モーターを整備した後
試運転したら、
触れないくらい
熱くなってしまいました。
何が問題だと思いますか?
電圧はあってますか?
大丈夫です。
冷却ファンは
動いていますか?
冷却ファンも多分
大丈夫です。
絶縁抵抗値や
巻き線の抵抗値は
大丈夫ですか?
異常はなさそうです。
うーん。
なんですかねぇ?
ちなみに、
ドイツ製のモーター
なんです。
ドイツ製ですか・・・。
あっ!!
もしかして、50Hz仕様の
モーターじゃないですか?
そうです。
確か50Hzでした。
ここは、
60Hzの地域なので
周波数が違うことが
原因かもしれません。
今まで設置されていた
機械に、周波数をかえる
装置がついているんじゃ
ないですか?
たしかに・・・。
今まで設置されていた
機械に取付けて、
試運転してみます。
という、やりとりがありました。
今回は、周波数・ヘルツ(Hz)について
簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。
周波数とは?
そもそも、周波数って
なんですか?
私の分かる範囲に
なりますが、
いいですか?
お願いします。
まず、
電気の流れには
- 直流
- 交流
の2種類があります。
知っています。
確か直流は、
一定方向に電気が流れ、
交流は、一定の周期で
電圧・電流の
プラスとマイナスが
入れ替わるんですよね。
そうです。
そして、
この交流のプラスとマイナスが
一秒間に入れ替わる回数を
周波数(ヘルツ・Hz)と言います。
周波数とは
参考:関西電力送配電株式会社
1秒間で50回入れ替わると
50Hz、60回入れ替わると
60Hzということですか?
そういうことです。
購入する前に電気製品の
周波数をチェックする
必要がありますね。
そうですね。
ただ、
最近増えてきた、50/60Hzと
表示されているインバーター制御の
電気製品は、どこの場所でも
使用することができます。
50と60Hz共用で
使用できるものが
あるんですね。!
とはいえ、まだまだ
『50Hz』『60Hz』としか
表示されていない電気製品があり、
その周波数に合った地域でしか
使用できません。
単独表示の機器は、
その周波数に合った
地域でしか
使えないんですね。
周波数が変わると電気製品が使えない?
参考:東京電力エナジーパートナー株式会社
-
電気の流れには、直流・交流
の2種類がある。 -
交流のプラスとマイナスが
一秒間に入れ替わる回数を
周波数(ヘルツ・Hz)と言う。 -
最近の電気製品は、
50/60Hzと表示された
インバーター制御の機器が
多くなっている。 -
『50Hz』『60Hz』と
表示されている電気製品は、
その周波数に合った地域でしか
使用できない。
日本の周波数と地域
電気には、
周波数がある事と
ドイツが50Hzで
日本が60Hzなのは
分かりました。
実は、日本の周波数は
60Hzだけではないんです。
どういうことですか?
日本の交流の電気には、
『50Hz』と『60Hz』の
2種類の周波数があるんです。
1つの国に2つの周波数が
ある国はめずらしく
ほとんどの国では、
『50Hz』か『60Hz』の
どちらかに決まっています。
なんで、2つの周波数が
存在するんですか?
それは、
日本が電気を使うようになったのは
明治時代からなんですが、
当時、電気を作る発電機を
外国から輸入しなければ
なりませんでした。
今まで電気が無かったので
当然、発電機なんて
作ってないですもんね。
この時、
東京は、『ドイツ製』周波数50Hz、
大阪は、『アメリカ製』周波数60Hz
の発電機を輸入したんです。
ドイツ製の発電機と
アメリカ製の発電機で
周波数が違ったんですね。
そうなんです。
そして、東京と大阪を中心に
それぞれの周波数の電気が作られ、
そのまま、全国に拡大していったので
2つの周波数が存在する国に
なったんです。
だから、日本に
2つの周波数が
存在するんですね。
そうなんです。
その為、
新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を
結んだ線を境に、東側は『50Hz』
西側は『60Hz』の電気が
使われるようになりました。
なぜ違う周波数ができてしまったの?
参考:関西電力株式会社
周波数の統一は、
できなかったんですか?
そう思いますよね。
実際、統一の検討は
何度も行われたようです。
ただ、
改修費用が莫大な金額になることや
改修期間中は、電気の安定供給が
できなくなるだけでなく、
工場の設備を取り替える必要があるので
周波数統一を断念したみたいです。
たしかに、生産をとめたり
設備を変更する費用を
会社ではもてないです。
それなら、
『今のままでいいです。』
ってなりますね。
なので、日本には、
現在も、周波数が50Hzと60Hzの
2つの地域が存在しているんです。
-
日本の交流の電気には、
『50Hz』と『60Hz』の
2種類の周波数がある。 -
ほとんどの国では、
『50Hz』か『60Hz』かの
どちらかに決まっている。 -
明治時代に東京は、
『ドイツ製』の周波数50Hzを、
大阪は、『アメリカ製』の
周波数60Hzの発電機を輸入した。 -
新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を
結んだ線を境に、東側は『50Hz』
西側は『60Hz』が使われている。 -
周波数統一の検討は、
何度も行われたが、
様々な問題があり断念した。
周波数が機器に与える影響とは?
日本に周波数が2種類
ある事は分かりました。
ただ、周波数が違うと
何が問題なんですか?
周波数が違うと
- 誘導電動機の回転数が変化する。
- 励磁電流が変化する。
といった問題がおこります。
モーターの回転数って
周波数で変わるんですか?
変わるんです。
一般的な三相誘導電動機の回転数は、
- 回転数=(120×周波数)/極数
で表すことが出来ます。
極数って何ですか?
極数は、
ポール数とも呼ばれており、
モーターの中にある、磁極と言われる
N極とS極の数を表しており、
N極とS極の2つで1組になります。
1組であれば2極(2ポール)、
2組であれば4極(4ポール)
と呼ばれています。
ちなみに小型モータは、
4極(4ポール)が多いです。
極数が分からなかったら
どうすればいいですか?
もし、
極数が分からない場合は、
銘板に記載されているので
一度確認してみて下さい。
なるほど。
ということで、
回転数は、
60Hz 4極だと1分間に1800回転、
50Hz 4極だと1分間に1500回転
になります。
へー。じゃあ、
60Hz 2極だと
1分間に3600回転、
50Hz 2極だと
1分間に3000回転
と早くなるんですね。
そうなんです。
ただ、厳密には、
誘導モーターには、
『すべり』と呼ばれる特性があるので、
実際の回転数より少し遅くなりますが、
今回は、省かせていただきました。
では次に、
励磁電流の変化について
教えて下さい。
まず、励磁電流とは
モーターコイルに電流を流して、
『電磁石』化させる電流のことを
言います。
では、60Hzのモーターを
50Hzの地域で使用すると
励磁電流はどうなりますか?
60Hz用のモーターを50Hzの地域で
使うと、『過励磁』になり
騒音や振動がおおきくなったり
最悪、モーターが燃えたりします。
そうなんですか!
じゃあ、今回のように
50Hzのモーターを
60Hzの地域で使うと
どうなりますか?
50Hzのモーターを
60Hzの地域で使用すると
励磁電流は減少するので
使用できないことはない
と言われています。
では、なぜ熱くなったの
でしょうか?
正直、私もそこまで
詳しくないのですが
内部インピーダンスが
周波数に比例して
増大するのが原因
じゃないかと思っています。
インピーダンスって
なんですか?
インピーダンスとは、
『電流の流れにくさ』
のことです。
電流が流れにくくなると
どうなるんですか?
電流が流れにくくなると
異常発熱や電圧降下が
増えます。
なるほど・・・。
記載されている周波数と
使用地域をきちんと
合わせないと故障や
火災になる可能性が
あるということですね。
そうなんです。
周波数が機器にどのような影響を与えるか
参考:公益社団法人日本電気技術者協会
-
周波数が違うと、
誘導電動機の回転数が変化する・
励磁電流が変化する・
といった問題がおこります。 -
三相誘導電動機の回転数は、
回転数=(120×周波数)/極数
で表すことが出来る。 -
励磁電流とは、モーターコイルに
電流を流して、『電磁石』化させる
電流のことを言う。 -
60Hz用のモーターを50Hzの地域で
使用すると、『過励磁』になり
騒音や振動がおおきくなったり
モーターが燃えたりする。 -
50Hz用のモーターを60Hzの地域で
使用すると励磁電流は減少するが、
内部インピーダンスが周波数に
比例して増大する。 -
インピーダンスとは、
『電流の流れにくさ』のことで、
電流が流れにくくなると
異常発熱や電圧降下が増える。
ヘルツフリーとインバーター
インダクションモーターに
50Hz用と60Hz用が
ある事は分かりました。
ただ、家電など
50/60Hz共用のものが
あるのはなぜですか?
いわゆる
『ヘルツフリー』
というやつですね。
あれは、回路の
インバーター化によって
50Hz・60Hzが共用に
なっているんです。
インバーターを調べたら
『直流を交流に変換する
装置』となっています。
それがなぜ、
50Hzと60Hzが共用に
なるんですか?
おっしゃる通りで、
インバーターは、半導体を使った
直流を交流に変換する
電力変換装置のことを指します。
ただ、
一般的に言われている
インバーターは、コンバーター部・
インバーター部・制御回路を
組み合わせた装置のことで、
任意の周波数と電圧に変換し
モーターの回転速度を
コントロールする装置です。
どうやって周波数を
変えているんですか?
流れを説明すると、
コンバーター部で交流電源を
直流電源に変換し、インバーター部で
パルス状の疑似交流に変換し
制御回路でパルスの周波数を変えて
モーターの回転数をコントロールします。
【B-3a】インバーターの基礎知識(Ⅰ)
参考:兵神装備株式会社
あれ?先ほど、
電圧も変換するって
言ってましたよね?
なぜ、電圧も変換する
必要があるんですか?
それは、
回転速度は周波数のみで制御が可能
なんですが、電圧を下げずに
周波数を下げると、モーターの
交流抵抗が下がるので
電流が大量に流れて焼損します。
なるほど。
そのため、
周波数だけでなく、電圧も同様に
変更する必要があります。
電圧を変えるには
どうすればいいですか?
インバータは、
任意の周波数に設定すると
自動的に適切な電圧に
設定してくれる装置なんです。
なるほど。
だからインバーターで
回転数を変えることが
出来るんですね。
-
インバーターは、半導体を使った
直流を交流に変換する
電力変換装置のことを指す。 -
一般的に言われている
インバーターとは、
任意の周波数と電圧に変換し
モーターの回転速度を
コントロールする装置。 -
交流を直流に変換した後、
パルス状の疑似交流に変換し
パルスの周波数を変えることで
回転数をコントロールします。 -
回転速度は、電圧を下げずに
周波数を下げると、モーターの
交流抵抗が下がるので
電流が大量に流れて焼損する。 -
インバータは、任意の周波数に
設定すると自動的に適切な電圧に
設定してくれる装置。
まとめ
日本の商用電源には、
50Hzと60Hzがあり、周波数にあった
機器を使用する必要があります。
機器の周波数と地域の周波数が違った場合、
モーターの回転数のムラやタイマーが
ズレるなど、正常に働かないだけでなく
故障や火災の原因になることもあるので
ご注意ください。
ありがとうございました。