すみません。
『増圧弁』が急に
必要になったんですが、
すぐ手に入りますか?
大丈夫ですよ。
修理したものが
会社にいくつか
あったと思います。
よかった~。
どうかしたんですか?
設備のエア圧力が
低下してしまって、
困ってるんです。
というか、増圧弁って
修理できるんですね。
知りませんでした。
できますよ。
ところで、
『エアタンク』は
必要ですか?
たしか、会社に
余っているエアタンクが
あったと思うので、
それを使用します。
分かりました。
では、増圧弁を
すぐに用意しますね。
助かります。
という、やりとりがありました。
今回は、『増圧器』について
簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。
増圧弁と増圧器
そもそも、『増圧弁』
ってなんですか?
私の分かる範囲での
説明になりますが
大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
まず『増圧弁』は、
SMC(株)さんの
商品名で、JIS規格では
6410 増圧器
一次側作動流体の入口圧力を、
より高い二次側作動流体の出口
圧力に変換するための機器。
引用:JIS B 0142:2011
油圧・空気圧システム及び機器−用語
とか、
1405 ブースタ
増圧を目的として設置する
送風機・圧縮機。
引用:JIS B 0132:2005
送風機・圧縮機用語
と定義されています。
つまり、入口側から
吸い込んだエアより
高い圧力のエアを
出口側から吐出させる
装置を『増圧器』
って言うんですね。
そうです。
ただ、なぜ増圧器が
必要になるんですか?
コンプレッサーの
吐出圧力を上げれば
よくないですか?
実は、そう簡単には
いかないんですよ。
どういうことですか?
まず、
一般的な製造・加工業の
消費電力は、約20~25%が
コンプレッサーと言われています。
えっ!
コンプレッサーって
そんなに電力を消費して
いるんですか!
ちなみに、一般的な
コンプレッサーの
吐出圧力って
どのくらいなんですか?
だいたい、
一般的なコンプレッサーが、
圧縮できる最高の圧力は、
0.7~0.9MPaと言われています。
中には1.0MPa以上まで
圧縮できる『中圧』タイプの
コンプレッサーもあります。
コンプレッサー選定のポイント
参考:株式会社 日立産機システム
では、一般的な工場の
エア圧力って
どれくらいの
圧力なんですか?
だいたい、
工場で使用する必要圧力は
0.45~0.5MPaと言われており、
0.6MPaでの使用が多いです。
そうなんですね。
ただ、
省エネルギー対策の
一環として
コンプレッサーの吐出圧力を
0.6MPaより下げて、省エネ・
節電対策をおこなっている
工場が多くあります。
どれくらい省エネに
なるんですか?
コンプレッサーの
種類や年式にも
よりますが、
吐出圧力を0.1MPa下げるごとに、
約7~8%の電気代を削減することが
できると言われています。
結構な省エネに
なるんですね。
そうなんです。
でもそうすると、
エアの圧力不足で
作動不良の原因に
なりませんか?
そうなんです。
なので、
強い力が必要な工程やタクトタイムの
短縮など高い圧力が必要なエア機器や
末端機器の圧力不足といった
部分的な増圧のために
増圧器を使用します。
なるほど。
部分的なエアの
圧力不足を解消するために
増圧器を使用するんですね。
-
入口側から吸い込んだエアより
高い圧力のエアを出口側から吐出
させる装置を『増圧器』と言う。 -
一般的な製造・加工業の
消費電力は、約20~25%が
コンプレッサー。 -
コンプレッサーの吐出圧力を
0.1MPa下げるごとに、
約7~8%の電気代を削減する
と言われている。 -
コンプレッサーの吐出圧力を
下げて、省エネ・節電対策を
おこなっている工場も多い。 -
強い力が必要な工程や機器・
末端機器の圧力不足など
部分的な増圧のために
増圧器を使用する。
増圧器の種類
先ほど、
「増圧弁は商品名」
と言っていましたが、
他にもあるんですか?
まず増圧器には、
電源が不要な
『エア駆動タイプ』と
電源が必要な
『電気駆動タイプ』があります。
増圧器の駆動って
2種類あるんですね。
そうなんです。
まず、
エア駆動タイプには
メーカー名 | 商品名 |
SMC株式会社 | 増圧弁 |
CKD株式会社 | エアブースタ |
甲南電機株式会社 | エアブースター |
株式会社フクハラ | パワーマックス |
などがあり
電気駆動タイプには、
メーカー名 | 商品名 |
日立産機システム株式会社 | ブースタベビコン |
アネスト岩田株式会社 | ブースタコンプレッサ |
株式会社明治機械製作所 | ブースタコンプレッサ |
などがあります。
何が違うんですか?
エア駆動タイプは、
電源が必要なく、エア配管を
つなぐだけで吸入した圧縮空気を
より高い圧力に増圧して吐出します。
次に
電気駆動タイプは、
電気で駆動し、吸入した圧縮空気を
より高い圧力に増圧して吐出します。
エアで動くか
電気で動くかですね。
増圧器と言っても
増圧弁以外にも
色んな種類がある事が
分かって良かったです。
-
増圧器には、電源が不要な
『エア駆動タイプ』と電源が
必要な『電気駆動タイプ』がある。 -
エア駆動タイプ増圧器の
メーカーには、SMC(株)・
CKD(株)・甲南電機(株)・
(株)フクハラなどがある。 -
電気駆動タイプ増圧器の
メーカーには、
日立産機システム(株)・
アネスト岩田(株)・
(株)明治機械製作所などがある。 -
エア駆動タイプは、エア配管を
つなぐだけで吸入した圧縮空気を
増圧して吐出する。 -
電気駆動タイプは電気で駆動し、
吸入した圧縮空気を
増圧して吐出する。
増圧器の構造
増圧器にエア駆動式と
電気駆動式があることは
分かりましたが、
どうやって増圧させて
いるんですか?
では、エア駆動式の
増圧器の構造を
紹介していきますね。
お願いします。
エア駆動式で有名な
SMCさんの増圧弁は、
WEBカタログで
この様に紹介されています。
作動原理
参考:増圧弁 VBA series
SMC株式会社
どういうことですか?
かんたんにまとめると、
まず増圧弁に入った工場エアは、
増圧室と駆動室に流入します。
工場エアが増圧用と
駆動用に分かれて
それぞれの部屋に
入るんですね。
そして、
駆動室に入った工場エアが
駆動源としてピストンを動かし、
増圧室に入ったエアを圧縮して
吐出します。
この動作を繰り返し
行うことで、増圧された
エアを作り出すことが
できます。
出典:省エア増圧弁VBAシリーズ–
SMC株式会社
なるほど。だから
駆動源もエアなので
電気を使わず増圧
できるんですね。
エア配管の途中に
つなぐだけなので
楽ですね。
そうなんです。
では、
なぜ電気駆動式が
あるんですか?
実は、
エア駆動式には欠点があり
ピストンを動かすために使う
駆動エアは排気されてしまうので、
工場エアにロスが発生するんです。
なるほど。
省エネのために
コンプレッサーの
圧力を下げたのに、
増圧弁を動かすために
工場エアの使用量が
増加してしまうんですね。
そうなんです。
駆動にも工場エアを使うので
大元のコンプレッサーの
省エネ効果を弱めることに
なってしまうんです。
なるほど。
そして、
その欠点を補ったものが
駆動源が電気の
『ブースターベビコン』や
『ブースターコンプレッサー』
などになります。
出典:アネスト岩田オイルフリー
ブースタコンプレッサ–
アネスト岩田株式会社
エアエナジー事業部
ピストンの駆動が
エアから電気に
なったものが
電気駆動式なんですね。
そうです。
電気駆動式は、
圧縮空気を無駄に使用することなく
増圧できるというメリットがあります。
電気駆動式の方が
省エネなんですね。
ただ電気駆動式は、
エア駆動式に比べ省エネで
低騒音ですが、製品コストは
エア駆動式と比べると割高です。
費用対効果など
よく考えてから
選定しないとダメですね。
そうなんです。
エア駆動式も設置が簡単で低発熱・
電気を使用しないので危険区域でも
使用が可能といったメリットがあるので
選定の際はよく検討して下さい。
-
増圧弁は、駆動室に入った
工場エアがピストンを動かし、
増圧室に入ったエアの圧縮→吐出
を繰り返しおこなう。 -
エア駆動式は、ピストンを
動かすための駆動エアを
排気するので、
工場エアにロスが発生する。 -
電気駆動式は、駆動源が
電気なので圧縮空気を無駄に
使用することなく増圧できる。 -
電気駆動式は、エア駆動式に
比べ、省エネで低騒音ですが
製品コストはエア駆動式
と比べると割高。 -
エア駆動式も設置が簡単で
低発熱・危険区域でも使用が
可能といったメリットがある。
エアタンクの役割
エア駆動式と
電気駆動式の違いは
分かりました。
ただ、あと一つだけ
気になっていることが
あるんですが、いいですか?
なんですか?
増圧弁やブースター
コンプレッサーなどに
ついている、エアタンクって
なんのためにあるんですか?
あー、
エアタンクですね。
増圧器についているエアタンクは、
増圧したエアを蓄えて
おくためにあります。
エアを蓄えておくと
なにがいいんですか?
エアを蓄えておくことで、
瞬間的に多量の増圧したエアを
使った時に起こる圧力低下を
防止してくれます。
消費量が供給量を
超えてしまうと
エア機器が動作しなく
なりますもんね。
そうです。
しかも、
エアタンクがないと連続して
増圧し続けないといけないので、
故障しやすくなってしまいます。
増圧器を保護する
役割もあるんですね。
他には、
吐出されたエアの脈動を防ぎ、
安定した供給を行うことができます。
『脈動』って
なんですか?
脈動とは文字通り、
脈を打つように動くことで、
流量や流速が不安定になり、
エア機器の動作不良の
原因になります。
エアタンクは、
増圧したエアを
安定して供給するために
必要なものなんですね。
そうなんです。
しかも、
増圧されたエアをタンクの中に
蓄えておくと、外気で冷却され
ドレンが分離されます。
いろいろな役割が
エアタンクには
あるんですね。
-
増圧器についている
エアタンクは、増圧したエアを
蓄えておくためにある。 -
エアを蓄えておくことで、
瞬間的に多量の増圧したエアを
使った時に起こる圧力低下を
防止してくれる。 -
エアタンクがないと連続して
増圧し続けないといけないので、
故障しやすくなる。 -
吐出されたエアの脈動を防ぎ、
安定した供給ができる。 -
脈動とは、脈を打つように
動くことで、流量や流速が
不安定になり、エア機器の
動作不良の原因になる。 -
増圧されたエアをタンクの中に
蓄えておくと、外気で冷却され
ドレンが分離される。
まとめ
工場全体における消費電力の20~25%は、
コンプレッサーだと言われています。
そのため、メインコンプレッサーの
供給圧力を下げて、省エネや節電対策を
おこなう工場が増えていますが、
圧力を下げたことで圧力不足となり、
生産に支障をきたす可能性もあります。
そんな時に、増圧器を使って
供給圧力を最適化します。
ただ増圧器にも種類があるので
選定の際は、良く調べて
必要に応じた機種を選定して下さい。
ありがとうございました。