SPCCの板厚6mmで
加工をお願いしたんですが
加工屋さんに、SS400で
加工すると言われました。
何でですか?
SPCCは、
板厚3.2mmまでしか
ありません。
そうなんですね。
知らなかったです。
ついでで悪いですが、
SS400とS45Cは
どうやって
使い分けているんですか?
SPCCは、冷間圧延板
SS400は、
一般構造用圧延鋼材
S45Cは、
機械構造用炭素鋼鋼材
と呼ばれていて、
使用用途が違います。
名前のイメージですが、
SS400よりS45Cが
機械部品に向いている
感じがします。
その通りです。
構造材料に使用されるのが
SS400
機械部品に使用されるのが
S45C
と、簡単に考えてもらって
問題ないと思います。
じゃあ、
SPCCって何ですか?
SPCCは、
板厚規格が0.4~3.2mmで
板金加工によく使われる材料です。
ありがとうございます。
SS400で問題ないと
伝えます。
というやりとりがありました。
今回は、機械加工に使用される
鋼材について
考えていきたいと思います。
鋼材とは?
あなたが加工を依頼するとき、
どのように依頼をしていますか?
『鉄で作って!!』
と、お願いしていませんか?
ダメですか?
一般的に
鉄と言われているものは、
鉄と炭素の合金である
- 鋼
のことを指します。
鉄じゃなくて鋼ですか。
その鋼を板・棒・パイプ等の
形状に加工したものを
- 鋼材
と呼びます。
『鋼材』ですか?
そうです。
一般的な鋼材には、
- SPCC
- SS材
- SC材
- SCM
等があります。
聞いたことはありますが、
良く分かっていません。
これらの種類も
一般的というだけで
まだまだ種類があります。
鋼材の特徴を教えて
もらっていいですか?
いいですよ。
使用用途・条件によって
適切な鋼材を選ぶ必要があるので
種類や特徴を紹介していきます。
お願いします。
-
一般的に鉄と言われるものは、
鉄と炭素の合金である鋼を指す。 -
鋼を板・棒・パイプ等の形状に
加工したものを鋼材という。 -
一般的な鋼材に、SPCC・SS材・
SC材・SCMなどがある。
鋼材の種類と分類
まず、鋼材の分類から
説明します。
お願いします。
鋼材は、大きく分けると
- 普通鋼
- 特殊鋼
の二種類に分類されます。
違いは何ですか?
普通鋼は、
引張強さといった性質で
分類されていて、
土木・建築などの一般構造材で
使用されることが多い鋼材
です。
しかも、
含有炭素量が少ないため、焼入れでの
硬度向上の効果がないので
ほとんど、そのまま使用されます。
機械や建築の骨組みなどに
使用する感じですね。
次に、特殊鋼は
含有炭素量や品質・機械的性質など
細かく規定されていて、
機械部品や工具・特殊な用途で
使用されることが多い鋼材
です。
特殊鋼は、重要な場所で
使用する感じですね。
-
鋼材は、大きく分けて
普通鋼・特殊鋼の二種類に
分類される。 -
普通鋼は、引張強さといった
性質で分類されており、
土木・建築などの一般構造材で
使用されることが多い。 -
含有炭素量が少ないので
焼入れによる硬度向上が
見込めないので、そのまま
使用されることがほとんど。 -
特殊鋼は、含有炭素量や
品質・機械的性質など
細かく規定されており、
機械部品や工具・特殊な用途で
使用されることが多い。
普通鋼とは?
普通鋼の種類は、
- SS材 一般構造用圧延鋼材
- SM材 溶接構造用圧延鋼材
- SB材 ボイラ及び
圧力容器用炭素鋼
及びモリブデン鋼 - SPC材 冷間圧延鋼板及び鋼帯
があります。
4種類もあるんですね。
そうなんです。
SS材
SS材は、
- Steel Structure
の頭文字で、構造用鋼材
を表しています。
SS材は、よく耳にします。
溶接も簡単で、機械や構造物の
補助部材に使用されます。
SS400をよく耳にしますが
400という数字は、
何を表しているんですか?
SS400の3桁の数字は、
引張強さの最低値を表していて
400N/m㎡の引張強度は
保証されています。
ということを表しています。
SS400の数字は、引張強度の
最低値を表していたんですね。
使用上で何か
注意点はありますか?
SS材で溶接を行う場合は、
板厚は50mm以下で
行ってください。
もし、板厚が50mm以上の
溶接が必要になった場合は
どうすればいいですか?
その場合は、溶接に向いている
SM材を使ってください。
-
SS材は、Steel Structureの
頭文字で、構造用鋼材を
表している。 -
SS400の3桁の数字は、
引張強さの最低値を表している。 -
SS材で溶接を行う場合は、
板厚50mm以下で行う。 -
板厚50mm以上の場合は、
SM材を使用する。
SM材
SM材は、
- Steel Marine
の頭文字で、船舶用鋼材
を表しています。
なぜ溶接の話をしていたのに
船舶用鋼材の話になるんですか?
もともとSM材は、
溶接構造がほとんどの船舶用鋼材
として使用されていました。
そのため、溶接用としても
使用されています。
そういうことですね。
溶接性を高めるために
炭素(C)・ケイ素(Si)・
マンガン(Mn)の
含有量が規定されています。
SS材より成分の規定が
厳しいんですね。
SM材は、SS材と違い、
板厚の制限なく溶接が
可能なんです。
-
SM材は、Steel Marineの
頭文字で、
船舶用鋼材を表している。 -
溶接性を高めるために炭素(C)・
ケイ素(Si)・マンガン(Mn)の
含有量が規定されている。 -
SM材は、SS材と違い、
板厚の制限なく溶接が可能。
SB材
SB材は、
- Steel Boiler
の頭文字で、ボイラ・圧力容器用鋼材
を表しています。
主に、ボイラや圧力容器の
中温から高温で使用されます。
高温・高圧の環境下で
使用するんですね。
高温・高圧で使用するため
化学成分が限定されており、
高温下での使用が安定してます。
その反面、低温靭性に劣るので
常温以下での使用には向いていません。
使う用途が限られる鋼材
なんですね。
ちなみに、SM材と比べて
どうですか?
含有炭素量を増やしているので、
SM材と比較すると溶接性が
悪いので注意が必要です。
-
SB材は、Steel Boilerの
頭文字で、ボイラ・圧力容器用
鋼材を表している。 -
化学成分を限定させることで、
高温下での使用を
安定させている。 -
低温靭性に劣るので常温以下での
使用には向いていない。 -
含有炭素量を増やしているので、
SM材と比較すると溶接性が悪い。
SPC材
SPC材は、
- Steel Plate Cold
の頭文字で、冷間圧延鋼板
を表しています。
圧延鋼板ということは
薄い鋼板なんですね。
そうです。
常温に近い温度で圧延されて
作られている鋼材で、
板厚は、0.4~3.2mmまでの
薄板になります。
SPC材にも種類があり、
- SPCC(一般用)
- SPCD(絞り用)
- SPCE(深絞り用)
があります。
SPCCは、よく使います。
SPCCは、曲げ加工やプレス加工に
広く使われる材料です。
3.2mmを超える場合は
どうしたらいいですか?
SPCCと記載されていても
3.2mmを超える板厚の場合、
大体SS400が代用されます。
ありがとうございました。
-
SPC材は、
Steel Plate Coldの
頭文字で冷間圧延鋼板を
表している。 -
常温に近い温度で
圧延されており、板厚は、
0.4~3.2mmまでの薄板。 -
SPC材にも種類があり、
SPCC・SPCD・SPCEがある。 -
SPCCの板厚が3.2mmを
超える場合は、ほぼSS400が
代用される。
特殊鋼とは?
特殊鋼って何ですか?
特殊鋼は、
鉄にニッケルやクロムといった
様々な元素を加えたり
調整することで、機械的性質や
耐熱性・耐食性などの特性が
増した合金
のことを言います。
特殊鋼にも種類があり、
- 構造用鋼
- 工具鋼
- 特殊用途鋼
と分類されています。
3種類もあるんですか!!
今回は、簡単に
構造用鋼のみを紹介します。
特殊鋼については、別の記事で
紹介させていただきます。
-
特殊鋼とは、様々な合金元素を
加えたり調整することで、
機械的性質や耐熱性・
耐食性などの特性が増した合金。 -
特殊鋼にも種類があり、
構造用鋼・工具鋼・
特殊用途鋼に分類される。
特殊鋼-構造用鋼
構造用鋼は、どんな場所で
使われるんですか?
ボルトやシャフト・歯車
といった機械部品に
使用されます。
機械の構造用鋼材
なんですね。
また、加工後必要に応じて
引張強さや靭性などの
機械的性質を上げるために
焼入れ・焼き戻しを行います。
ただ、構造用鋼にも
- 機械構造用炭素鋼
- 機械構造用合金鋼
の2種類があります。
まだ、種類があるんですか!
機械構造用炭素鋼は、
炭素を0.10~0.60%含有するもので
一般的にSC材と呼ばれている鋼材
になります。
S45CやS50Cは
聞いたことがあります。
S45Cは、0.42~0.48%の炭素を
含んでおり0.45%前後を指している
ことからS45Cと表記されています。
数字は炭素含有量
だったんですね。
S50Cは、0.50%前後
ということですか?
そうです。
S50Cは、0.47~0.53%と
0.50%前後を表しています。
初めて知りました。
形状で言えば、
丸棒は、S45C
平鋼は、S50C
が代表的な形状です。
次は、機械構造用合金鋼
を紹介していきます。
お願いします。
機械構造用合金鋼は、
0.12~0.50%の炭素のほかに
- クロム(Cr)
- モリブデン(Mo)
- ニッケル(Ni)
- ケイ素(Si)
- マンガン(Mn)
の合金元素を適量添加することで
機械的性質の向上や焼入れ性が
改善された鋼材
です。
焼入れ性を上げるために
合金元素が入っているんですね。
そうです。
焼入れを行わないのであれば
S45Cで十分です。
-
構造用鋼は、
ボルトやシャフト・歯車と
いった機械部品に使用される。 -
加工後必要に応じて引張強さや
靭性などの機械的性質を
上げるために焼入れ・焼き戻し
を行う。 -
構造用鋼にも、
機械構造用炭素鋼・
機械構造用合金鋼
の2種類がある。 -
機械構造用炭素鋼は、一般的に
SC材と呼ばれている鋼材。 -
機械構造用炭素鋼の
代表的な形状と鋼種は、
丸棒はS45C・平鋼はS50C。 -
機械構造用合金鋼は、
合金元素を適量添加することで
機械的性質の向上や
焼入れ性が改善された鋼材。 -
機械構造用合金鋼で焼入れを
行わないのであれば
S45Cで十分。
材質の選定基準
鉄で加工してください!
とお願いしても、
使用用途によって材質が
変わってくるんですね。
普通鋼から構造用鋼まで
簡単にまとめてみました。
鋼材 | 特徴 |
SPCC | 3.2mmまでの薄板加工。 |
SS400 | SPCCの規格にない厚みで、 加工精度が必要でないもの。 |
S45C | 機械に使用する部品に使用。 SS400より硬く強い。 |
SCM435 | S45Cより焼入れ性を上げたい。 |
という感じです。
代表的なものばかりで
分かりやすいです。
代表的な鋼材の
使い分けで悩んだ時に選定する
基準の一つにしてください。
-
使用用途によって材質が変わる。
-
SPCCとSS400は骨組み部分
S45C・SCM435などは、
機械部品に使用される。
まとめ
機械設備や治具の製作を考えた時
使用用途によって、
鋼材を使い分ける必要があります。
SS400とS45Cのように
用途が全く違うのに、
同じように考えている方が
意外にいらっしゃいます。
理解して、材質選定することで
コストを下げたり、
強度不足を防止することが出来るので
困ったときの参考になればうれしいです。
ありがとうございました。