設備が
『漏電している。』
と電気保安協会から
連絡がありました。
どの設備ですか?
このヒーターを使った
設備です。
原因は、
分かっているんですか?
分かっていません。
漏電の原因を
調査して下さい。
分かりました。
では、ちょっと
調べてみますね。
どうですか?
漏電の原因は、
ヒーターの
絶縁不良ですね。
すぐ、直りますか?
ヒーターを交換すれば
大丈夫ですよ。
ありがとうございます。
漏電は、
非常に危険なので
注意して下さい。
分かりました。
という、やりとりがありました。
今回は、『漏電』について
簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。
漏電とは?
そもそも、『漏電』
ってなんですか?
私の分かる範囲での
説明になりますが
大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
『漏電』は、
電流が目的の電気回路以外に
漏れることを言います。
外部に電流が
漏れるから『漏電』
なんですね。
そうです。
なぜ、『漏電』が
発生するんですか?
通常、電気配線や
電気機器類には、
ビニールやゴムなどの絶縁体が
被覆されているので、電流が
外に漏れることはありません。
ところが、
水など電気を通す物質の付着や
絶縁体の劣化・破損などが原因で
目的の電気回路から
電流が漏れ出してしまい
『漏電』が発生します。
職場のあんぜんサイト:漏電
参考:厚生労働省
なるほど。
この漏れ出した電流は、
- 地絡電流
- 漏えい電流
に分類されます。
何が違うんですか?
地絡電流は、
2.1.1 地絡電流
(earth fault current)
絶縁不良によって大地に流れる電流。
引用:JIS C 8201-2-2
低圧開閉装置及び制御装置−
第2-2部:漏電遮断器
と定義されており、
漏えい電流は、
2.1.2 漏えい電流
(earth leakage current)
絶縁不良がない場合に、設備の
充電部から大地に流れる電流。
引用:JIS C 8201-2-2
低圧開閉装置及び制御装置−
第2-2部:漏電遮断器
と定義されています。
と言っても、一般的に、
地絡電流と漏えい電流は
一緒にされることが
多いです。
漏電とは、大地に
流れる電流のことを
言うんですね。
電気の事故で聞く
『ショート』とは
違うんですか?
『ショート』は、『短絡』
とも呼ばれており、
JIS規格で
2.1.5 短絡(short circuit)
電位差が等しくなる又は
ゼロに近くなる複数の導電部間の
偶発的又は意図的な導電経路。
(IEV 151-12-04)
引用:JIS C 8201-1
低圧開閉装置及び制御装置−第1部:通則
と定義されています。
どういうことですか?
簡単に説明すると、
電気が設備を経由せずに、
電線から電線へ大きな電流が
直接流れることを言います。
地絡となにが
違うんですか?
地絡と短絡の違いは、
電線同士がつながることを
『短絡』と言い、電線と大地が
つながることを『地絡』
と言います。
大地への短絡だから
地絡と言うんですね。
漏電については、
なんとなく
理解できました。
ちなみに、『漏電』すると
なにが問題なんですか?
『漏電』は、
- 感電
- 発火
などの原因になるので
非常に危険なんです。
それは、危険ですね。
-
『漏電』とは、電流が目的の
電気回路以外に漏れること。 -
通常、絶縁体で被覆されてるので
電流は漏れないが、電気を通す
物質の付着や絶縁体の絶縁不良が
原因で電流が漏れる。 -
漏れ出した電流は、地絡電流と
漏えい電流に分類される。 -
『短絡』とは、電気が設備を
経由せずに、電線から電線へ
大きな電流が直接流れること。 -
電線同士がつながることを
『短絡』と言い、電線と大地が
つながることを『地絡』と言う。 -
『漏電』は、感電・発火などの
原因になり非常に危険。
感電の危険性とは?
正直、『感電』って
あまり、よく分かって
いないんです。
『感電』って
ビリッとくるだけじゃ
ないんですか?
『感電』は、
電流の大きさや場所によって
感じ方は違いますが、最悪の場合
死に至るので非常に危険なんです。
『感電』って、かなり
危険だったんですね。
『感電』について
詳しく教えて下さい。
まず『感電』は、
JIS規格で
3.1 感電 (electric shock)
人又は動物の体を通過する電流が
引き起こす生理学的影響。
[IEV 195-01-04]
引用:JIS C 0365
感電保護−設備及び機器の共通事項
と定義されています。
『感電』って、
体の中に電流が流れる事
なんですね。
そうなんです。
体の中にどれくらいの、
電流が流れると
危険なんですか?
人体に流れる電流の
危険性判定は、
『ケッペンの実験』が有名で、
『50mA・S』が人体の
安全限界と言われています。
どういうことですか?
具体的には、
『人体の通過電流(mA)×
通過時間(S)=一定』という考えで、
50mAなら1秒以内、100mAなら
0.5秒以内に電流を遮断すれば、
心室細動や死亡の恐れはない。
と言われています。
人体への通過電流値と影響 | |
電流値 | 人体への影響 |
0.5mA~1mA | ・最小感知電流で、「ピリッと」感じる。 ・人体に危険性はない |
5mA | ・人体に悪影響を及ぼさない 最大の許容電流値。 ・相応の痛みを感じる。 |
10~20mA | ・持続して筋肉の収縮が起こり、 握った電線を離すことができなくなる。 ・不随意電流といわれ、離脱の限界。 |
50mA | ・疲労、痛み、気絶、 人体構造損傷の可能性。 ・心臓の律動異常の発生、 呼吸器系等への影響が出る。 ・心室細動電流の発生ともいわれ、 心肺停止の可能性がある。 |
100mA | ・心室細動の発生、心肺停止、極めて危険。 |
職場の安全サイト:感電
参考:厚生労働省
50mAって0.05Aって
ことですよね。
そうです。
50mAって
どれぐらいですか?
100V用40Wの電球で
400mA流れています。
えっ!
そうなんですか!
ちなみに、
ヨーロッパでは、『50mA・S』に
安全率を見込んだ、『30mA・S』
を運用したところ、効果があり
日本でも『30mA・S』を基準と
するようになりました。
ただし、
皮膚の乾燥や接触時の力・
印加電圧によっても
違うので注意して下さい。
分かりました。
-
『感電』は、電流の大きさや
場所によって感じ方は違うが、
最悪の場合、死に至る。 -
人体に流れる電流の危険性判定は、
『ケッペンの実験』が有名で、
『50mA・S』が人体の
安全限界と言われている。 -
50mAなら1秒以内、100mAなら
0.5秒以内に電流を遮断すれば、
心室細動や死亡の恐れはない。 -
ヨーロッパで、『50mA・S』に
安全率を見込んだ、『30mA・S』
を運用したら、効果があったので
日本でも基準とするようになった。 -
皮膚の乾燥や接触時の力・
印加電圧によっても
違うので注意が必要。
漏電による火災とは?
ところで
なぜ、漏電すると
発火するんですか?
漏電による
火災の原因には、
- 絶縁劣化
- 接触不良
- トラッキング
などがあります。
詳しく教えて下さい。
分かりました。
『絶縁劣化』すると、
なぜ発火するんですか?
絶縁が劣化すると、
建物の鉄網やトタンといった
金属類など、正常な回路以外に
電流が漏れ出て『ジュール熱』
を発生させるからです。
『ジュール熱』って
なんですか?
『ジュール熱』は、
JIS規格で
3-1-11 ジュール熱
物体に電流が流れるときに、
その抵抗によって発生する熱。
発生する熱量は、電流の2乗、
及び物体の抵抗に比例し
これをジュールの法則という。
引用:JIS C 5600 電子技術基本用語
と定義されています。
電気抵抗が大きい物体に
電流が流れると
より発熱するんですね。
そうです。
漏電すると、
今まで電気が流れていない場所に
急に電気が流れるため、
電気抵抗の大きい場所が発熱し、
火災の原因になります。
発熱して、周りの
燃えやすいものに
着火するんですね。
『接触不良』も同様で、
接触面の腐食・端子部のゆるみ
などの接触不良が原因で、
電気の通りが悪くなってしまい、
結果、電気抵抗が増大し発熱します。
4.接触不良による電気火災
参考:総務省消防庁-
防災・危機管理eカレッジ
配線や端子台が
焦げているのは、
そういうこと
だったんですね。
『トラッキング』について
教えて下さい。
『トラッキング』は、
JIS規格で
3.1 トラッキング (tracking)
固体絶縁材料の表面、内部又は
その両方に発生する、電界と
電解質汚染との複合作用によって、
導電路が次第に形成されること。
引用:JIS C 2134
固体絶縁材料の保証及び
比較トラッキング指数の 測定方法
と定義されています。
どういうことですか?
まず、
コンセントと電源プラグの
スキマに大量のホコリがたまると
汚れや空気中の水分が原因で
電流が漏れるようになります。
そして、そのまま
放置しておくと、
電源プラグの樹脂が加熱され、
炭化し『トラック』と呼ばれる
導電路ができるので、ジュール熱や
火花放電を繰り返すようになり、
炭化が進行し火災につながります。
2.トラッキング現象による火災
参考:総務省消防庁-
防災・危機管理eカレッジ
トラックが出来るから
『トラッキング』
なんですね。
-
漏電による火災の原因には、
絶縁劣化・接触不良・
トラッキングなどがある。 -
絶縁が劣化すると、
建物の金属類など、正常な
回路以外に電流が漏れ出て
『ジュール熱』を発生させる。 -
電気が流れていなかった場所に
急に電気が流れると、
電気抵抗の大きい場所が
発熱するので火災の原因になる。 -
接触面の腐食・端子部のゆるみ
などの接触不良が原因で、
電気抵抗が増大し発熱する。 -
コンセントと電源プラグの
スキマに大量のホコリがたまると
汚れや空気中の水分が原因で
電流が漏れるようになる。 -
電源プラグが炭化すると、
トラックができ、ジュール熱や
火花放電を繰り返すようになり
火災につながる。
漏電対策の方法とは?
漏電が危険なことは
分かりました。
漏電対策には、
どのような方法が
あるんですか?
漏電対策の
有効な方法に、
- 接地(アース)
- 漏電遮断器
などがあります。
『接地』って
なんですか?
『接地』とは、
アース線(接地線)で電気機器と
大地を接続することを言います。
アース(接地)
参考:一般財団法人九州電気保安協会
『接地』すると
どうなるんですか?
『接地』しておくと、
漏電した時、大部分の電流が人体より
電気抵抗の小さいアース線を通って
大地に流れるため、人体への影響を
軽減してくれます。
冷蔵庫やエアコンの
『アース線』に、
そんな役割が
あったんですね。
他にも『接地』には、
『漏電遮断器などを
確実に動作させる。』
という目的があります。
『接地』していないと
『漏電遮断器』は、確実に
動作しないんですか?
そうなんです。
『漏電遮断器』は、
回路内の配線や機器などの
わずかな漏電を検出して、
電源を切って感電を防ぐ
役割があります。
3523 漏電遮断器
ろうでんしゃだんき
交流低圧電路の地絡及び
感電保護用で、電流動作形の遮断器。
地絡保護のほか過負荷、
短絡保護併用形もある。
引用:JIS Z 9212
エネルギー管理用語(その2)
どうやって、漏電を
検出するんですか?
基本的に、正常な
回路の状態だと
機器に送られる電流値と帰りの
電流値は、同じ値になりますが、
漏電が発生すると行きと帰りの
電流値に差が出てしまいます。
漏れた電流が、
アース線に流れるので
帰りの電流が、
少なくなるんですね。
そうなんです。
そして、
この電流値の差を素早く検出し、
電源を切って感電を防いでくれます。
ブレーカーの操作方法
参考:沖縄電力株式会社
アース線がないと、
『漏電遮断器』が
確実に漏電を検出
できないんですね。
そうなんです。
『漏電遮断器』とアースは
セットで取り付ける
必要がありますね。
-
漏電対策の有効な方法に、
接地(アース)・漏電遮断器
などがある。 -
『接地』とは、アース線で
電気機器と大地を接続すること。 -
『接地』すると、漏電した時、
大部分の電流がアース線を
通って大地に流れるため、
人体への影響が軽減される。 -
『接地』には、漏電遮断器を
確実に動作させる目的がある。 -
漏電が発生すると行きと帰りの
電流値に差が出る。 -
『漏電遮断器』は電流値の差を
素早く検出し、電源を切って
感電を防いでくれる。
まとめ
漏電は、配線や機器から電流が漏れて
大地に流れ出ることを言い、
感電や火災の原因になります。
配線や機器を定期的に点検したり、
適切な漏電対策機器を使用することで
漏電による事故を防ぐことが出来ます。
どのような機器がついているか、
破損している箇所はないかなど
一度、調査や点検をしてみては
いかがでしょうか?
ありがとうございました。