バレル研磨機で使っている
ポッドの内面のゴムが
摩耗して、金属部分が
見えるようになりました。
本当ですね。
このまま使っても
大丈夫ですか?
このまま使い続けると
製品の研磨不良や
剥離したゴムが混入して
異物混入など、クレームの
原因になりますよ。
やっぱり、
ダメですよね。
しかも、
このまま使い続けると
ポッドに穴があいて
大変なことになります。
じゃあ、とりあえず
ポッドを1個だけ手配して
もらっていいですか?
手配するより、
ポッドの内面のゴムを
貼り替えたほうが
良いですよ?
えっ!
ポッドのゴムって
貼り替えることが
できるんですか?
できますよ。
では、ポッドの内面を
ゴムで覆う
『ゴムライニング』を
させてもらいますね。
それでお願いします。
それと、
『ゴムライニング』
についても教えて
もらっていいですか?
分かりました。
という、やりとりがありました。
今回は、『ゴムライニング』について
簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。
ゴムライニングとは?
そもそも
『ゴムライニング』って
なんですか?
私の分かる範囲での
説明になりますが
大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
まず、
『ライニング』ですが、
JIS規格で
4014 ライニング
金属の表面を防食するため、
その表面に、他の複合材料を
比較的厚く被覆すること。
金属・無機物質などを溶射、
焼き付け、はり合わせなどで
被覆する無機質ライニングと、
有機物質を流動浸せき、溶射、
塗布、はり合わせなどで被覆する
有機質ライニングとがある。
引用:日本工業規格 JIS Z 0103
-防せい防食用語
と定義されています。
防食のために、金属の
表面を厚めの膜で覆う
表面処理をライニング
と言うんですね。
そうなんです。
ただ、
1mm以上をライニングという
分野もあれば、250μm以上を
ライニングいう分野もあり、
膜厚に明確な決まりはありません。
そうなんですね。
めっきやコーティング・
塗装よりも、膜厚が
厚いものをライニング
と言うんですね。
そうです。
ライニングは、
表面処理の選択肢の
ひとつなんです。
ゴムを使った
ライニングだから
ゴムライニング
というんですね。
そうなんです。
ただ、
先ほどJIS規格では、
金属表面の防食と
なっていましたが、
違うんですか?
いえ、もともとは、
防食目的でしたが、
ゴムライニングは、
ゴムの性質を生かし、
- 耐食性
- 耐摩耗性
- ゴム特性の利用
などの目的でも使用されます。
詳しく教えて下さい。
一般的にゴムは、
電気による化学反応を
起こしにくく、
広範囲の化学薬品に対し、
優れた抵抗性があります。
へー。
また、
天然ゴムは、
濃硫酸や硝酸といった酸化性の酸や
プロパンなどの脂肪族やトルエンなどの
芳香族といった薬品には弱いですが、
合成ゴムを使うことで、天然ゴムでは
耐えれなかった特定の薬品や条件でも
使用することができるんです。
天然ゴムではダメな薬品でも
合成ゴムの種類によっては
使用可能になるんですね。
そうなんです。
次は、
耐摩耗性についてですが、
ゴムは耐摩耗性が良く、
鉄の2~5倍の耐摩耗性が
あると言われています。
へー。
そして、
ゴムには弾性があるので、
振動の吸収性を利用した
防音目的のゴムライニング
を行うこともあります。
そういう使い方も
あるんですね。
特に近年では
使用する環境が、
より過酷に
なっているので
使用環境や用途に適した
ゴムの種類でゴムライニング
を行ってください。
使用するゴムの特性を
きちんと理解して
施工するようにします。
-
防食のために、金属の表面を
厚めの膜で覆う表面処理を
ライニングと言う。 -
ゴムライニングは、
「耐食性」・「耐摩耗性」・
「ゴム特性の利用」などの
目的で使用される。 -
合成ゴムを使うことで、
天然ゴムでは耐えれない
特定の薬品や条件でも
使用することができる。 -
ゴムは耐摩耗性が良く、
鉄の2~5倍の耐摩耗性が
あると言われている。 -
ゴムには弾性があるので、
振動の吸収性を利用した
防音目的のゴムライニング
を行うこともある。 -
使用環境や用途に適した
ゴムでゴムライニング
を行う必要がある。
ゴムライニングの特長
では、ゴムライニング
の特長を教えて下さい。
ゴムライニングの
特長は、
- 耐食性がすぐれている。
- 耐摩耗性がすぐれている。
- 金属に対し接着力が強い。
- 信頼性の高い施工が可能。
- 欠陥部が確実に検出できる。
- 正確な寸法を出すことができる。
- 現地でのライニングが可能。
- コンクリートにもライニング可能。
などがあります。
ゴムライニングの特色
参考:一般社団法人日本ゴム工業会
-ゴムライニングハンドブック
1と2については、
先ほど聞いた内容と
重複しているので
3から教えて下さい。
では、まず
「金属に対し
接着力が強い。」
ということですが、
接着剤の進歩によって、
金属とゴムを強固に
接着することが
出来るようになりました。
用途に適した接着剤を
使えば、十分な接着強度が
得られるんですね。
ゴムの強度より、
接着強度が高いものが
多いですからね。
では、次の
「信頼性の高い施工が
可能。」とはなんですか?
ここで言う、
信頼性の高さとは、
「ゴムシートの接合部が完全に
結合する。」ということです。
どういうことですか?
簡単に説明すると、
樹脂ライニングのように、
樹脂同士の接合部を
糊付けしたり溶接しなくても、
未加硫のゴムでライニング
した後に、加硫を行えば、
溶けて一体となります。
加硫という工程を
行うと、ゴムが融着して
一体化するんですね。
そうなんです。
しかも、
やわらかい未加硫のゴムシートを
貼り付けてから加硫するので、
湾曲した面や複雑な形状のものにも
ゴムライニングできるんです。
加硫を後で行うので、
複雑な形状でも密着させて
貼り合わせることが
できるんですね。
加硫については、後で
詳しく教えて下さい。
分かりました。
では、「欠陥部が確実に
検出できる。」とは
どういうことですか?
基本的に、
ゴムは電気絶縁体なので、
電気を使った検査によって、
ピンホールやクラックを
簡単に検出することができます。
不良箇所に電気が
流れるので、簡単に
発見できるんですね。
では、「正確な寸法を
出すことができる。」
について教えて下さい。
ゴムライニングは、
ゴムシートを重ねて
ライニングを行うので、
任意の厚さにできるんです。
重ねるシートの
枚数で厚くも薄くも
できるんですね。
一般的には、
3~5mmで、
過酷な環境下では、
6~12mm程度と
言われています。
しかも、
加硫後に旋盤加工などの
機械加工を行うことで、
正確な寸法に仕上げることが
できるんです。
なるほど。
それでは、「現地での
ライニングが可能。」
について教えて下さい。
これは、
大型タンクといった、設備から
簡単に取り外せない基材でも
「現地でのゴムライニング
が可能。」ということです。
ゴムライニングの
施工にあたって、
基材の大きさに制約が
ないということですね。
そうです。
しかも、
ゴムライニングは、
全面を接着しているため、
破損しても裏面に液体が
浸入しにくくなっており
局部修理が可能なんです。
ということは、
現地での修理も可能
なんですか?
そうなんです。
修理も現地で行うことが
可能なんです。
では、最後に
「コンクリートにも
ライニング可能。」
について教えて下さい。
これは、
接着剤の進歩とゴムの弾性によって
凸凹した面にも接着が可能
ということです。
接着剤の進歩が
ゴムライニングに
大きく影響して
いるんですね。
そうなんです。
-
接着剤の進歩によって、
金属だけでなくコンクリート
にもゴムライニングを
行うことが可能。 -
やわらかい未加硫のゴムシートを
貼り付けた後に、融着して
一体化する加硫を行うので、
湾曲した面や複雑な形状でも
ゴムライニングができる。 -
ゴムは、電気絶縁体なので
電気を使った検査によって、
ピンホールやクラックを
簡単に検出することができる。 -
ゴムシートを重ねて
ライニングを行うので、
任意の厚さにすることができる。 -
加硫後に旋盤加工などの
機械加工を行うことで、正確な
寸法に仕上げることができる。 -
簡単に取り外せない基材でも、
現地でのゴムライニング
ができる。
しかも、局部修理が現地で可能。
加硫とは?
それでは、いよいよ
『加硫』について
詳しく教えて下さい。
『加硫』とは、
JIS規格では
4102 加硫
分子鎖間を化学的に
結合させること。
引用:日本産業規格
JIS K 6200-ゴム−用語
と定義されています。
・・・・・。
具体的には、
硫黄などの架橋剤を加えた未加硫の
ゴムに、蒸気で加熱・加圧を
行って化学反応させる工程で、
化学的には『架橋』と言います。
硫黄を加えるから
加硫なんですね。
加硫と架橋は
同じ意味なんですか?
『架橋』は、
JIS規格で、
4101 架橋
網目構造を作るため、ゴム分子鎖間
又は分子鎖内を化学結合で結ぶ反応。
引用:日本産業規格
JIS K 6200-ゴム−用語
と定義されています。
似た意味ですが、
架橋のなかに
硫黄を使う加硫が
あるイメージですね。
そんな感じです。
ここでは、
加硫として話を
続けていきますね。
分かりました。
ところで、
加硫を行うと
どうなるんですか?
加硫を行うと、ゴムを大きく
変形させても元に戻る復元力や
引張強さ・耐熱性を向上させる
ことができます。
加硫を行うから
ゴムに弾性や耐熱性が
生まれるんですね。
ところで、加硫って
どうやって行うんですか?
加硫は、
一般的に『加硫缶』と呼ばれる
装置を使って行います。
4203 加硫缶
加硫に用いる筒状の缶。
ゴム成形品を入れ、
蒸気又は加熱ガス体で
ゴムを加硫するのに用いる。
引用:日本産業規格
JIS K 6200-ゴム−用語
加硫缶には、
どのタイミングで
入れるんですか?
加硫缶には、
加硫剤と加硫促進剤・加硫促進助剤を
配合した未加硫のゴムシートで
ライニングを行った後に入れて、
所定時間加熱を行います。
未加硫のゴムシートって
どんな状態なんですか?
未加硫のままで
引っ張るとちぎれます。
しかも、弾性がないので
一度変形したら
元に戻りません。
粘土みたいですね。
では、
加硫缶に入らないサイズや
現場で施工する場合は、
どうすればいいですか?
加硫缶に入らない場合や
現地で施工する場合は、
容器そのものに蒸気や熱湯を
充填し加硫を行います。
場合によっては、
あらかじめ加硫した
ゴムシートを接着剤で
貼り付けたりもします。
なるほど。
ゴムって加硫を
行わないと、製品に
ならないんですね。
-
加硫とは、架橋剤を加えた
未加硫のゴムに、蒸気などで
加熱・加圧を行って
化学反応させる工程のこと。 -
加硫を行うことで、
復元力や引張強さ・耐熱性を
向上させることができる。 -
加硫は、一般的に加硫缶
と呼ばれる装置を使って行う。 -
未加硫のゴムシートで
ライニングを行った後、
加硫缶に入れ、
所定時間加熱を行う。 -
加硫缶に入らない場合や
現地で施工する場合は、
容器そのものに蒸気や熱湯を
充填し加硫を行う。 -
修理の条件によっては、
あらかじめ加硫した
ゴムシートを接着剤で
貼り付ける。
ゴムライニングの施工工程
では、
ゴムライニングの
施工工程について
教えて下さい。
分かりました。
お願いします。
まずは、
ゴムライニングを行う
基材の確認を行います。
出来るかどうかの
確認が必要ですもんね。
この基材に問題がないと
確認できたら、
基材を高温で加熱して、
付着物や油分を取り除く
空焼きを行い『脱脂』します。
高温で付着物や
水分・油分を
除去するんですね。
そうです。
水分や油分が残っていると、
加硫した時に、ゴムが
膨れてしまうので、しっかりと
脱脂する必要があります。
そうなんですね。
そして、
脱脂を行った後は、
基材に付着しているサビや空焼きで
固化した付着物を除去すると同時に、
接着面を粗面化する『下地処理』を
行います。
ふむふむ。
そして、
基材の下地処理を
行った後は、
出来るだけ早く、ゴムの材質や
条件に合った最適な接着剤を
塗布していきます。
『接着剤塗布』
という工程ですね。
そうです。
そして、
接着剤が乾燥したら、
ゴムを貼り付ける
『ライニング』を
行っていきます。
どんな風に
ゴムを貼り付けて
いくんですか?
ライニングは、
基材の寸法や形状に合わせた
ゴムシートを、ハンドローラーなどの
工具を使い、空気が残らないように
貼り付けていきます。
空気が残ると
どうなるんですか?
空気が残っていると
加硫後に不良の原因となる
膨れが生じてしまい、
使い物になりません。
きびしいですね。
そうなんです。
そして、ここまでの
作業が終了したら、
一度、中間検査として、
外観検査やピンホール検査を行い、
問題がないかを確認します。
この中間検査で問題が
ないことが確認されると、
いよいよ『加硫』に
入っていきます。
いよいよですね。
通常加硫は、
2回に分けて行います。
なんで、2回も
行うんですか?
それは、
1回目の加硫を行った後に、
浮きや膨れなどの不良箇所が
発生した場合、加硫速度を
早めたゴムなどで修理を行い
2回目の加硫を行います。
2回目の加硫は、
短時間で行うんですね。
また場合によっては、
修理すると1回目にライニングした
ゴムが傷んでしまうことがあるので
常温加硫のゴム材で修理したり、
加硫したゴムシートを接着剤で
貼り付けたりすることもあります。
何回も加硫出来る
わけじゃないんですね。
ようやく加硫が
終わりましたね。
加硫が終了したら、
必要に応じて、機械加工などで
仕上げ加工を行います。
その後、
- 外観検査
- ピンホール検査
- ゴム硬度検査
- 膜厚検査
- 打診検査
- 寸法測定
といった『検査』を行い、
問題がなければ終了です。
検査後、出荷して
ようやく終わるんですね。
まとめ
ゴムライニングは、製鉄・化学工業など
あらゆる分野で広く使用されている
必要不可欠な技術です。
しかも使用環境は、より過酷に
なってきているので、
使用するゴムの特性をきちんと
理解し、用途に合ったものを
使用して下さい。
今後あなたが、ゴムライニングを
使用するときの参考になれば
嬉しいです。