小型集塵機の排気に
使用している塩ビ配管を
交換しようと思うんですが、
あれは『VP管』ですか?
それとも『VU管』ですか?
塩ビ管の側面に、
『VU40』と記載されて
いるのでVU管ですね。
ありがとうございます。
ちなみに、VU管とVP管って
なにが違うんですか?
VU管は、VP管と比べると
パイプの厚みが薄いんです。
パイプの厚みが
薄いということは、
VU管の方が軽いんですね。
そうなんです。
天井近くまで上げないと
いけないので、
軽い方が助かります。
間違えてVP管を頼まなく
よかったです。
では、VU管の手配を
お願いします。
という、やりとりがありました。
今回は、『塩ビ管(パイプ)』について
簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。
塩ビ管とは
そもそも『塩ビ管』
ってなんですか?
私の分かる範囲での
説明になりますが
大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
まず『塩ビ管』は、
『塩ビパイプ』とも
呼ばれていますが、
正式名称を『硬質ポリ塩化ビニル管』
と言い、硬質の『ポリ塩化ビニル』で
出来た配管材のことです。
硬質ポリ塩化ビニル管の材料は、
ポリ塩化ビニルを主体とし、
良質な安定剤、顔料などを
加えたものとする。
なお、可塑剤及び可塑剤を含む
材料は、使用してはならない。
引用: JIS K 6741-硬質ポリ塩化ビニル管
塩ビの正式名称は、
『ポリ塩化ビニル』って
言うんですね。
そうなんです。
一般的に塩ビ管は、
鉄管やコンクリート管と比べ
- 耐酸・耐アルカリ性など
耐薬品性に優れている。 - サビや腐食の心配がない。
- 内面が平滑で摩擦係数が少ない。
- 軽いので運搬しやすい。
- 電気を通さない。
- 比較的安価。
といった長所があります。
なるほど。
しかも、溶接やねじ込んで
接続する金属配管と違い、
接着剤を使って接続するので、
簡単な配管なら、御社で
接続することも可能です。
一回、自分で
交換してみようかな。
ただし、塩ビ管は
- 熱に弱い(60℃以下で使用)。
- 衝撃に弱い。
- 線膨張率が大きい。
- ヤング率が小さい。
- ノッチ効果の影響が大きい。
- 溶剤に弱い。
といった欠点があるので、
ご注意ください。
「線膨張率」とか
「ヤング率」「ノッチ効果」
ってなんですか?
線膨張率は、
線膨張率
固体の長さが温度によって変わる
割合を表わし、温度が1度変化した
ときの長さの変化率で示す。塩ビ管の
線膨張係数αは約7×10-5/℃であり、
温度変化1度に対し長さ1mあたり
0.07mm伸縮することになる。
引用:用語の解説-塩化ビニル管・継手協会
と解説されています。
どういうことですか?
つまり、線膨張率とは
物体の長さが熱によって変形する
割合のことです。
線膨張率が大きいと
熱による変形が
大きくなるんですね。
じゃあ、ヤング率って
なんですか?
ヤング率は、
ヤング率
弾性率の一種で、伸び弾性率ともいう。
一様な太さの棒の一端を固定し、
他端を軸方向に引く (又は押す)
場合、棒の断面に働く応力をσ、
単位長さあたりの伸び (又は縮み)
をεとすれば、比例限度内で
σ=Eεという関係が成り立つ。
このように伸び変形で応力σとひずみε
との間に比例関係が成り立つとき、
比例定数 E=σ/εをヤング率といい、
物質特有の定数である。
1807年、T.Youngによって導入された。
塩ビ管のヤング率は、振動法測定で
3.4×103MPa (15℃) である。
引用:用語の解説-塩化ビニル管・継手協会
と解説されています。
どういうことですか?
つまり、ヤング率とは
『剛性』を表しており、ヤング率が
大きいと『硬い・変形しにくい』
小さいと『柔らかい・変形しやすい』
を意味します。
なるほど。
塩ビ管は、
比較的ヤング率が小さいので、
塩ビ管を固定するために取付ける
支持金具の間隔を、金属管より
小さくする必要があります。
「たわみやすい。」
ということですね。
では、
ノッチ効果についても
教えて下さい。
ノッチ効果は、
ノッチ効果
材料に穴・切り傷などの切欠き
(notch) 部がある場合、そこに
応力が加わると切欠き部の周辺に
応力集中(stress concentration) して
強さが低下する現象をいい、
切欠き効果ともいう。
なお、切欠きとは弾性学、
塑性学などで、材料の滑らかな緑に
局部的にできた凹所(たとえば穴・
切り傷など)をいう。
引用:用語の解説-塩化ビニル管・継手協会
と解説されています。
穴やミゾなどの加工によって、
加工した部分の強度が
低下することを
ノッチ効果と言うんですね。
そうです。
塩ビ管の特長については、
大体分かりました。
-
『塩ビ管』は、正式名称を
『硬質ポリ塩化ビニル管』と言い、
『ポリ塩化ビニル』で出来ている。 -
塩ビ管は、鉄管やコンクリート管と
比べ、「耐薬品性に優れている。」
「サビや腐食の心配がない。」
「内面の摩擦係数が少ない。」
「軽い。」「電気を通さない。」
「安価。」などの長所がある。 -
塩ビ管は、溶接やねじ込んで
接続する金属配管と違い、
接着剤を使って接続する。 -
塩ビ管は、
「熱に弱い。」「衝撃に弱い。」
「線膨張率が大きい。」
「ヤング率が小さい。」
「ノッチ効果の影響が大きい。」
「溶剤に弱い。」
などの欠点がある。
塩ビ管の種類と特徴
VP管やVU管について
教えて下さい。
分かりました。
塩ビ管は、JIS規格で
と分類されています。
思っていた以上に
種類がありますね。
一般的によく使用される
『硬質ポリ塩化ビニル管』
から説明していきますね。
お願いします。
硬質ポリ塩化ビニル管には、
VP管・VM管・VU管があり
流体を水とした時の設計圧力が
VP管は、0〜1.0 MPa
VM管は、0〜0.8 MPa
VU管は、0〜0.6 MPa
と違います。
設計圧力ってなんですか?
設計圧力とは、
JIS規格で
3.1設計圧力
通常の使用状態における静水圧に
水撃圧を加えた圧力で、
使用時に管に加わる最大圧力。
引用: JIS K 6741-
硬質ポリ塩化ビニル管
と定義されています。
つまり、VP管であれば
「水なら最大1.0MPaの
圧力で流すことが出来る。」
ということですね。
そういうことです。
それぞれ、
なにが違うんですか?
一般的にVP管は、
圧力がかかる給水管を中心に
幅広い用途で使用されています。
なぜ、VP管なんですか?
VPは「VinylPipeの
頭文字を取って
名付けられた。」
と言われています。
へー。
ただ、VP管には
- 硬質ポリ塩化ビニル管
JIS K 6741 -
水道用硬質ポリ塩化ビニル管
JIS K 6742
と2種類の規格があり、
水道用VP管は、排水用・通気用の
一般用VP管と違い、「厚生労働省
『水道施設設計基準』にて定められた
浸出試験に適合している。」など
基準がより厳しく定められています。
一般用途の塩ビ管は、
『RoHS指令』
に適合していない可能性が
あるので、ご注意ください。
次はVU管について
教えて下さい。
VU管は、
VP管よりパイプの厚みが薄く、
主に圧力がかからない排水や
給排気などの用途で使用されます。
VU管は、VP管より
パイプの厚みが薄いので
圧力には弱いですが、
軽いというメリットが
ありますね。
なぜVUなんですか?
VUは「Vinyl Usunikuの
頭文字を取って名付けられた。」
と言われています。
なぜ「Usuniku」
・・・。
でも、覚えやすくて
良いですね。
では、VM管について
教えて下さい。
VM管は、
使ったことがないので
説明が難しいのですが、
農林水産省の設計基準を
満たすようにつくられており、
農業用で使用されます。
へー。
設計圧力・パイプ厚みとも
VP管とVU管の中間に
位置します。
これら3種類の
見分け方はあるんですか?
これらすべて同じ
グレー色なので、
パイプに表記されている
名称や厚みで判断します。
-
硬質ポリ塩化ビニル管には、
設計圧力が違うVP管・VM管・
VU管がある。 -
VP管は、圧力がかかる給水管を
中心に幅広く使用されている。 -
水道用VP管は、一般用VP管と
違い、厚生労働省『水道施設
設計基準』にて定められた
浸出試験に適合している。 -
VU管は、VP管よりパイプの
厚みが薄く、圧力がかからない
排水や給排気などで使用される。 -
VM管は、農林水産省の設計基準を
満たすようにつくられている。
HIVP管とHT管
たまに、濃い青色や
赤茶色っぽいパイプを
見かけますが、あれは
塩ビ管なんですか?
濃い青色のパイプは、
『耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管』で、
通称『HIVP管』や『HI管』
と呼ばれている塩ビ管で、VP管より
耐衝撃性を向上させた塩ビ管です。
なぜ、
HI管なんですか?。
HIは「HighImpactの
頭文字を取って
名付けられた。」
と言われています。
どういう場所で
使用されているんですか?
HI管は、
塩ビ管の耐衝撃性が低下する寒冷地や
耐衝撃性が必要な配管に使用されます。
なるほど。
ただし、
HI管はVP管に比べ耐候性が悪いので、
- 屋内の日光が当たらない場所
- 埋設配管
などに使用します。
HI管は、屋外での使用に
向いていないんですね。
もし、
屋外などの紫外線が当たる場所で
使用するときは、保温材やテープなどで
紫外線を防いで使用して下さい。
分かりました。
では、赤茶色のパイプに
ついて教えて下さい。
赤茶色のパイプは、
『耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管』で、
通称『HT管』と呼ばれている
塩ビ管で、常時使用できる温度が
90℃まで可能です。
なぜ、
HT管なんですか?
HT管は「High
Temperatureの
頭文字を取って
名付けられた。」
と言われています。
ちなみに、
VP管の耐熱温度は
何度ですか?
VP管の耐熱温度は、
通常60℃以下です。
HT管は、VP管より
30℃も高い温度で
使用できるんですね。
-
耐衝撃性を向上させた濃い青色の
『耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管』
は、通称『HIVP管』や『HI管』
と呼ばれている。 -
HI管は、塩ビ管の耐衝撃性が
低下する寒冷地や耐衝撃性が
必要な配管に使用される。 -
HI管はVP管に比べ耐候性が
悪いので、屋内の日光が当たらない
場所や埋設配管などに使用する。 -
HI管を屋外などの紫外線が
当たる場所で使用するときは、
保温材などで紫外線を防止する。 -
連続使用温度を90℃に向上させた
赤茶色の『耐熱性硬質ポリ塩化
ビニル管』は、通称『HT管』と
呼ばれている。
継手と接着剤
塩ビ管の接続が簡単と
言っていましたが、
どうやって
接続するんですか?
塩ビ管同士をつなげるには、
正式名称『硬質ポリ塩化ビニル管継手』
と言われる塩ビ管継手を使用します。
どんな種類があるんですか?
塩ビ管継手には、
まっすぐつなぐ『ソケット』
90度に角度をつける『エルボ』
45度に角度をつける『45度エルボ』
T字に3本のパイプをつなぐ『チーズ』
などが様々な種類があります。
色んな形状があるんですね。
そうなんです。
しかも、塩ビ管継手には、
『TS継手』や『DV継手』などが
あります。
TSやDVって
どういう意味ですか?
TSは、
『Taper Sized』の略で、テーパの
受口を持った継手と塩ビ管の接合面に
接着剤を塗布した後挿入し、接合します。
DVは、
「排気・通気」を意味する『Drain・
Vent』の略で、圧力がかからない
場所での使用を想定しており、
TS継手より受口の深さが短く、
テーパも緩いです。
HI管やHT管の継手は
あるんですか?
ありますよ。
HI管には、正式名称『耐衝撃性硬質
ポリ塩化ビニル管継手』のHITS継手、
HT管には、正式名称『耐熱性硬質
ポリ塩化ビニル管継手』HT継手が
あり、それぞれの素材・性能に
適した接着剤を使って接着します。
HI管やHT管専用の
接着剤もあるんですね。
-
塩ビ管同士をつなげるには、
『硬質ポリ塩化ビニル管継手』
と言われる継手を使用する。 -
塩ビ管継手には、『TS継手』や
『DV継手』などがある。 -
TS継手のTSは、『Taper Sized』
の略で、テーパの受口を持った継手
と塩ビ管の接合面に接着剤を
塗布した後挿入し、接合する。 -
DV継手のDVは、『排気・通気』を
意味する『Drain・Vent』の略で、
圧力がかからない場所での使用を
想定しており、TS継手より受口の
深さが短く、テーパも緩い。 - HI管には、『耐衝撃性硬質ポリ塩化
ビニル管継手』のHITS継手、
HT管には、『耐熱性硬質ポリ塩化
ビニル管継手』HT継手があり、
それぞれの接着剤を使って接着する。
まとめ
塩ビ管は、正式名称『硬質ポリ塩化
ビニル管』と言い『ポリ塩化ビニル』
で作られた配管材のことです。
一般的に塩ビ管は、鉄管や
コンクリート管と比べ、耐薬品性に優れ、
腐食の心配がなく軽量で安価といった
長所があります。
ただ一方で、熱に弱い、衝撃に弱い
といった短所もあります。
そのため、それを補うために耐衝撃性を
高めたHIVP管や耐熱温度を高めた
HT管などがあるので、用途に合った
塩ビを選定して使用して下さい。
ありがとうございました。