搬送トレイに
再アルマイトを
かけたんですが、
何か、おかしいんです。
何がおかしいんですか?
自動機で送り出すんですが、
滑りが悪くなったんです。
どんなトレイですか?
40mm×40mmの
小さいトレイなんです。
再処理する前と
再処理後のトレイが
あれば見せて下さい。
ちょうど、手元にあります。
確認お願いします。
トレイの底面に
ついていた加工目が
再アルマイト後に
消えてますね。
本当ですね。
これが悪さしているかも
しれません。
底面を、少し荒らして
みてはいかがですか?
そうですね。
ダメもとで試してみます。
・・・確認中。
底面を荒らしてみたら、
滑りが少し良くなりました。
再アルマイトを行うと
表面粗さや寸法が
変わりますからね。
そうなんですか?
脱膜の工程で
素材が痩せて変化します。
今後トレイは、
新しく作るしかない
ということですか?
もしくは、
再アルマイトを見越して
底面を荒らす加工が
必要かもしれませんね。
アルマイトについて
教えてもらっていいですか?
というやりとりがありました。
今回は、アルマイトについて
簡単に分かりやすく
紹介していきたいと思います。
アルマイトとは?
アルマイトって何ですか?
もともと、アルマイトは、
しゅう酸による、
しゅう酸法陽極酸化皮膜が
理化学研究所さんによって
『アルマイト』と命名され
商標登録されたのが最初です。
アルマイトって、
商標登録されてたんですね。
現在は、安価で工業生産しやすい
硫酸による処理が一般的となり、
現在は、アルミニウムの
陽極酸化処理の総称として
アルマイトが使われています。
陽極酸化処理って
何ですか?
陽極酸化処理とは、
しゅう酸・硫酸・クロム酸といった
電解質を使って、電気化学的に
酸化皮膜を作ること
を言います。
しゅう酸と硫酸は
どっちが良いんですか?
しゅう酸アルマイトの方が、
硬く、摺動性も高く
耐食性も良いようです。
じゃあ、
しゅう酸アルマイトじゃなく
なぜ、硫酸アルマイトの方が
一般的なんですか?
それは、
しゅう酸アルマイトは
加工難度やコストが高いので
加工出来るメーカーさんが
全国で数社しかありません。
コストも加工難度も高いので
割に合わないのかも
しれませんね。
そうかもしれません。
あれ?
アルミってもともと
耐食性が良い金属じゃ
なかったでしたっけ?
言われる通りで、
もともと、アルミニウムは、
耐食性のよい金属です。
確かに汚いアルミを
見たことが無いです。
それは、アルミニウムが
酸素と結びつきやすい金属で
空気に触れるとすぐに
薄い酸化皮膜を作る
からです。
じゃあ、アルマイトって
いらなくないですか?
アルミニウムの
自然に発生する
薄く弱い酸化皮膜では、
環境によって腐食します。
アルマイトをかけると
厚く強固な酸化皮膜が
形成されるので、
素材表面の耐食性が向上し
腐食から守ってくれます。
アルマイトをかけると
格段に耐食性が
向上するんですね。
-
もともと、アルマイトとは
しゅう酸法陽極酸化皮膜の
商標登録された名称。 -
現在、アルマイトは、
アルミニウムの陽極酸化処理の
総称として呼ばれている。 -
陽極酸化処理とは、しゅう酸・
硫酸・クロム酸といった
電解質を使って、電気化学的に
酸化皮膜を作ること。 -
アルミニウムは空気に触れると
すぐに薄い酸化皮膜を作る。 -
アルマイトをかけると、
厚く強固な酸化皮膜が形成され
表面を保護し腐食を防ぐ。
アルマイト処理の性質
アルマイト処理には
どんな性質がありますか?
アルマイトには、
- 耐食性の向上
- 耐摩耗性の向上
- 意匠性の向上
- 電気絶縁性
といった性質があります。
まずは、耐食性の向上から
教えてください。
先ほどもお話しさせて
いただいた通り
アルミニウムは、酸素と結びつくと
表面に酸化アルミニウム(アルミナ)
の皮膜を形成します。
この酸化アルミニウムの
皮膜がなくなると
腐食が始まってしまいます。
だから、アルマイトをかけて
厚い酸化アルミニウムの
皮膜を形成し、耐食性を
向上させるんですね。
そういうことです。
耐摩耗性が向上する
ということは、硬くなる
ということですか?
種類によりますが、
アルミニウムの硬さは、
通常20~150HVの硬さです。
普通アルマイトの硬さは、HV200程度
硬質アルマイトの硬さは、HV400以上
となります。
硬質アルマイトに関しては
後で質問するので、
意匠性の向上についても
教えて下さい。
実は、アルマイトをかけると
表面に微細な孔が出来るんです。
アルマイトをかけると
孔が出来るんですか?
そうです。
染料を、孔に吸着させることで、
剥がれにくい着色をすることが
出来ます。
表面だけじゃなく
内部にも色が入るので
長持ちするんですね。
他にも光沢やツヤ消し・
梨地など、表面に装飾性を
持たせることもできます。
装飾や着色することで
表現がひろがるので
意匠性が向上するんですね。
そうです。
あと、気になったのは、
アルマイトをかけると
電気を通さなくなるんですか?
基本、アルミニウムは、
電気を通しやすい金属
なんですが、
アルマイト皮膜は、
酸化アルミニウム(アルミナ)
なので、絶縁性を持っており
電気を通さないんです。
電気を通したい場合は、
どうしたらよいですか?
接点部に皮膜が
つかないようにしたり
導電性アルマイトなども
あるようです。
メーカーさんに
確認してみて下さい。
導電性アルマイトとは
どのような処理なんですか?
メーカーによって
多少違うと思いますが
先ほどから出ている微細な孔に
染料ではなく、銀などの導電性に
優れた金属を入れるようです。
なるほど。
電気が通りにくい
ということは、熱伝導も
悪くなっていますか?
アルマイトをかけると
熱伝導率は、
アルマイトをかけていない
アルミニウムの1/3になります。
熱も伝わりにくく
なるんですね。
-
アルミニウムは、
酸素と結びつくと表面に
酸化アルミニウム(アルミナ)
の皮膜を形成する。 -
アルマイトをかけると、
より厚い酸化アルミニウムの
皮膜を形成し、
耐食性を向上させる。 -
アルマイトをかけることで
硬くなり耐摩耗性が向上する。 -
梨地や光沢・艶消しだけでなく、
剥がれにくい着色を施すことで
意匠性が向上する。 -
酸化アルミニウム皮膜は
絶縁性の為、電気を通さない。 -
導電性アルマイトは、
微細な孔に銀などの
導電性に優れた金属を入れ
導電性を持たせる。 -
アルマイトをかけると
熱伝導率は、
アルマイトをかけていない
アルミニウムの1/3に低下する。
アルマイトの種類とめっきとの違い
アルマイトは
めっきなんですか?
アルマイトとめっきは
同じ電解ですが
全く違います。
何が違うんですか?
違いは、
アルマイト処理は、
陽極酸化皮膜という名前の通り
陽極(+極)での電解になります。
対してめっきは、
陰極(-極)での電解になり、
金属イオンの還元析出という
表面処理になります。
陽極に取付けるか
陰極に取付けるか
の違いですか?
大きな違いは、
陽極酸化処理皮膜は、素材表面に
累積被覆するめっきや塗装と違い
素材の表面自体が酸化されて
皮膜が形成されます。
えーっと、
どういうことですか?
素材が覆われるのではなく
素材に浸透して皮膜を
形成するということです。
アルマイトは、
素材内部にも浸透して
酸化皮膜を作るんですね。
めっきとは全然違うんですね。
では、先ほど言われていた
硬質アルマイトについて
教えて下さい。
一般的な
アルマイトの処理には、
- 白アルマイト
- 黒アルマイト
- カラーアルマイト
- 硬質アルマイト
があります。
一般的なアルマイトが
白アルマイトですか?
そうです。
白アルマイトとは、
アルミニウムの表面に、耐食性に
優れた酸化アルニウムの皮膜を
形成させる一般的なアルマイト。
のことです。
アルマイトの中で
白アルマイトが
一番多いんですね。
次は、黒アルマイトと
カラーアルマイトを
説明しようと思いましたが
先ほど意匠性の向上で
説明したように
アルマイトをかけると
無数の微細な孔が空きます。
その孔に染料を吸着させた処理が
カラーアルマイトです。
黒色にしたら
黒アルマイト
その他の色を付けると
カラーアルマイトなんですね。
最後に硬質アルマイトです。
普通のアルマイトと
硬質アルマイトの
大きな違いは何ですか?
硬質というくらいなので
一番違うのは、硬さです。
普通のアルマイトは、
HV200程度で
硬質アルマイトは、
HV400以上でしたよね。
処理方法が違うんですか?
そうです。
硬質アルマイトは、通常より
低温の電解液で処理することで
硬い皮膜になります。
白アルマイトと
色は違うんですか?
違いますよ。
硬質アルマイトは、
グレー系の色になります。
『黒色硬質アルマイト』
とは違うんですか?
黒色硬質アルマイトは、
黒色アルマイトの膜厚を
厚くしているだけと
聞いたことがあります。
硬質アルマイトと
黒色硬質アルマイトは
違うんですね。
一度、メーカーさんに
加工方法を、
確認してみるといいですよ。
-
素材表面に累積被覆する
めっきや塗装と違い素材自体に
酸化皮膜が形成される。 -
白アルマイトとは、
素材表面に耐食性に優れた
酸化アルニウム皮膜を
形成させる一般的なアルマイト。 -
無数の微細な孔に
染料を吸着させた処理が
カラーアルマイト。 -
硬質アルマイトは、
低温の電解液で処理することで
硬い皮膜になる。
封孔処理と再アルマイト処理
先ほどから、アルマイトには
微細な孔が空いている
と言っていますが、
問題ないんですか?
アルマイトをかけた後は、
無数に穴があいており
そのままにしておくと
耐食性に問題があります。
じゃあ、
どうするんですか?
硬質アルマイト以外の
アルマイトをかけた後は、
必ず微細な孔を閉じる
封孔処理を行い
耐食性を向上させます。
封孔処理って微細な孔を
閉じる処理なんですね。
そうです。
どのような処理で
孔を閉じるんですか?
封孔方法には
- 加圧水蒸気封孔
- 金属塩封孔
- 沸騰水による封孔
等があります。
なぜ、硬質アルマイトには
封孔処理をしないんですか?
硬質アルマイトに
封孔処理を行うと
皮膜の硬さが
低下してしまうんです。
硬さを上げる処理なのに
硬さが低下するのでは、
意味ないですね。
なので、
硬さや耐摩耗性が要求される
硬質アルマイトでは、
指示がない限り、
封孔処理をしません。
それは、封孔処理をする
意味がないですね。
そうなんです。
ちなみに、アルマイトを
かけなおすことは
できるんですか?
再アルマイトは、
可能なんですが、
脱膜の工程で、素材が痩せるので
寸法が少し変化してしまいます。
再アルマイトをかけると
最初にかけた時より
仕上がりが悪くなるんですね。
そうなんです。
表面粗さが粗くなるなど
仕上がりが悪くなります。
精度が必要な素材への
再アルマイトは、
注意が必要ですね。
-
アルマイトをかけた後は、
封孔処理を行い耐食性を
向上させる。 -
硬質アルマイトは、
指示がない限り、皮膜硬さが
低下する封孔処理はしない。 -
再アルマイトは、
除膜工程で素材が痩せるので
仕上がりが悪くなる。 -
精度が必要な素材への
再アルマイトは注意が必要。
まとめ
耐食性に優れたアルミニウムに、
人工的に厚い酸化アルミニウムの皮膜を
作る処理がアルマイト処理です。
この皮膜によって耐食性・装飾性・
絶縁性など用途に応じた、
様々な機能を持つことが出来ます。
アルマイトは、
めっきと違い、素材に浸透する形で
皮膜を形成するので、
再アルマイトをかけるときには
仕上がりが悪くなる可能性があるので
注意して下さい。
ありがとうございました。