メッキ液を送る配管の周りに、
透明なカバーをつけたいのですが
良い材質はありますか?
塩ビ樹脂でカバーを
作るのはどうですか?
酸やアルカリなどを使用する
雰囲気ですが、大丈夫ですか?
めっき槽や防液提など、
色々なものが、すでに
塩ビで出来ているので
問題ないですよ。
あっ、本当だ!
たしかにそうですね。
では、透明の塩ビ樹脂で
カバーを作って下さい。
分かりました。
という、やりとりがありました。
そもそも、『塩ビ樹脂』
ってなんですか?
私の分かる範囲での
説明になりますが
大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
まず、
一般的に『塩ビ樹脂』
と呼ばれているものは、
固体の『ポリ塩化ビニル』
のことを指しています。
塩ビって、ポリ塩化ビニルの
略称だったんですね。
そうなんです。
ほかにも、英語表記の
『poly vinyl chloride』
の頭文字をとって、『PVC』
とも呼ばれています。
PVCって、塩ビのこと
だったんですね。
そうなんです。
ところで、
塩ビはなにから
出来ているんですか?
塩ビは、
食塩を原料とする『塩素』約60%と
石油を原料とする『エチレン』
約40%から出来ています。
えっ!塩ビの原料って
約60%が食塩なんですか!
そうなんです。
そのため、
ほとんどの原料を石油に依存している
他のプラスチックと比べ、
石油の使用量が少なくすむんです。
なるほど。
しかも塩ビは、
生産に必要なエネルギーが、
他のプラスチックの約70%しか
かからないので、CO2の排出量も
少なくすむんです。
省資源で、環境負荷の少ない製品です
参考:塩化ビニル管・継手協会 -製品の概要
-
一般的に、塩ビ樹脂とは個体の
『ポリ塩化ビニル』を指す。 -
英語表記『poly vinyl chloride』
の頭文字をとって、『PVC』とも
呼ばれている。 -
食塩が原料の『塩素』約60%と
石油が原料の『エチレン』
約40%から出来ている。 -
原料のほとんどが石油である
他のプラスチックと比べて、
石油の使用量が少なくすむ。 -
塩ビは他のプラスチックと比べ、
生産エネルギーが約70%しか
かからないので、CO2の排出量が
少ない。
塩ビ樹脂の特徴
塩ビ樹脂について、
もっと詳しく教えて下さい。
塩ビ樹脂は、
ポリエチレン・ポリプロピレン・
ポリスチレンとともに、
『四大汎用プラスチック』
と呼ばれています。
使用量・生産量が多い、
四大汎用プラスチックの中に
塩ビも含まれているんですね。
そうなんです。
四大汎用プラスチックは、
全プラスチックの約70%を
占めており、そのなかでも、
塩ビは最も早く工業化された
汎用プラスチックなんです。
日本の塩ビ工業の歴史
参考:塩ビ工業・環境協会ー資料室
塩ビって、昔からある
プラスチックだったんですね。
塩ビには、どんな特徴が
あるんですか?
基本的に、
『塩素』や『フッ素』・『ハロゲン』
といった元素を含む素材は、共通して
化学的に安定しています。
「化学的に安定している。」
とは、どういう意味ですか?
「化学的に安定している。」
とは、
「ほかの物質と反応しにくい。」
ということで、「耐油・耐薬品性等に
優れた素材」を意味しています。
原子同士の結びつきが
強いので、他の元素に
影響されにくいんですね。
そうなんです。
酸素とも反応しにくいので、
酸化や腐食すること無く、
半永久的に性能を保持します。
すごいですね。
ほかにも塩ビ樹脂は、
難燃性に優れた塩素原子を持って
いるので、難燃剤を加えなくても
燃焼しにくいうえ、着火温度が
455℃と高いので、火災の心配が
少ない素材なんです。
石油が原料なのに、
難燃性が高い
素材なんですね。
しかも、
塩ビ樹脂は、非晶性樹脂のため
可塑剤や添加剤などの配合によって
柔軟性・弾性・耐衝撃性などを
持たせた製品を作ることが出来ます。
幅広い用途の製品を
作ることが出来る
素材なんですね。
-
塩ビ樹脂は、ポリエチレン・
ポリプロピレン・ポリスチレン
とともに『四大汎用プラスチック』
と呼ばれている。 -
『塩素』を含む素材は、
化学的に安定している。 -
酸素と反応しにくいので、
酸化や腐食すること無く、
半永久的に性能を保持する。 -
難燃性に優れた塩素原子を持って
いるうえ、着火温度が455℃と
高いので、火災の心配が少ない。 -
塩ビ樹脂は、非晶性樹脂のため
可塑剤や添加剤などの配合によって
柔軟性・弾性・耐衝撃性などを
持たせた製品を作ることが出来る。
可塑剤の役割と塩ビの種類
先ほど出てきた、
『可塑剤』ってなんですか?
通常、塩ビ樹脂は
常温では硬い樹脂ですが、
60~80℃に加熱すると
軟らかくなってきます。
ふむふむ。
この軟らかくなった状態で
可塑剤を加えると、常温でも
柔らかい状態を保持することが
出来るようになります。
軟質塩ビって、硬質の
塩ビ樹脂に可塑剤を加えて
柔軟性を持たせたもの
だったんですね。
そうです。
可塑剤には、
- フタル酸エステル系
- アジピン酸エステル系
- リン酸エステル系
- トリメリット酸エステル系
など数多くありますが、
8割以上をフタル酸エステル系が
占めています。
へー。
あれ?たしか
フタル酸エステルって
RoHS2指令の対象物質じゃ
なかったでしたっけ?
そうです。
フタル酸エステルは、
RoHS2指令対象物質です。
なので、最近では
『フタル酸エステルフリー塩ビ』
と言われる、フタル酸エステル系の
可塑剤を使わない軟質塩ビも
出てきています。
へー。
軟質塩ビを使用するときは、
一度メーカーに確認したほうが
良さそうですね。
ちなみに、
硬質塩ビ樹脂のように可塑剤を
使用していないものは、
無可塑を表す『PVC-U』と
表記されています。
硬質塩ビ樹脂には、
軟らかくする可塑剤は
使用されていないですもんね。
ほかにも、
一般の塩ビ樹脂より塩素の含有量を
増加させて耐熱温度を向上させた、
『PVC-C(CPVC)』と呼ばれる
塩ビ樹脂があります。
末尾の-Uや-Cは、
なにを表しているんですか?
末尾のアルファベット
-UのUは、「可塑化していない」
を表す「Unplasticized」
-CのCは、「塩素化」を表す
「Chlorinated」
の頭文字からきています。
本当に、塩ビには色んな
種類がありますね。
-
塩ビ樹脂は、常温では硬い
樹脂だが、60~80℃に
加熱すると軟らかくなる。 -
軟らかくなった状態で可塑剤を
加えると、常温でも柔らかい
状態を保持することが出来る。 -
使用されている可塑剤の8割以上を
フタル酸エステル系が占めている。 -
『フタル酸エステルフリー塩ビ』
と言われる、フタル酸エステル系の
可塑剤を使わない軟質塩ビもある。 -
可塑剤を使用しない『PVC-U』や
耐熱温度を向上させた『PVC-C』
などがある。
塩ビ樹脂の安全性
じつは、塩ビ樹脂って
「燃やすとダイオキシンが
発生する。」といった毒性が
強いイメージがあります。
本当のところはどうなんですか?
基本的に塩ビ樹脂は、
化学的に安定した固体で、
「人の健康への影響はない。」
と言われています。
では、なぜ悪いイメージが
あるんですか?
そもそも
『ダイオキシン』は、
炭素(C)・水素(H)・酸素(O)と
塩素(Cl)の元素で構成されており、
これらの元素で構成されているものが
燃えると、発生する可能性があります。
やっぱり、塩ビを燃やすと
ダイオキシンが
発生しちゃうんですね。
ただ、
一口にダイオキシンと言っても、
実は200種類以上あり、
有害なものは、そのうちの
1割程度だと言われています。
ダイオキシン=有害
ではないんですね。
そして問題とされている
ダイオキシンのほとんどは、
塩素系農薬(除草剤)やPCB(人工油)に
含まれている不純物が原因だと言われて
おり、近年は製造中止となっています。
塩素を含むものすべてが
ダイオキシンの原因だと
思われたんですね。
そうなんです。
塩ビ樹脂に問題があった
わけではないんですね。
塩ビ樹脂そのものは、
水道管にも使用されているように
安全なプラスチックで、
有害性はないため、安全データシート
発行の義務化もされていません。
塩ビ樹脂が安全なことは
分かりました。
でも、
燃やすと『ダイオキシン』
が発生するんですよね。
発生しますね。
ただ、
塩素は塩ビだけでなく、食べ物や
紙・調味料・衣類や空気中にも
存在しています。なので、
塩ビだけでなく、ほとんどのものを
燃やすとダイオキシンが発生します。
塩ビだけがダイオキシンを
発生させる原因では
ないんですね。
そうです。
しかも
ダイオキシンは、
燃焼が原因で発生するのではなく、
不完全燃焼が原因で発生するので
焼却条件をきちんと管理することで
発生量が減少させることが出来ます。
ダイオキシンの誤解
参考:塩ビ工業・環境協会
塩素系農薬の禁止や
焼却炉の管理によって
ダイオキシンの発生が
減少しているんですね。
-
塩ビ樹脂は、有害性のない
安全なプラスチックで、
安全データシート発行の
義務化はされていない。 -
環境中に放出されたほとんどの
ダイオキシンは、塩素系農薬や
PCBに含まれている不純物が
原因だと言われており、
近年は製造中止となっている。 -
炭素・水素・酸素・塩素の元素で
構成されているものが燃えると、
ダイオキシンが発生する。 -
塩素は、食べ物や紙・調味料・
衣類などや空気中にも存在して
いるので、ほとんどのものを
燃やすとダイオキシンが発生する。 -
ダイオキシンは、不完全燃焼が
原因で発生するので、焼却条件を
きちんと管理することで発生量を
減少させることが出来る。
まとめ
塩ビ樹脂は、正式名称を「ポリ塩化ビニル」
と言い、1931年にドイツで誕生しました。
塩ビ樹脂は、食塩を原料とする塩素
「約60%」と石油を原料とするエチレン
「約40%」からできている素材で、
ほとんどの原料を石油に依存している
他のプラスチックと比べ、石油の使用量が
少なくすみます。
近年では、塩ビ樹脂の安全性が見直され
幅広い分野で使用されています。
使用用途・目的に合った塩ビ樹脂を
選定し使用して下さい。
ありがとうございました。