとめ

一般環境で使用するには
高炭素クロム軸受鋼 SUJ2を
使用しますが、
真空やクリーンな環境であったり
高温環境・腐食環境には
適していません。

とはいえ、
安易に腐食に強いからと言って
高速回転・高速負荷用途で
SUS304ステンレスベアリングに
置き換えても、SUJ2ベアリングと
同じ性能は発揮できません。

SUS430CやSUS630といった
使用用途に合った、材質の
ベアリングを選ぶ必要があります。

引張強さ・熱膨張率・硬さなど
選定するときの参考にして下さい。

ありがとうございました。

南海精工所 SMT ステンレスボールベアリング シールドタイプ 内輪径10×外径19mm SS6800ZZ 【332-2131】