焼成用の敷粉を
ジルコニアからアルミナに
変えたんですが、
すごく粉が舞うんです。
ジルコニアの密度は、
6.0g/cm3程度で、
アルミナの方が、
3.8g/cm3程度と
軽いですもんね。
なにか良い対策は
ありませんか?
アルミナは、
『労働現場で問題と
なっている代表的な
粉じん』の1つなので
きちんとした対策を
行う必要がありますよ。
えっ!
アルミナの粉って、
そんなに危険な
粉なんですか!
そうなんです。
局所排気など
しっかりとした対策を
行ってください。
早急に検討します。
という、やりとりがありました。
今回は、『アルミナ』について
簡単にわかりやすく
紹介していきたいと思います。
アルミナとファインセラミックス
そもそも『アルミナ』
ってなんですか?
私の分かる範囲での
説明になりますが
大丈夫ですか?
よろしくお願いします。
『アルミナ』は、
正式名称を『酸化アルミニウム』
と言い、ステンレス鋼の約3倍、
硬度があると言われています。
かなり、
硬い材質なんですね。
ちなみに、宝石のルビーと
サファイヤは、どちらも
『アルミナ』が主成分の
単結晶なんです。
えっ!
『アルミナ』って
ルビーやサファイヤと
同じ成分なんですか!
そうなんです。
本来、『アルミナ』の
単結晶は透明なんですが、
不純物としてクロムが入ると
赤いルビーに、鉄とチタンが
入ると青いサファイヤになります。
なるほど。
ただ、
『アルミナ』の板など、
白色や乳白色など
不透明なものしか
見たことありません。
なぜですか?
それは、『アルミナ』を
原料とした、
『ファインセラミックス』
だからです。
『ファインセラミックス』
ってなんですか?
『ファインセラミックス』は、
JIS規格で
1101 ファインセラミックス
化学組成、結晶構造、微構造組織・
粒界、形状、製造工程を
精密に制御して製造され、
新しい機能又は特性をもつ、
主として非金属の無機物質。
引用: JIS R 1600-
ファインセラミックス関連用語
と定義されています。
どういうことですか?
つまり
『ファインセラミックス』は、
合成された人工原料を使い、
精密な制御条件で製造された
機能性無機材料のことなんです。
人工原料で作られた
『セラミックス』
のことなんですね。
ただ、正直
『セラミックス』も
良く分かっていません。
『セラミックス』は、
「非金属・無機材料で、その製造工程に
おいて高温処理を受けたもの」
とされており、多結晶性の非金属・
無機材料のことを指します。
セラミックスとファインセラミックスの違い
参考:ファインセラミックスワールド-
京セラ株式会社
単結晶や多結晶って
なんですか?
『単結晶』は、
JIS規格で
1049 単結晶
すべての部分が同一の
結晶学的方位をもつ固体
(JIS H 0211参照)。
引用: JIS H 7008-金属超微粒子用語
『多結晶』は、
1050 多結晶
結晶学的方位が異なる
多くの単結晶が集合した固体
(JIS H 0211参照)。
引用: JIS H 7008-金属超微粒子用語
と定義されています。
どういうことですか?
『単結晶』は、
原子配列の向きが同じものを言い、
絶縁体の『単結晶』は、透明のものが
多く、金属の『単結晶』は、光を
反射・吸収するので不透明が多いです。
『アルミナ』は、
透明だから絶縁体
なんですね。
『多結晶』だと
どうなるんですか?
『多結晶』は、
小さな単結晶の集合体のことで、
結晶粒の境目で光が散乱するため、
一般的には不透明です。
なるほど。
アルミナの板とかが
不透明なのは、
そういった理由が
あったんですね。
-
『アルミナ』は、正式名称を
『酸化アルミニウム』と言い、
ステンレス鋼の約3倍、
硬度があると言われている。 -
『アルミナ』の単結晶は
透明だが、クロムが入ると
赤いルビーに、鉄とチタンが
入ると青いサファイヤになる。 -
『ファインセラミックス』は、
合成された人工材料を使い、
精密な制御条件で製造された
機能性無機材料のことを言う。 -
『セラミックス』は、「非金属・
無機材料で、その製造工程に
おいて高温処理を受けたもの」
とされている。 -
絶縁体の『単結晶』は、
透明のものが多く、金属の
『単結晶』は、光を反射・
吸収するので不透明が多い。 -
『多結晶』は、小さな単結晶の
集合体のことで、結晶粒の境目で
光が散乱するため、基本は不透明。
アルミナの特徴
『アルミナ』の特徴を
教えて下さい。
『アルミナ』は、
- 耐熱性
- 電気絶縁性
- 耐摩耗性
- 耐食性
に優れた材質です。
『アルミナ』の、
耐熱性から
教えて下さい。
一般的に
『アルミナ』の融点は、
2000℃程度と言われています。
なぜ、そんなに
高いんですか?
それは、『アルミナ』が
『イオン結晶』だからです。
『イオン結晶』って
なんですか?
『イオン結晶』とは、
+イオンと-イオンが
引き合う、結合力が強い
『イオン結合』でできた
固体のことを言い、
- 融点が高い
- 硬いが脆い
- 電気を通さない
という特徴があります。
『イオン結晶』は、融点が
高くなるだけではなく
硬くもなるんですね。
硬度が高いので
耐摩耗性が高く
なるんです。
硬度が高いので、
すり減りにくく
なるんですね。
しかも、
『アルミナ』は、
剛性が高く変形しにくいので、
表面粗さや平面度など、
精度の高い加工ができます。
精密な加工にも
向いているんですね。
でも、脆いんですよね。
衝撃には弱いです。
硬いのに衝撃に
弱いんですか?
『イオン結合』は
結合力が強い反面、
衝撃を加えると結晶構造にズレが
生じやすく、ズレが生じると
+イオン同士・-イオン同士が
向かい合うので、反発力が発生し
結合が切断されてしまうんです。
ぶつけたり落としたり
しないように、気を付ける
必要がありますね。
次は、耐食性が高い理由も
教えて下さい。
まず、金属を大気中で
高温に加熱した場合、
表面は酸化物で覆われます。
たしか、サビも
酸化鉄ですもんね。
しかし、
『アルミナ』は、もともと酸化物
なので、高温の大気中でも
酸化せずに安定しています。
確かに!
『酸化アルミニウム』
だから、もともと
酸化してるんですね。
ちなみに、
アルマイト処理って
ご存じですか?
知ってますよ。
アルマイト処理は、
耐食性を上げるため、
アルミニウムの表面に、
『酸化アルミニウム』の皮膜を
人工的に作る処理のことなんです。
アルマイト処理って
『アルミナ』の膜を作る
処理だったんですね。
では、
アルミニウムから
『アルミナ』が
作られるんですか?
いえいえ、
違います。
『アルミナ』は、ボーキサイト
から抽出して作られます。
アルミニウムは、この『アルミナ』
を原料として製造されます。
『アルミナ』から
アルミニウムを
作るんですね。
-
『アルミナ』の融点は、
2000℃程度と言われている。 -
『アルミナ』は『イオン結合』
で出来た固体で、融点が高い・
硬いが脆い・電気を通さない
という特徴がある。 -
『アルミナ』は、剛性が高く
変形しにくいので、
表面粗さや平面度など、
精度の高い加工ができる。 -
『イオン結合』は結合力が
強い反面、衝撃などで結晶構造に
ズレが生じると、反発力が発生し
結合が切断されてしまう。 -
『アルミナ』は、もともと酸化物
なので、高温の大気中でも
酸化せずに安定している。 -
アルマイト処理は、
アルミニウムの表面に、
『酸化アルミニウム』の皮膜を
人工的に作る処理のこと。 -
『アルミナ』を原料として
アルミニウムが作られる。
アルミナ製品の製造工程
『アルミナ』が
欠けやすいのは、
分かりました。
では、どうやって、
『アルミナ』の製品を
作っているんですか?
『アルミナ』製品の
製造工程は、
- 原料の調製
- 成形
- 焼成
- 加工
- 検査
が代表的です。
『原料の調製』って
なんですか?
『アルミナ』を含め
『ファインセラミックス』は、
「焼成によって製品の特性が
決まる。」と言われています。
しかし、同じ
『アルミナ』でも
研磨剤用の粉末や
溶射用の粉末と
焼成体用の粉末は、
大きさや形状・純度
などが大きく違います。
確かにそうですね!
なので、
良い焼成を行うためには、製品の
焼成条件に合った原料粉末を
作る必要があり、この工程を
『原料の調製』と呼んでいます。
なるほど。
次は、
『成形』ですが
加工工数を削減するために
行う作業で、『調製』された
材料に、樹脂や水といった
バインダーを添加して目的の形状、
又は近い形状にする工程です。
バインダーって
なんですか?
バインダーとは、
セラミックの粒子同士を
繋ぎあう接着剤の
ようなものです。
へー。
『成形』は、
用途や目的によって
- 押出成形
- 射出成形
- 加圧成形
- 鋳込み成形
など様々な成形方法があり、
使用する原料粉末も大きく違います。
『成形』にも色んな
方法があるんですね。
次は、『焼成』に
入っていきます。
『焼成』は、
『アルミナ』の粉末成形体を
融点以下で加熱し、収縮・緻密化
させて強度を高める工程です。
『焼成』することで
硬い『アルミナ』が
できるんですね。
『成形』した形状で
『焼成』したら出来あがり
じゃないんですか?
『焼成』だけですと
収縮したり表面の状態が
変化するので、製品としては
使用できません。
『焼成』だけだと
正確な寸法が
出ないんですね。
そうなんです。
そのため、
『加工』工程によって、
目的通りの形状や寸法に
仕上げていく必要があります。
そして、検査・出荷と
なるんですね。
-
『アルミナ』製品の代表的な
製造工程には、原料の調製・
成形・焼成・加工・検査がある。 -
良い焼成を行うため、製品の
焼成条件に合った原料粉末を
作る工程を『原料の調製』という。 -
『成形』は、『調製』された
原料に、樹脂や水といった
バインダーを添加して目的の
形状、又は近い形状にする工程。 -
『焼成』は、『アルミナ』の
粉末成形体を融点以下で加熱し、
強度を高める工程。 -
『焼成』だけだと収縮したり
表面の状態が変化するので、
製品としては使用できない。 - 『加工』工程によって、
目的通りの形状や寸法に
仕上げていく必要がある。
アルミナ粉じんの注意点
ところで、
『アルミナ』の粉は
なにが危険なんですか?
じつは、
『アルミナ』の粉じんを
吸い込むと『アルミナ肺』
になる可能性があります。
『アルミナ肺』って
なんですか?
『アルミナ肺』は、
じん肺の一種で、肺が『線維化』
する病気です。
『線維化』って
どういう状態ですか
キズが出来た時に、
少し盛り上がって
治ることありますよね。
深い傷の時に
ありますね。
『線維化』とは、
キズが少し盛り上がって治る
ことを『線維化』と言い、肺に
発生すると硬くなり、弾力性が
無くなってしまいます。
肺が硬くなって、
弾力がなくなることを
じん肺と言うんですね。
じん肺は、じん肺法で
じん肺
粉じんを吸入することによつて
肺に生じた線維増殖性変化を
主体とする疾病をいう。
引用:じん肺法-第二条-1項
と定義されています。
じん肺になると
どうなるんですか?
じん肺の初期症状は、
せき・タン・喘息・息切れですが、
症状が悪化すると、結核・肺がん
気胸などの合併症が発症する
確率が高くなると言われています。
怖いですね。
しかも、
『アルミナ』は、有毒性の高い
『第一種粉じん』に区分されて
いるので注意して下さい。
粉じんの吸入ばく露による健康障害を評価する
参考:独立行政法人労働者健康安全機構-
労働安全衛生総合研究所
『アルミナ』の
粉じんって
危険なんですね。
『アルミナ』だけでなく
他の粉じんや有害化学物質・
ヒュームなどにも注意が必要なので、
適切な対策を行ってください。
一度確認してみます。
-
『アルミナ』の粉じんを
吸い込むと『アルミナ肺』
になる可能性がある。 -
『アルミナ肺』は、じん肺の
一種で、肺が『線維化』
する病気。 -
『線維化』とは、キズが少し
盛り上がって治ることを言い、
肺に発生すると硬くなり、
弾力性が無くなる。 -
じん肺の初期症状は、せき・タン・
喘息・息切れだが、症状が悪化
すると、結核・肺がん・気胸などの
合併症が発症する確率が高くなる。 -
『アルミナ』は、有毒性の高い
『第一種粉じん』に区分されて
いるので注意が必要。 -
『アルミナ』だけでなく
他の粉じんや有害化学物質・
ヒュームなどにも注意が必要。
まとめ
『アルミナ』は、高硬度・
耐熱性・耐摩耗性・寸法安定性・
電気絶縁性に優れており、
『ファインセラミックス』の代表と
されるほど多く利用されています。
しかし、『アルミナ』の粉じんは、
吸入するとじん肺の一種である
『アルミナ肺』という病気になる
可能性があるので、作業環境には
十分注意して下さい。
ありがとうございました。